小澤征爾マエストロとの思い出・パリ編
小澤さんがお亡くなりになられましたね。
一つの、大きな時代が終わった気がします。
僕は18年前、小澤塾のカルメンのカヴァーをさせてもらったことで日本でのキャリアをスタートできましたし、その後NYへの道も頂けたので、本当に本当に感謝しかありません。
その、18年前のパリでの思い出深いエピソードを。。
当時、カルメンの東京公演に向けてリハが組まれていたのですが、寸前で小澤さんが忙しすぎて日本に帰って来られない!ということになりました。
そこで、、、なんと急遽僕たちカヴァー陣がパリに招聘されるという、、何とも贅沢な出来事が!!
着いた先はバスティーユのオペラ座。
地下のリハーサル室だったのですが、それぞれの部屋に「Debussy」とか「Fauré」とか名前が付いていて、めっちゃフランスやーん!とか感動しながら稽古しておりました、、
が、、
開始して数十分後、、小澤さんが一言、、
「ここのリハーサル室は窓が無くて、なんか嫌だな。空気がね!他のとこない?窓のあるとこ!」と仰って、、
バタバタしだすスタッフ陣、、
僕らからしたら、そりゃー地下の稽古場だから窓がないのは仕方ないやん、、と思ったのですが、、
小澤さんの鶴の一声で、、
次の日から陽の光と風の入る、ガルニエのオペラ座に稽古場が変更になったのでした!!笑
凄いなー、って思いました。
自分が「違う」と思う感覚をそのままにせず、その瞬間に自分にとって心地良い空間や音を求めること。
なるほど、この繰り返しこそが小澤征爾という人を創ってるのだな、と思いました。
スタッフ達も手を広げて、「また始まった、セイジの我儘が!」という顔をしながら、なんだか楽しそう。
彼らもまた、この「セイジの感性と行動力」が最高の音楽を作ることを知っていたんだろうなぁ。
「セイジのワガママ且つ最高の音楽を作るのを、俺たちが支えてるんだぜ!」っていう誇りを感じました。
音楽家に必要なのは良い音を出すだけでは無いです。
その人が何を大切にして生き、何を感じ、何を求めているのか。
それを音にして表現することです。
それを小澤さんに秒で教えてもらいました。
次の日、ガルニエの楽屋口から稽古場に入ろうとすると、当時音楽コーチをしていたピエールに後ろから声をかけられました。
「おはようマサト!入る前に感じて!ここを通る幸せを!ガルニエの楽屋口からソリストとして入れるのは本当に選ばれた人だけだった。カラス、モナコ、パヴァロッティ、その人たちの足跡の上を君は歩いてるんだよ。このチャンスはセイジからのプレゼント、次回はほんとのソリストとしてここを通れるように頑張ってね。」
小澤さんの周りに集まる音楽家やスタッフは本当に素敵な方達だと思います。それもマエストロの魂に共鳴してたんだろうな。
寂しい限りですが、マエストロの放った光は世界中の弟子達が未来に運ぶことでしょう。
有難うございました!!!献杯!!!
※写真は16年前のその時のものです!😊