【ライトノベル?】Vオタ家政夫#18

クビになったVtuberオタ、ライバル事務所の姉の家政夫に転職し気付けばざまぁ完了~人気爆上がりVtuber達に言い寄られてますがそういうのいいので元気にてぇてぇ配信してください~

18てぇてぇ『一週間ってぇ、あっという間なんだってぇ』前半

【70日目・ルイジ視点】

「いやー☆ マジで、あの事務所クソですわ! 先輩追い出すなんて!」

 元フロンタニクス所属の後輩が転生してウチに来た。
 新しい名前は、加賀ガガ。
 俺が辞めたと分かってすぐに、【フロンタニクス】を辞めたらしい。
 デビュー直前だったし、そこまで大きく揉めなかったみたいだ。
 そして、色んな偶然が重なり、とんとん拍子に、【ワルプルギス】でのデビューが決まったらしい。

 まあ、フロンタニクスも今、めちゃくちゃヤバいって噂だし、ファンも薄々感づいているがむしろ転生出来て良かったと思っているようだ。
 俺自身もデビュー前にかなり関わりがあったし、才能も感じていたので、正直コイツが埋もれなくてよかったという気持ちもある。

「で、お前は何しに来たの?」
「人生設計ですよ!」
「人生設計?」
「あ、あ、違いますよ! 勘違いしないで下さいよ! 私のキャラで今後どういう風に立ち回るのが正解か先輩にアドバイスを貰いたくて!」
「ん? そういう意味だと思ってたけど?」

 いて! 殴られた。なんでだ? 俺がお前の人生プランに口出すつもりなんてない。
 俺は、例えば、恋人も結婚もいいと思う。それで配信に力が入るならそれでいい。
 それはファンそれぞれだろうけど、俺は良いと思う。

「先輩……結婚願望とかないんですか?」
「あるけど、Vtuberオタクだし、絶対苦労させるだろうからなー、しないんじゃない?」
「じゃ、じゃあ、恋人もいないんですか?」
「いないいない。いるわけないじゃん」
「じゃ、じゃあ、恋人になりたいって人が現れたら」
「配信見る時間が減るから断る」

 いてえええ! 蹴られた! なんで?

「なんで蹴るんだよ! お前も推しだぞ! 俺、お前の声好きだし!」
「にゃああああああああ! 私はこのあふれ出る行き場のない怒りをどこにぶつければ!」
「配信だ! 配信でお前の叫びを聞かせてくれ!」
「やってやらあああああああ!」

 そして、この新人Vtuber加賀ガガの憤怒の殲滅ゲーム配信『ガガガチギレゲーム配信』は神回と呼ばれるようになった。
 やったね!

【71日目・ツノ視点】

「ねえ、この服どう思う?」

 今日は、ルイジとお出かけだ。

「あのー、今日はツノさんの生活を改善する為に、家電や食料を買いに来たはずでは?」
「そうよ。でも、ルイジの知識が凄すぎて一瞬で終わっちゃったじゃない」
「そりゃあ、推しの為なら、一生懸命、調べてきますから」

 その言葉にどきっとする。
 ツノがどういう人間で、何がツノにとって良いか、しっかり見てくれるひと。
 もっとアタシを見てほしいひと。

「ね、ねえ、だから、この服どう?」
「すごく似合ってますよ。普段の服装とは違うツノさんのギャップにどきどきします」

 いやああああああああああああ!
 どきどきすんのはこっちだって!
 なんなの!? コイツ! 女慣れし過ぎてない!?
 買いますぅううう! 買いましたぁああ!

「ねえ、アンタ、本当に彼女とかいなかったの? 女慣れし過ぎてない?」
「ああ、前の事務所でも良く買い物付き合わされたんで……」
「ああ」

 そういうことか。
 まあ、気持ちは分かる。一緒に買い物に行って楽しくなるひとだ。
 何一つ文句言わないし、一つ一つの誉め言葉が上手だし、かといって注意もちゃんと促してくる。さりげない気遣いもすごい。
 え? ヤバくない? なんでこんなひとに相手いないの?

「うわああああああ! あ、あの! Vチップスが売られてる! か、買ってきていいですか!?」

 これだな。
 アタシの許可を取るとルイジはダッシュでVtuberのカードがついたお菓子を買いに行った。
 そして、すっごいかわいい無邪気な笑顔で帰ってきた! くそう! かわいい!

「って、あれ? 一個だけ?」
「他のファンも買いたいでしょうし」

 こいつ! こういうとこ! こういうとこ! こういうとこ!

「あの、さ……アタシって魅力ないかなあ、Vtuberとしてじゃなく、アタシ自身が」
「え? そんな事ないですよ。度々、疲れてない?って聞いてくれますし、話してて凄く楽しいですし、一緒にいて居心地良いですよ」

 こういうとこ。

「ほんとに? アタシって、ルイジから見て魅力的?」
「はい、勿論。すっごく魅力的ですよ。嘘じゃないです」

 こういうとこ。

「じゃあ、もし仮に、付き合ってって言ったら?」
「あ、付き合わないです。配信頑張って頂きたいですし」

 こういうとこーーーーーーー!

「そっか」
「な、なので、あの、ちょっと離れてもらえたら……流石にオレも男なのでどきどきはしますので……」

 こういうとこぉ~。

 その日のアタシの配信は絶好調だった。えへへ。

【72日目・ルイジ視点】

「あの、姉さん?」
「なに?」
「今日は、その、お仕事は?」
「今日は、お休み」
「そっか、あ、あの、俺の仕事は」
「今日のルイジの仕事は私を甘やかすこと」
「そ、そっか」

 バレた。
 昨日、ツノさんと一緒に買い物に行ったのがバレた。
 姉の独占欲は何処から来てるのか。
 まあ、俺はV狂いの一生独身だろうから構わないが、姉さんはちょっと心配だ。

 現在、膝枕中だ。
 俺の膝の上に姉さんが寝転がっている。
 髪を梳かしながら撫で続ける。
 それが今日の俺の仕事らしい。

「累児」
「ん?」
「ありがとう」
「なんで、突然?」
「累児は一つの事に夢中になったらそれ一直線だけど、それでも、絶対家族の事を優先してくれるから」
「まあ、そうしたいだけだよ」
「そっか」
「うん。だから、おいしいごはん作るから。元気でいてね、姉さん」
「うん」

 そうして、姉は静かに眠り始めた。
 疲れた身体や喉、そして、脳が少しでも休めるよう祈りながら、ゆっくり丁寧に姉さんの髪を撫で続けた。


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