【ライトノベル?】Vオタ家政夫#43

クビになったVtuberオタ、ライバル事務所の姉の家政夫に転職し気付けばざまぁ完了~人気爆上がりVtuber達に言い寄られてますがそういうのいいので元気にてぇてぇ配信してください~

43てぇてぇ『真っ直ぐってぇ、手が付けられない時があるよねってぇ』

『今日も元気にいけそーだ☆ それでは、今日も頑張っていきましょう。がんばれーぶい♪』

 朝配信終了の挨拶。
 そーだの配信は、うてめ様に次ぐウテウトトーク満載の喋りだ。

 もうウテウトという人物が好きだというのをしっかり公言している。
 そうなると、そーだのような女性Vtuberの場合、ぶっちゃけファンは減る。
 確かに、ファンは減った。だが、そのあと増えた。

 つまり、人気があるのだ。
 それは、もうなんかウテウトが、また逆に空想上の人物くらいになり始めている事や、そーだの事件を知る人間からすればほれてまうやろー! 案件だった事や、そのそーだの純愛っぷり、そして、何よりVtuberとしてのラインをしっかり分かっているそーだだから出来るトーク技術の高さだろう。

 言ってはいけない事、やってはいけない事、そーだは色んな経験を積み一番分かっている。
 ある意味プロだ。

 いや、まあ、全員配信事故等出来るだけ起こさないように事務所でちゃんと教育受けているプロなんだけど、そーだはパニックにならずその辺りをちゃんと見極め、ワルプルギスに入ってから一度も事故を起こしたことがないのだ。
 フロンタニクスでの起こしていた配信事故は、社長命令の炎上目的だったし、闇堕ち前は一度も事故をしていない。

 なので、信用と実績のそーだのウテウトトークは人気となっていた。
 そーだは週2で朝配信をやっているが、ウテウトニュースは毎回で、しゅわっことてめーらに特に大人気だ。

 そんなプロフェッショナルそーだがにこやかに微笑みながら戻ってくる。
 なお、空気はすごいことになっている。

「あ、皆さんおはようございます」
「「「「「……」」」」」」

 ほぼ全員、微妙な微笑みを返す。
 さっきまでの俺に向けてたジト目が本当に嘘のような状態だ。

 理由は色々ある。
 まず一つは、そーだの曇りなき眼と声だろう。
 とても澄んだ瞳でみんなを見つめ、澄んだ声であいさつをしてくる。
 嫌味のまったくないリスペクトも十分込められた言葉にみんな返す言葉が見当たらないのだろう。

 次に、似たようなところではあるが、そーだはみんなのことが好きだ。
 そして、俺が恋愛対象として誰かを選ぶならそれで構わないと考えているのだ。
 その上で、家政婦にさせてもらえれば良いという絶妙な立ち位置なのだ。
 なので、バチバチに正面向かい合ってやりあうわけでもなければ、其々に対してリスペクトを持っているので、メチャクチャ対応が難しいのだ。

「……」

 唯一、厳しい目で見ているのが、姉さんだ。
 姉さんは、配信等でお義姉様と呼ばれていることで、お姑さんのような目でそーだを見ている。

 ただ、

「お義姉さま、これ今日のルイジさんのキッチンでの姿ですよ」
「かっこいいっ……! 頂戴、お願い!」

 チョロいチョロすぎる!
 毎回こんな感じで厳しい空気を出しておきながら、俺の何かで陥落する姉が悲しい!
 そーだは俺に対する好意を全力で向けているし恥ずかしげもなく言えるので、姉は割と簡単に引っかかって盛り上がってしまうのだ。

「あ~、もうそーだちゃんに関しては、味方にしておくのが手っ取り早そう~、だから、ツノ寝る~。ルイジちゃん、ごちそうさま~」
「の、ノエももう寝る! ルイジごちそうさま」
「ん~、ワタシもパンクしてきた。一旦寝る」

 ツノノエマリネは早々に退散することを決めたらしくご飯を食べ自分たちの部屋に帰る。
 ひとまず、朝配信が終わると、穏やかな空気と言うか弛緩した空気が流れ始める。
 とにかく、配信中のストレスがヤバい。

 ガガは納得いかないらしくじーっとそーだを見つめているし、さなぎちゃんはてめーらでもある為姉さん、うてめ様とそーだが仲良くなってるのにも不満のようでほっぺを膨らませている。リスのようでかわいい。

「ルイジ……何をニヤニヤしているの?」

 妖気を感じる!
 気付けば、姉さんとそーだが笑っている。

 姉さんは純粋な嫉妬だ。これはこれで怖いのだが……。

「まあ、ルイジさん。さなぎ先輩を見てニヤニヤしていたんですか? さなぎ先輩かわいいですもんね♪」

 これである。そーだは、他の人間を褒めてくるのだ。
 そして、あなたの味方ですよアピールをしてくる。
 目が! 目が! 訴えかけている……!

