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ベースラインからの景色 vol.2 日本生命カップ2024(北海道大会)バスケットボール男子日本代表国際強化試合 【JPN vs AUS】第2戦

強化試合第1戦は、五輪ロスターから漏れたベテランと若手で構成されたオーストラリアにまさかの敗戦を喫したAKATSUKI JAPAN。しかし、試合後のホーバスHCの会見によれば戦術からラインナップまで色々試した結果だという。果たして今日もテストマッチが続くのか。テストしつつ勝ちも拾えるのか……昨日に続き、試される大地から不肖大柴がお届けする。(写真・文 = 大柴壮平)

まずは昨日のおさらいをしよう。第1戦の日本は戦術面でもラインナップ面でもさまざまなテストをした。まずは戦術面。オフェンスはワールドカップからプレーを10個ほど増やした。ディフェンスでは練習中であるアグレッシブなディフェンスを、試合を通して続けた。

そしてラインナップ。なんとホーバスHCは、ファウルトラブルに陥った山ノ内勇登以外の全ての選手に二桁のミニッツを与えた。さらに、試合後の記者会見でも、第1戦を終えてもまだ選考には頭を悩ませている趣旨の発言をしていた。

AKATSUKI JAPAN、入場!

おそらく、戦術面でのテストはこれからも続くと予想される。一方、パリ五輪までの日数を考えれば、ラインナップのテストは今日の試合で終わると考える方が妥当だ。昨日の試合も考慮に入れると、

ガード:河村勇輝、富樫勇樹
ウイング:比江島慎、富永啓生、馬場雄大
フォワード:吉井裕鷹
ビッグ:ジョシュ・ホーキンソン

ここまでは当確と見ていいだろう。さらに本番で渡邊雄太と八村塁が加わると仮定すると、残りのスポットは3枠。これを、

ガード:テーブス海、佐々木隆成
ウイング:金近廉、ジェイコブズ晶
フォワード:張本天傑
ビッグ:渡邉飛勇、山ノ内勇登、川真田紘也、井上宗一郎

という9人が争うことになる。この中で昨日に続けてチャンスを与えられたのは金近廉のみ。テーブス海、張本天傑、渡邉飛勇、山ノ内勇登に代わり、今日は佐々木隆成、ジェイコブズ晶、川真田紘也、井上宗一郎が入った。

当確組の一人、河村勇輝。大事な場面でスリーを決めてこの表情。

第1戦のメンバーの中では渡邉飛勇が長所をアピールできていたように思うが、第2戦のメンバーはどうだろうか。今日はそんな選考争いをメインにベースラインでカメラを構えた。ちなみに念のために書いておくと、試合結果は95対95の同点だった。バスケに同点ってあったっけ?という感じだが、強化試合のルールによりオーバータイムが行われなかったのだ。

【ガード】テーブス海 vs 佐々木隆成

いきなり悩ましい二択だ。しかもポジションを考えると、ほぼ確実にどちらかがロスターに入ることが予想される。北海道の強化試合だけを観ると、佐々木の方がアピールに成功したように思う。持ち前の身体能力でいきなりリムアタックを成功させたシーンは鳥肌が立った。

初代表、初得点を挙げる佐々木隆成

しかし、今日の佐々木の出場時間は4分余り。昨日のテーブスの半分以下である。その理由は明白で、テーブスは2番としても使われる(むしろ昨日は2番がメインだった)が、佐々木はあくまで河村、富樫の後ろに控える第3PGという立ち位置だったのだ。当然のことながら、2ポジションをこなせるテーブスの方が使われる機会が増える。

 佐々木隆成は外角のシュートも上手い。今日の試合では決まらなかったが、試合前のシューティングを見ている限り代表でもトップクラスのシュート力に見えた。

佐々木を河村や富樫と並べることはないのか。そんな質問をホーバスHCにぶつけてみると、合宿中に捻挫をしたせいで練習時間に制限があったため、PGしか練習できなかったとの答え。佐々木はテーブスより一回り小さく、しかも細い。国際試合で2番が務まるのかどうかはわからないものの、いきなりインパクトを与えた佐々木を選ぶか、それとも確実に2番もこなせるテーブスを取るか…….。

