H磐田戦 次のレッズへ
なんとも素晴らしいゲームとストーリーだった。今季一番現地に行ってよかったと心から思える最高の一夜だった。
共に戦ってくれた仲間とこれまでの数年に思いを馳せると同時にこれからの浦和レッズを期待せずにいられない。
キャプテン、副キャプテン、歴代最高DFの退団が決まる でも
酒井宏樹、岩尾憲、アレクサンダー・ショルツの退団が決まった。
試合後に宏樹とショルツの挨拶が行われるとアナウンス。
彼ら三人は発展途上の浦和レッズに加入してFB本部設立後最大の成果となるACL制覇に最大限の貢献をしてくれた。人格面にも優れ、酒井は国際経験を生かしてACLやCWCでチームをよく引っ張ったし、ショルツは日本の文化、岩尾は浦和の文化を積極的に理解して言動に反映させようと努力が垣間見ることができた。
やはりそんな彼らがいなくなるというのは寂しいというだけでなく、レッズの戦力に大きな痛手を受けることは間違いない。
ショルツと酒井の挨拶が予定されているこの試合、退団する彼らのためにという気持ちがないわけではないが、私はどちらかというとこの先浦和レッズに残って戦う選手たちを奮い立たせたい。この大きな穴を感じさせないほどに強く闘ってほしい。難しいことを言っているのは承知の上だが一人でもそんな姿を見られたらいいなと試合に臨んだ。
伊藤敦樹、キャプテンマークの覚悟
First impressionが鳴り、選手がビジョンに映し出されると小さなどよめきが起こった。敦樹がキャプテンマークを巻いている。彼もまた、近年の浦和レッズの顔となるような存在だったが、去年の過密日程のダメージも影響してかたまに緩慢なプレーがあったりとシーズン序盤は安定したパフォーマンスを出力できないこともあった。だから試合前には「敦樹だったらいいね」など希望的観測として話していたのだが、ことが現実に起こり、そしてキッと鋭い目をした敦樹を見て誰もが次のキャプテンが敦樹であることを確信した。
ゴール裏もすかさず敦樹コール。この試合における敦樹に対する期待がこれまでにないほど高まっていた。
試合が始まると敦樹の気合が明らかに違うことが素人目にしてもよく分かった。中盤の奪い合いでは絶対に負けないし、近いサイドにはめた時にはコートの端まで飛び出して奪取。またビルドアップでも前を向けるときは必ず前を向くし裏への飛び出しまでこなす。ピッチ全体への影響力が非常に高い。
個人のパフォーマンスが向上しているのもあるが、目立つ蛍光色の腕章が存在感を高めているのは間違いない。
先制 大躍進石原
次の浦和を担う選手として大事な一人になってくるのが石原広教。今季湘南から加入し、キャンプの時点では完全にBチームの扱いを受けていたが、酒井の故障をきっかけに試合に絡むとスタメンに定着。小柄だがビルドアップがこなせて走力と跳躍力がある現代型パワフルファイターは完全に序列をひっくり返すに成功した。酒井がいなくなったとしても戦力面で石原ならやってくれるという安心感がある。
先制点はそんな石原のプロ初ゴールだった。ゴール裏からだとバイタル付近での回しはよく見えなかったが、敦樹が大きく左サイドを回ったと思ったらいいクロスが上がり、だれか飛び込め!と叫んだところに一人突っ込んでいった姿が見えた。番号は見えなかったが後ろ姿で石原のジャンプだとすぐわかった。
入団当初、大きな壁として語っていた酒井が退団するこの試合で力を見せつけた石原には期待以上の信頼感が生まれた。これからのレッズを頼むぞ。
ハイライトで見てみると逆のSB大畑が非常にいい動きをしていたので見てほしい。スペースを自分の立ち位置一つで空けてチャンスを作った彼も最近また伸びてきていてうれしい。オリンピックでもう一つ上の絶対的な選手になってほしい。
浦和の為に走って走る渡邊凌磨
浦和の為に走りまくる漢、渡邊凌磨。現在走行距離はリーグ3位の242.3キロメートル。前節も自身の逆サイドの相手まで猛然とプレスをかけに走りカウンターを阻止するなど走りで熱さを見せてくれる選手。私は特にボールを失った後の取り返してやるという気迫が非常に好きだ。
