バジェットオーディオ的!〜アナログレコード再生環境のその後(調整、メンテなど)
前回、アナログレコードの再生環境を7~8年ぶりに復活させてレコードプレーヤーも買い替えたというお話を書かせて頂きました。(主に2022年の話でした。)
その後2023年は、手持ちのレコード聴きつつレコードの購入も再開したのですが、オーディオ機器の調整も進めていました。しかしこれがなかなかに劇的な音質向上を遂げてくれまして、その調整(メンテナンス的なこと、機器のグレードアップ含む)の経緯を記しておきたいと思います。
カートリッジグレードアップ
前回の記事でも触れたレコードカートリッジのグレードアップ。音質改善効果高いということに味をしめて、昨年も行いました。現在容易に入手できるカートリッジのメーカーとしてはメジャー所の筆頭格であるORTOFONの”2M-RED”という機種です。
効果としては”2M-RED”と前機種であるSUMIKO “OYSTER”と比較して音の艶というか中音域の豊かさみたいな音色面での質向上があったかなと思います。
また、価格的には“OYSTER”の1.5倍くらいの機種でありますが、カートリッジの価格が「上を見ればキリが無い」状況から考えるとお値段以上の効果ではないかと思います。
ただ、この後に行う諸々の調整(ケーブル、フォノイコ)での効果の大きさや改善効果の傾向と比較すると、カートリッジのグレードアップはもっと後でもよかったかな?と思っております。(“OYSTER”は決して品質的に劣るというわけではないということも)
オーディオケーブルグレードアップ
フォノイコライザー、プリアンプ、オーディオ切替スイッチなどの機器が増えるに従って、機器間を接続するオーディオケーブルは増えることになるのですが、今までは、大昔に購入したオーディオケーブル(主に大手メーカーの中級グレードくらいのモノや、機器に付属していたモノ)を引っ張り出して使っていたりしました。
ある時、アナログのオーディオ機器を一箇所に集中させようと配置替えを行なった後に、やけにレコードプレーヤーからの出音の音質が下がったと感じたことがあって、どうやら配置替えに伴うオーディオケーブル入れ替えをした結果、レコードプレーヤーからパワーアンプまでの経路に質の低いケーブルが混じり込んだことが原因のようでした。
そこで、オーディオケーブル見直そうということで、スピーカーケーブルとして使って良かった(知人のお勧めもあって)BELDENというメーカーで、さらに評判もいい”88760”というケーブルへの全取っ替えを行うことにしました。
ただし機器の数がそこそこあるので、既製品を購入するとなると割といいお値段になってしまうので、ケーブルとRCAプラグ(tomoca JS-65)を買ってきて自作をすることにしました。
何十年ぶりかにハンダごてを使ったのですが、慣れればちゃっちゃと作れます。これで、レコードプレーヤー>フォノイコライザー>プリアンプ>オーディオ切替スイッチ>パワーアンプ>スピーカーまでのアナログレコードからの出音までのケーブルは全てBELDENとなりました。
導入の効果ですが、これがまあ「情報量」が違いすぎました。解像度の上がり方が半端ないです。オーディオケーブルによる音質改善効果はイヤフォンのリケーブルなどで十分実感していたつもりでしたが、想像をはるかに超えていました。
これに味をしめてパワーアンプ>サブウーファー(パワード)間のオーディオケーブル、レコードプレーヤーからフォノイコライザーへのアース(GND)線も全てBELDEN 88760に変更するまでに至りました。(あと後述しますがフォノイコライザー内部のGND線延長も)
特にサブウーファーへの効果は高くて、安物それも中古で入手したサブウーファーが蘇りました。(今までは低音の質に不満があって時折サブウーファースイッチ切っていたりした)音量をいくら大きくしてもうるさく感じないし、大きくしすぎてプレーヤーがスピーカー低音振動拾ってハウリングする程です。
フォノイコライザーのグレードアップと改造
次に手をつけたのがフォノイコライザーです。LUXMANのLXV-OT10という真空管式、組み立てキットの製品を導入しました。EQカーブ調整できて音質も素晴らしいと評判の機器です。
前回のエントリで前のフォノイコライザー導入の経緯は書きましたが、その時もいちおう候補には上がったのですが、在庫がなかった、組み立てキットというハードルがあった等の理由で見送っていましたが、ちょうど今回検討していた時期に再販が決まり、思い切って導入することにしました。
躊躇していた組み立てはハンダ付けの必要もなく、あっさり30分くらいで終了しました。
通電直後は解像度は上がってるけど、高域の質感に「イヤな感じ」が混じってるという印象でしたが、2時間を超えた辺りから「イヤな感じ」がすっかり消えてスッキリした高域にふくよかな中低域という感触となりました。(特にアコースティック楽器の音が良く鳴るように)
解像度(情報量)については、オーディオケーブルグレードアップした時より向上率高いかもしれません。と言うよりはオーディオケーブルグレードアップしてたからこそフォノイコグレードアップ効いているのかも?と感じています。
更にはこのフォノイコライザーのプリント基盤上に実装されてるオペアンプ2箇所を高音質と評判のBurr-Brown製OPA627AUに入れ替えを行い、さらに音質改善を図りました。
