【ライトノベル?】Vオタ家政夫#4

クビになったVtuberオタ、ライバル事務所の姉の家政夫に転職し気付けばざまぁ完了~人気爆上がりVtuber達に言い寄られてますがそういうのいいので元気にてぇてぇ配信してください~

4てぇてぇ『弟ってぇ、姉が大切なんだってぇ』

『てめーら、お待たせー。【ワルプルギス】所属、高松うてめです』

 高松うてめ。【ワルプルギス】所属。
 ファンの事を『てめーら』と呼ぶ。呼ばれてる方も満更ではないのでいいのだろう。
 異常な歌唱力による歌枠と、演技力を活かした企画、そして、弟について語り続ける雑談が人気。

 緑髪に、緑の瞳、身体に女神みたいな衣を纏い、茨を巻いたファンタジーな存在。

 それが我が姉、天堂真莉愛のVtuberの時の姿だ。

『さて、じゃあ、弟の話するね』
〈キター! ウテウト!〉
〈スパブラウテウト参戦!〉
〈ウテウト伝説再び〉

 ウテウト。高松うてめのトークの中に出てくる弟をてめーら達はそう呼ぶ。
 えーと、俺です。天堂累児。
 俺の話を姉は雑談枠でする。というか、ほぼ俺の話か、コメントから拾うか。
 そして、コメントから拾うのもウテウト関連がほとんど。

 そして、このトークが過激で猟奇的な好評なのだ。

 おい、おとうとのきもち。

 という位、激ヤバ内容だ。弟からすれば。
 具体的には、

〈今日もウテウトのお下がり?〉
〈ウテウトくん人形は隣?〉
〈配信前にウテウトボイス忘れず摂取した?〉

 姉さんは配信中、実家から持ってきた俺のお下がりを着ていて、俺に似せた人形を隣に置いて、いつの間にか録音していた学生時代の俺の声を聞いてから配信を始めるらしい。

『ええ、今日も弟分を摂取してきたわ。しかも、今日は濃厚なのを』

 おい、やめろ。

 だが、俺はVtuberうてめを応援したい。だが、我が姉、天堂真莉愛を止めたい。
 相反する気持ちがせめぎあい俺は、恐怖に震えながらコメントを打つ。

〈緑のアニキ:濃厚はヤバいが役に立つ〉

 これも……うてめの為だ……!

 緑のアニキ、それが俺のもう一つの名。
 タヌキのあれからとった。どうでもいいか。

 姉さんは激やばブラコンではあるが、Vtuberとしてのラインは気を付けている。
 身バレはしないよううまく話す位の理性はある。
 なら、何故こんなことにという感じだが。
 まあ、ともかく、その辺りの技術もあるが故、登録者も多い。
 大人気というまでではないが、人気Vである画面の中の彼女が何を言うか、色んな意味でドキドキしながら待ち構える。

『弟がね、ウチに住むことになったの』
〈同棲編突入〉
〈ウテウトに私はなりたい〉
〈ちょっと転生トラック探してくる〉

 現在、弟は架空の存在だと思われている。
 うてめはそれを否定しないし、これを受け入れる弟は異常だと思われているせいだろう。
 ただ、言わせてくれ。暫くきづかんかったんや。
 気付いた時には、もううてめの弟ークは始まっていた。

 そして、今日の姉も絶好調だ。

『今日はね、ごはんをつくってくれたの』
〈スパブラ飯参戦〉
〈激辛カレーかな〉
〈Mトマトやろ〉

『うん、トマトソーメン。ツナが入ってて、お茶漬けの素がかかってて美味しかった』
〈マジ?〉
〈うまそ〉
〈ドロー、ウテウト召喚〉

『そう、いつも弟のごはんは美味しいの。ウチは両親いつも帰りが遅くて、弟がごはんを作ってくれてた。うてめが料理ヘタだから』
〈料理企画は地獄絵図だった〉
〈尊い犠牲だった〉
〈いのちをだいじに〉

『でね、それだけじゃないの。弟は、その為に料理の勉強もいっぱいしてくれた。栄養学の本まで読みだして……元々凝り性っていうのもあるんだろうけどね、ふふ。だからね、弟の料理はあったかいの』
〈え? ウテウト実在?〉
〈このエモさウテウトいる説〉
〈事実は小説よりエモし〉

『弟はうてめの配信を楽しみにしてくれてる。うてめが楽しそうに配信するのを。てめーらと一緒に。だから、うてめは頑張れる。これからもっともっと頑張るからてめーらヨロシクね☆』
〈ウテブラてぇてぇ〉
〈情緒不安定なんだが〉
〈ちょっと泣いてくるわ〉

「………」

〈緑のアニキ:うてめ応援し続けます〉

 その後、姉は、ウテウト人形は、実家の俺の服で作っているとかなんとか色々言っていたが気にしない。
 覚えていない。
 知らない。

 気付けば配信が終わっていた。後半の記憶はほとんどないなあ。何故か。
 そして、リビングに戻ってきた姉さんは幸せそうな笑顔でこちらに歩いてくる。

「ねえ、累児。見ててくれたよね?」
「勿論。姉さん、よかったよ。あ、冷やしトマト食べる?」

 素麺と一緒に作った、トマトの砂糖漬けを切り分けておいた。

「ふふ……あったかい」
「そんなわけないでしょ。冷やしてたんだよ」
「あったかいわよ」

 そう言うと姉さんは俺の頬に手を当てる。
 そして、うてめとは違うちょっと低い。けれど、同じように綺麗な声で。

「あったかい。累児といっしょで」

 そう言って笑う姉。

 俺は、今日、Vtuber(姉)を支える仕事についたのだった。

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