めちゃくちゃな難問だが、私は佐々木のロスター入りを予想する。富永啓生、比江島慎を筆頭に2番ポジションが充実している現状を考えると、第3PGがコンボである必要性が低いからだ。ホーバスHCの解答が一番楽しみなポジションかもしれない。

【ウイング】金近廉 vs ジェイコブズ晶

ホーバスHCからすれば、できればどちらかは連れていきたいだろう。2人とも日本人離れした体格と身体能力を持っている。守れる範囲も広いし、チームの課題であるリバウンドにも絡める。

9分20秒の出場で4リバウンドをもぎとったジェイコブズ晶

しかし、いかんせん2人ともシュートを決めることができなかった。ホーバス・ジャパンの戦い方でウイングからのシュートに頼れないのはかなり厳しい。もちろん外のシュートは波がある。とは言えこの2人の場合は前述の佐々木とは違い、試合前のシューティングでもタッチに苦しんでいる様子が見えた。

スーパースターになれるポテンシャルを持つ金近だが、シュートでのアピールはできず。

私は、この2人は泣く泣くカットと予想する。能力を考えたらめちゃくちゃ惜しいとは思うが、今回の超人枠は馬場雄大、吉井裕鷹、渡邊雄太、八村塁でなんとか回せるだろう。2人にはパリの後の日本代表を背負ってほしい。

【フォワード&ビッグ】渡邉飛勇 vs 張本天傑 vs 山ノ内勇登 vs 川真田紘也 vs 井上宗一郎

正直に言って、フロントコートは全員連れていきたい。なにせパリ五輪の相手はドイツ、フランス、そしてラトビアOQTの勝者という世界トップクラスの相手だ。今回のようなオーストラリアの3軍とはわけが違う。

日本のフロントコート陣で互角に渡り合えるのは、渡邊雄太、八村塁、ジョシュ・ホーキンソンだけだろう。彼らのいない時間帯を他の選手が死力を尽くして埋めなくてはならない。めちゃくちゃ重要な任務だし、頭数も必要だ。

幅を生かしたロールからボールを受けてゴール下に突進。
ダンクを決めた川真田紘也。

パリのロスター候補に残っている5人は、それぞれ特徴が違う。重ねて言うが全員連れていきたい。しかし、第3ガードは確実に連れていくから、私の予想通りウイング2人がカットだったとしてもパリに連れて行けるのはこのうちの2人だけだ。

私は、渡邉飛勇と川真田紘也がロスターに残ると予想する。昨日の試合で、渡邉の高さは魅力的だと改めて認識させられた。この5人の中でリムプロテクターと呼べるのは渡邉だけだ。もう一方の川真田には幅がある。ディフェンスで体を張れるのはもちろん、富樫にしても比江島にしても川真田のスクリーンは使いやすそうだった。この2人の能力は替えが効かないように思う。

井上宗一郎がスリーポイントでエンワンを獲得したシーン(目の前過ぎて画角に収まらなった)。

張本はできることが多い上に体が強く、シュート力もある。山ノ内はシュート力とリバウンド力に定評があり、昨日はその強みを見せられなかったが、キャンプでは素晴らしいパフォーマンスを見せていたとホーバスHCも言っていた。井上はビッグの中では最もスリーポイントが上手く、今日はぺリメーターのディフェンスも頑張っていた。3人共に素晴らしい選手だが、あくまで国際試合で渡邊、八村、ホーキンソンの代わりを務めろと言われた時に渡邉、川真田に軍配が上がるように私には思える。

最後はバタついた展開での同点という試合に、会場に集まったファンのボルテージも上がりまくっていた。まさに日本一丸。

今日の試合を写真で振り返っている時、ふとこのビッグビジョンに浮かぶ日本一丸の4文字を写した1枚が目に入った。私はこのキャッチフレーズに何の思い入れもなかったし、むしろあまり出来がいいと思っていなかったのだが、考えを改めた。

誰が残るにしても、ここまで選考を争ってきた全ての選手たちの力がAKATSUKI JAPANのチーム力を底上げしているのは間違いない。7月の韓国戦、そしてパリ五輪に選ばれたメンバーは、落選した選手たちの分も戦ってくれると信じている。


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