【ライトノベル?】Vオタ家政夫#15

クビになったVtuberオタ、ライバル事務所の姉の家政夫に転職し気付けばざまぁ完了~人気爆上がりVtuber達に言い寄られてますがそういうのいいので元気にてぇてぇ配信してください~

15てぇてぇ『塩ってぇ、人間に必要なんだってぇ』

【ルイジ視点】

「ふう……おもしろかったなあ……」

 うてめ様とノエ様の配信を見終えて満足感に浸る。
 終始、ウテウトネタに走っていた気がするけど、良かった。
 俺がうてめの弟であることを忘れればよかった。姉さん、俺の事好きすぎ。

 でも、シオデレの良い所が出ていたように思う。今回のコラボ。

 前にノエ様から連絡きたとき、大変だった。姉さんが。

『累児……! ノエ先輩に出来れば早く会いたいって……どういうこと……?』

 静寂。
 姉さんから、ノエさんからコラボの話が来ていると聞いて、出来るなら早く会いたいと言って、姉さんが返答した後、こうなった。

 え……? 今日、死ぬ……? って、思ってしまった。

 けれど、最近のノエさんの配信を見るとちょっと走っているというか全力疾走してアドレナリン出しまくって痛みを忘れているような感じで心配だった。
 元居た事務所【フロンタニクス】にもそういう子が居た。多分、これはマネージャー経験によるアラートなのかもしれない。

 と、理由を姉さんに話すと、姉さんは途端に優しい顔をして、

『流石、累児ね。わかったわ。私に出来ることはある?』

 姉さんは、そう言ってくれた。さっきの夜叉が嘘のように。
 そして、俺が推測するノエさんの今の状況と、ノエさんの良い所を出来るだけ話した。

 そして、今回のコラボでも、こういう絡みが多分、ノエさんやりやすいんじゃないか、という提案はした。
 それをうまくコントロールし自分のトークにする姉さんは、いや、高松うてめは流石の一言だった。

 二人が、部屋から出てくる。

「お疲れ様でした。あの、デザートありますけど、食べますか?」
「……今日は、帰ります。ありがとうございました。ご馳走様でした」

 ぺこりと丁寧にお辞儀をするノエさん。
 俺は準備しておいた小さな紙袋を渡す。

「これは……?」
「あ、もしかしたらお急ぎかなあと思って、包んでおきました。あの、豆乳のレアチーズケーキなんでヘルシーです。ティーパックも入れているんでよければそちらと一緒に」

 ノエさんは、あった時の雰囲気から、男性が苦手そうだったし、勢いよくこっちが話すと、凄く緊張していた。
 なので、早くここを出たいかもしれないと思い準備しておいて良かった。

「……」

 え? 無言?
 やはり、流石に、見ず知らずの男が作ったものを持ち帰るのはちょっと怖いのだろうか。

「ありがとうございます」

 と、思ったら、さっと受け取り胸に抱えて去ろうとする。

「あ! あの! いや、嫌だったら、いいんですよ。あの、お気を遣わず」
「……の」
「え?」
「食べたい、の! 食べたいと思っているのよ! なに!? 悪い!」

 俯いていたその顔がこっちを見上げると、真っ赤になっていたノエさんが見えた。

「なんなの! あのごはん! おいしすぎるんですけど! しかも、あれだけ食べてあのカロリー量ってなに!? あと、レシピ何!? すっごいくわしいし、うさぎの絵かわいいし! あなたのその気遣いなに!? っていうか、塩の説明の時の裏メッセージみたいなのなに!? 隠すの下手なんだけど!」

 あれ? 褒められて、た? 最後、怒られた?
 ヤバい! 説明が下手すぎたか! 【フロンタニクス】でもよく怒られてた!
 もっと分かりやすく説明しないと勘違いしますよってVtuberの子達に!

「あ! あの! あれは、ノエさんの、いえ、塩ノエ様の塩対応を最近もしかして気にしているのかなと思ってですね。あの! 僕はすっごく好きです! ノエ様の塩! ノエ様の塩最高です! でも、マジレスする感じのがたまにありますよね。あれ、ちょっと怖いですよね。あの、人はですね、塩が欲しいから摂取するんです。なのに、多めの塩が欲しくもないのに浴びに来て文句言う人間なんて無視すればいいんですよ! 大丈夫、多めの塩を浴びて救われている人だっています! 俺もその一人です! あのしょっぱさは、しお分は、ノエさまの愛に満ち溢れていると言いたいかったんです、実は!」
「わがってるわよう!!! あ、の、あんたが、そういう意味でいってくれてたのくらいわかってるわよお、ばかあ……!」

 あ、れ……? やべえ、ノエさんが泣き出した。どういうこと?

「う……! えっ……! えっ……! 違う。ちょっと待って。……うん、ありがとう、ありがとね……塩対応はキャラだってわかってるけど、やっぱ冷たいとか言われるとね、みんなはそんな気ないのは分かってるけどやっぱちょっと辛くってね。ありがとね、うれしかったよ、あと、美味しかったごはん、ワタシがダイエット中だって知ってて、低カロリー料理で、あんな美味しくて、レシピまでありがとね……!」
「は、はい……! あの、がんばってください! これからも応援し続けますから!」
「うあああああああああ~、うてめ~、一緒に帰って~、無理~」
「はいはい、一緒に行きましょう」

 姉さんがノエさんと一緒に帰ろうとする。
 けれど、ノエさんはハッと何かに気付き、俯いたまま、こちらに来て何かを俺に渡して、俺を睨みつける。

「まだぐるがらね! おぼえでなざいよ!」

 そう叫ぶと、ノエさんは出ていく。そして、姉さんはその後を追う。
 あとで、連絡して、迎えにいくようにしよう。まあ、どうせ迎えに来てって言われるだろうけど。

「何渡されたんだ?」

 握らされた何かを見ると紙の塊だった。
 開くと、

「あは」

 他にもレシピあれば教えてくれると嬉しいです

 ちいさなうさぎのイラストと吹き出しの中に、女の子らしい字でそう書かれた、レシピの切れ端だった。

 Vtuberだって、中身は本物の人間だ。普段の生活だってある。
 見た目を気にする子だって勿論いた。

 体型の変化はメンタルの不調にも影響するし、やっぱり可愛くなったと自覚すると放送もノることが多い。
 逆にメンタルの不調が体型や肌に出ることも多い。

 俺は仕事が出来ないから、その変化を、見た目、声、空気で分かるようマネージャー時は頑張っていた。
 特に、小村れもねーどは、すごく繊細だったから、ケアとフォローは徹底した。
 その中で覚えたダイエットや美肌レシピはいっぱいある。

 特に美肌レシピは覚えていた。昔、姉さんに出すと喜んでくれたから。

『累児は姉さんに綺麗になって欲しいのね? ふふ……私、隣に歩いてほしい女になれるようがんばるわね』

 後半のはちょっと何言ってるかよくわからなかった。

 ノエさんが帰った後、俺の部屋の前の廊下に水たまりが出来ていて、掃除が大変だった。
 涙は心の汗というけれど、ノエさんのこのVtuberの努力と我慢の為に流したこのしょっぱい汗がもっともっと報われると良いなと心から思いながら、俺は彼女の涙を拭いた。

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