また更に先ほど触れたBELDEN88760を使用して作成したGNDケーブルを使ってフォノイコライザーのGND端子(デフォルトではシャーシに接続されている)をプリント基盤まで延長し、レコードプレーヤーとフォノイコライザー間のGNDケーブルも交換しました。
スタイラス洗浄
スタイラス(カートリッジの針先)は、レコード盤の汚れの状態にもよりますが、数十時間も再生すると粘性のある汚れ(埃、カビの類?)がびっちりと付着して、さらにこの汚れに繊維質の埃がまとわり付いて、再生音が歪んでしまうことがあります。
何十年も針を落とされてないような中古レコードを再生した場合など、LP片面再生しただけでもこのような汚れがびっちりと付着するといったこともあり、スタイラスをどのような方法で洗浄するか?これは割と長年の悩みでありました。
そこで、この洗浄液とブラシのセット(LEIQWAドクタースタイラス)を利用することにしました。
ほんとごく少量の洗浄液と小さなブラシだけのセットですが、なかなかに高額(約1.6万円)な商品なので購入は迷ったのですが、超音波式の洗浄機などはさらに高価だし、また安価ではあるものの粘着式の洗浄器具といった商品は効果が少々疑問であったので、思い切ってこれを購入してしまいました。
またスタイラスの状態を確認するのは肉眼では難しいため、15倍のルーペも導入しています。
ただ実際に使ってみて、1回の洗浄で使う液の量は1滴にも満たない、ブラシの先端にほんの少し液を染み込ませるだけで足りますし、週に1回洗浄するとしても数年は持つであろうことを考えると、それほど高額とは感じなくなりました。
長年レコードを扱ってきた経験からすると、ダイヤモンドの針先が摩耗するとは考えにくく、カートリッジの針交換が必要である理由はこのようなスタイラスの汚れにあると考えていたので、洗浄方法が確立すれば針交換の頻度が思いっきり減るであろうとも考えて、このセットの価格はコスト的に納得しています。
(カートリッジの取扱説明書には湿式の洗浄はしないようにとの注意書きがあたりするのですが、洗浄が原因で針先やカンチレバーの劣化を招いたとして、その時はいよいよ針交換すればいいと考えています。)
現在は前述の通り、1週間に1回程度の洗浄を行っていますが、高音部に歪み成分が多くなった、全体に微妙な歪み感ある、高音のドン詰まり感、などを感じた場合は大抵スタイラスの汚れが原因であることが多いので、随時洗浄を行うケースも多いです。
また使用感としてはこのブラシが優秀で、適度なコシがあって且つ針先とカンチレバーを痛めない感じが良いと思うポイントです。またレコード盤に針を落とす直前に(洗浄液を付けないで)さっと埃を落とす際にも使用しています。
レコード盤水洗い
スタイラスの汚れの原因ともなるレコード盤の汚れ、またスタイラスへ付着しないまでもプチプチ(パチパチ)なノイズの原因ともなる汚れについて、今まではレコード洗浄液による洗浄しか行ってきませんでしたが、水洗いを試してみました。
この際に留意しなければいけないことは、紙製のレーベル面の保護であります。表面がツルツルのコーティング紙(日本盤はほぼこれ)の場合はあまり気にすることもないのでしょうが、外国盤の場合は水濡れに弱い紙である場合もあって、水濡れからの保護を考える必要があります。
そこでレーベルプロテクタなるものが販売されていたりするので、レコードメンテナンス用品の老舗ナガオカのCLP02を購入しました(あと洗浄用の不織布も)
手順としてはこのレーベルプロテクタを装着した後、レコード盤全体を一回水濡れさせ、そこに台所用洗剤を1滴垂らしてから不織布でレコード盤全体を丁寧に磨きます。(力を入れずに。磨きの方向としてはレコード盤の音溝に沿って)
磨く時間についてはレコード盤の汚れ具合にもよりますが、割と長めに2~3分ぐるぐると磨くことが多いでしょうか。これをレコード盤両面に行ってから水流で十分にすすぎ、水を切ります。その後不織布で大まかに水分を拭き取った後にドライヤーの送風などで乾燥させます。
なかなかに手間のかかる作業ではありますが、プチプチノイズだらけで満足に聴けないような汚盤がスッキリと蘇る場合も多い(蘇らない場合もあります)ことを考えると、この手間を苦痛とは感じないもんです。(ただし冬場は水冷たいからちょっとね)
まとめと所感
と、以上が主に2023年に実施したことですが、コスト的にはこんな感じになります。音質改善効果の高さを考えるとコスト的には納得しています。
2022年に導入した機器(フォノイコライザー、カートリッジ)を早々に入れ替えてしまったりと行きつ戻りつした感もありますが、アナログレコードに最も嵌まっていた全盛期(最も嵌まってた時期)である20歳代を超える熱量でレコードを買い漁り聴きまくり、さらに音質向上に熱を注いだ2023年になりました。
それもこれも、以前の都内集合住宅の生活から、実家の田舎の一軒家に移り住んだことで周囲を気にすることなく大音量で音楽を聴ける環境になったことが大きいと思います。(大音量で聴ける環境はこの手の趣味では最も重要なことだなと改めて感じています。)
使用機器としてはこのようになりました。
今後については、おそらく盤の収集(あと本来のオタ活)に比重を置いて、オーディオ機器についてはしばらくこの状態で行こうと現時点では考えていますが、2022年末にもそんなことを思っていた気もするので、先のことはよくわかりません笑。