『さなぎ先輩が好きでも私は大丈夫です。だから、私もお側に居させてくださいね』と!

 え? これ、どうしたらいい? マジで詰んでね?
 ファンの中には一方的に愛情を注ぎそれに幸せを見出す人がいる。
 俺もVtuberに対してそうだ。
 だが、こんな至近距離でそんな空気出されるヤツおる~?

 俺は絶賛困っている。
 が、困ったことに俺が困るのが好きなヤツがいるのだ。

「ま、いっか。そーだとシェアでもガガ的には問題ないし、むしろ、それもアリか~☆ じゃ、ガガも寝ま~す! ごちでした! おやす~」

 ガガぁああああああああ!
 そして、頼りのさなぎちゃんはそーだの発言で顔を真っ赤にしている。

「あ、う、あの、るいじさんがみてくれるのは、あの、うの、ウノじゃなくて、えと、は、配信の準備してきます! ごちそうさまでした!」

 さなぎちゃんが去って行く。
 そして、俺が居た堪れなくなり片づけを始めると、姉さんが背後から迫る。

「累児……私は貴方の何?」
「ね、姉さんは俺の家族であり、姉さんだよ……この世界でたった一人の姉さんだよ」

 怖いほど綺麗に笑っていた姉さんは顔を綻ばせ微笑む。
 よかった正解!

「そうよ。だから、累児……貴方がもし、もし、仮に、誰かと結婚するとして、この子を連れて行くなら、姉さんも連れて行ってくれるわよね?」

 ん? 意味不明なんだが?

 まず、そーだは連れて行く可能性あるのは何故?
 姉さんが来るのは何故?

 ま、まあ、それはともかく俺は結婚するつもりはない。
 なので、

「わ、わかった」

 適当に返事をしておく。
 すると、姉さんは満足そうに微笑み、

「じゃあ、私、今日はレッスンあるから。……大人しく家で留守番してるのよ?」

 姉さんがそう言い残して去って行く。こええ……。
 そして、結局残されたのはそーだと俺。

「さ、じゃあ、片付けしちゃいましょうか?」

 ニコニコ顔のそーだ。さっきの話で満足していたようだ。
 二人並んで洗い物や片づけをしながら、俺はため息交じりにそーだに話しかける。

「あのなあ、そーだ……お前は俺に恩を感じているかもしれないけどな。そんな事は考えなくていいんだぞ。お前はお前のしあわせを一番に考えてくれたら俺はそれがうれしいんだか……」
「ルイジさんの傍にいることが一番のしあわせですけど?」

 曇りなき眼で言う。逆にこええ……!

「いや、でも、ほら、なに? その……独占欲とか……」

 自分で言うの恥ずかしいんだが! でも、ほら、あるじゃん! そういうのしんどくないの!?

「そうですねえ……例えば、ルイジさんはVtuberとキスとかそれ以上とかしたいと考えてますか?」
「いいや、まったく」

 元気にてぇてぇ配信してくれればそれでいい。

「私、それが少しわかった気がしたんです。私の一番は、ルイジさんが元気で喜んでくれる、笑顔でいてくれることなんです。それが私の一番のてぇてぇなんです」
「そう、言われると、何も言えねえ……!」
「ふふふ……」

 片づけを終え、二人でお昼の下ごしらえを始める。
 そーだは俺の考えが分かっているかのように的確にサポートしてくれる。

「私、今回のアニメの役を勉強してて分かったことがあるんです」

 アニメの役。イケメンアイドル達を支える寮母の役か。

「ほう、何が分かったんだ? ネタバレしない程度におしえ……」

 俺の口にさくらんぼが押し込まれる。
 お昼のデザートに使おうと思ってた……。
 押し込まれた勢いでそーだの指が唇に……。

「ある意味一途なルイジさんって本当に素敵だなあって、大好きだなあって」

 口の中のチェリーは甘酸っぱく、しまったちょっとまだ固いなとか俺は何故か考えてて……

「だから、尊敬はしてますしルイジさんの気持ちは分かります。けど、決して諦めたわけではないですからね。ルイジさんの今の顔見て、ルイジさんだって人間だ、って、男の子だ、って分かったから」

 そう言ってそーだは微笑む。え? 今、俺どんな顔してる?

「じゃ、じゃあ、私、お掃除してきますね」

 顔をさくらんぼくらい真っ赤にしたそーだが去って行く。
 多分だけど、多分だけど、俺の顔も同じくらい真っ赤だった。

 ぱしゃ。

「あ」
「にひー」

 多分じゃなかった。
 俺の顔を盗み撮りしたガガのスマホを没収して、画像を見たらマジで真っ赤っかでヤバかった。

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