50mm F1.4で都会の中の静寂を撮る
消えていく。
歴史ある建物が、久しぶりに行ってみると高層ビルに変わってしまっている現象は、珍しくない。
本当にたまにしか行かなかったのに、偉そうなことは言えないけれど、
残して欲しかった。
あの趣のある和洋折衷のレストランの立ち姿、庭にある高い木々が道に落とす影、そして匂い。
現実的な課題を前に、感傷的なことばかり言っていられないことは十分わかっていても、二度と戻らないあの建物たちが消えてしまったことに、
寂しさという言葉では表せない感情が湧き上がる。
唯一、展覧会場として残るこの場所に、ワクワクしてお邪魔した。
大好きな「篠田桃紅」展が開催されていた。
凛とした姿勢と自由な心を持つ作家さんの世界は、
この空間でより輝いて見えた。
屋根の苔も美しく、外から眺める建物も美しい。
中ではお茶とお菓子をいただくことも出来て、庭を眺めながら、しばし
静寂な時を過ごす。
作品を見ながらいただくこともできるのがまた嬉しい。
この日は、キットレンズの50mm fF1.4しか持って行かなかったので、
こじんまりした部屋の中での撮影には不向きではあった。
まだ50mmの間隔に慣れていなかったため、
バック、バックと自分の中で呟きながら、
被写体から後退りすることもしばしば。
数寄屋造りの母屋や茶室などの、建具などをじっくり見ながら、
高層ビルやマンションに囲まれながらも
昔ながらの佇まいを残すこの建物にとても癒されてしまった。
どうぞいつまでも。