この試合でももちろん走りまくり。リンセンとコンビを組んでCBにコースを切りながらダッシュ。サイドに逃げられるとスピードを落とさずにそのままSBまでプレス。磐田は長い時間対応できず常に主導権を握り続けることができた。
こんなに献身的な選手だからこそ数字で報われてほしいと強く思う。思い出すのは武藤雄樹。彼も走りまくって結果を残した一人だった。是非とも彼のように盛り上がるチャントを送ってあげたいものだ。
そして二試合連続結果を残す。
自陣でボールを奪うと石原が前進。オラが明けたスペースに敦樹が飛び込みマイナスのクロス。渡邊凌磨はゴール前で構えていて難しいバウンドのボールを右足一閃
この前に一度は裏抜けでネットを揺らすもオフサイドでノーゴールだった。前半にも惜しいシュートを放っており何度もシュートの姿勢を見せるのもレッズサポ的にポイントが高い。そして何度も打つからこそチャンスをものにできる。
彼の働き、そしてメンタリティは現状誰にも代えがたい。幼少期からレッズファンであったことを公言している選手ということもあり応援したくなる要素が詰まっている選手だと思う。来年はユニの販売数が爆伸びすると思うので収入面でも浦和を支えてほしい。
出来すぎたストーリー キャプテン伊藤敦樹
上で挙げた3人のほかにもショルツの後釜となる佐藤、ここ最近輝きを放っている武田、グスタフソンとは違う形でゲームを作る安居などこの先も浦和で戦う選手たちも奮闘した中で試合を決めたのは、この試合の主人公、キャプテン伊藤敦樹だった。
渡邊凌磨が相手陣地で粘ると大畑が奪取してグラウンダーのパス。武田が冷静にスルーをした先にいたのは敦樹。
決まった瞬間ゴール裏が瞬間で沸き立って、近くにいた若い野郎どもと抱き合って敦樹敦樹と連呼した。
デビューしてからもう4年目、ずっと見守って押し続けた背中がこんなにも大きくなったことに感慨深くなってしまう。
本人はもしかしたら海外挑戦をしたいのかもしれない。それでも今日の試合で浦和を引っ張る敦樹の姿を夢想してしまったのだからどうしようもない。あえて言う。次は敦樹、お前の時代だ。
酒井とショルツの挨拶
磐田に完勝し酒井の挨拶の中にもあったが非常に和やかな空気でセレモニーをはじめられたのでほっとした。
まずは酒井。彼は本当にACLという国際タイトルを本当に渇望していたのだなと改めて思った。ワールドカップやオリンピックにオーバーエイジとして出場するなど自身の選手としてのキャリアの重心を国際舞台に置いているからこそ、レッズの特異点として輝いていたのだなと改めてわかる。レッズが国際舞台で輝き続けられるならまた会えるだろう。
次にショルツ。彼なら通訳なしで話すだろうと思っていたから一人でマイクの前に立ったことに驚きはなかった。おそらく通訳を交えたほうが正確なニュアンスのメッセージを選べるだろうが、日本に対して一番理解を寄せようとしたショルツがどのような日本語を選ぶのかが気になっていた。
そんな中で「どうやってもこの複雑な気持ちをうまく表現することができない」と言ってくれたことが逆に、自分のこれまで伝えようとしてきた言葉にならない思いをショルツも持ってくれていたのだなと感じてうれしかった。
シーズンは続く 再び世界で輝け浦和レッズ
二人に加えて岩尾、ソルバッケンも抜けてしまったがシーズンはまだ折り返し。磐田戦の勝利で首位までは遠くともACL圏までは6差まで詰められた。
酒井は特に顕著だが、国際部隊があるから来てくれる選手もいる。彼らに匹敵する選手たちを呼びたいのなら、このシーズンで成長し必ずや世界への切符を奪い返した上でCWCに殴り込む。
新しい時代はすでに始まっている。というより、過去と現在の延長線上にある。来週の駒場からもう一度世界を目指そう。
追記
新時代の風を受けて気持ち良くなっていたけど、最後に宇賀神が出てきてミドルシュートを打ってくれたからノスタルジーにも浸れて最高でした。