「PICK UP PLAYGROUND」ストリートボールの聖地・代々木公園でピックアップ(ゴミ拾い)
11月18日(土)、代々木公園バスケットコートには何やらいつも以上に人が集まっていた。快晴に恵まれたこの日、そこにいたのは老若男女を問わない約200人のバスケを愛する人々だった。
この日ストリートボールの聖地である代々木公園バスケットコートで行われていたのは「PICK UP PLAYGROUND」。
このイベントはピックアップゲームを行い、終わった後は参加者全員でゴミ拾いをする、バスケの ピックアップ とゴミ拾いの ピックアップ をかけたもの。
ピックアップゲームは代々木公園バスケットコートにある二つのコートでソフト(誰でも&総当たり戦)とハード(上級者&トーナメント戦勝ち上がり形式)に分かれて行われた。
日頃からこの場所でピックアップゲームをやっているボーラー達を人は「代々木パークボーラーズ」と呼ぶ。しかしこの日はそんな代々木パークボーラーズ以外も集まっていた。その理由はおそらく開催前から大きな話題を呼んでいたこの大会のロゴとグッズにあると私は踏んでいる。
なんと目を引くオシャレなロゴの中央にはあの赤髪の天才がこちらを向いて微笑んでいるではないか!私も、これを見た瞬間心臓が高鳴ったのを鮮明に覚えている。そう、このイベントのイラストを描いたのはあの「スラムダンク」の作者、井上雄彦先生だ。
このイベントのために井上先生にイラストデザインをお願いしたそうだ。
井上先生に今回のイベントの内容を伝えると、企画に賛同して力を貸してくれたのだ。
このイベントを開催した秋葉直之さんは言う。
僕らだけだとできないことがあるからそこの部分は赤髪の天才の力を貸してくれっていう相談をしたら快諾してくれて。
ALLDAYとSOMECITY、そこから生まれたAKTRやballaholic、TACHIKARAといった十何年仲間で一緒にシーンを作ってきたブランドがあるので、彼らにグッズを作ってもらってその販売収益の一部を寄付してもらい、それでゴミ拾いキットを作るんです。だからエコサイクルになる。それも含めて井上先生に「僕らだけだと出来ない事があるから、そこの部分は赤髪の天才の力を貸してください」という相談をしたところ、趣旨に賛同して頂き、まさかの描き下ろし(!)イラストを提供してくださることになりました。
実際私はこのロゴとイラストに惹かれてこのイベントを知り、今回の参加を決めたひとりだった。このイラストデザインがきっかけになり、今回このストリートボールのピックアップというものに初めて触れたのである。
このイラストのパーカーが欲しくてゲットして、ゲットしたのであればこの企画に参加してみよう、と思い、調べるとゴミ拾いもあるというのを知って参加のハードルが下がったのも事実だった。これまでなかなか踏み込むきっかけがなかったストリートボールに興味を持った瞬間だった。
ゴミ拾いの軍手やトングにもロゴが描かれていて、ゴミ拾いにもワクワクを味わってもらうという工夫も素敵だった。
ゲームに参加していない人もゴミ拾いは自由。その場に入れば誰でも参加できる。そこで知らない誰かと会話するきっかけができ、今後ここへ足を運ぶきっかけができ、勝手につくり上げていた壁が壊されていく。
秋葉直之さんに今回のイベント「PICK UP PLAYGROUND」を開催した理由を聞いてみた。
コロナになって体育館が閉鎖され、公園の利用者がめちゃくちゃ増えました。バスケをやりたかったら公園でやるしかない。その盛り上がりは嬉しかったけど、一方でゴミがめちゃくちゃ増えたという話を聞くようになりました。
ゴミとか騒音、そういうのはうまく付き合わないとやっていけない。バスケがいい感じで盛り上がっているのにそこで足元をすくわれるのは避けたかったんです。バスケが広がっていかなくなっちゃうかなと思った。
だけど僕らだけで公園を綺麗にするというのはあまり意味がないかなと思いました。普段からコートを使っているボーラーがちゃんとモラルを持てた方がいいんじゃないかと。
ゴミ拾いが大事というよりはモラルが大事。そのモラルはどうやったら生まれるかって考えた時に、ゴミを捨てたい人っていないですよね?例えば地元に戻ったら自分の街とか子供の頃お世話になった地域のおじさんちの前とかにゴミを捨てませんよね?それって帰属意識なんですよ。自分が愛している街だからとか自分が関係性があるようなひとたちに対しては、ゴミを捨てたりとかはしないはずなんだけど、だんだんそれが薄くなっていっちゃって、帰属意識がないと捨てれちゃう。捨てることができちゃう。
今ってコートに対して利用者がいるんだけど、そのコートに対して愛があったり自分たちのプレイグラウンズっていうものがあれば、ゴミは捨てないはず。捨てられているゴミがあったら拾うはずだなあって。そんな考えの中で結びついたものがピックアップでした。たまたま公園で行われているバスケはピックアップゲームって呼ばれていているしゴミ拾いもピックアップだからPICK UP PLAYGROUNDっていう名前を作ってみんなでピックアップゲームをやった後にゴミを拾えばいいんじゃないかっていうのが最初の着想でした。
こういうイベントを通して、日本人が苦手な「まーぜて!」のコミュニケーションの壁を壊していきたいんです。ボールを持っていっても「僕も混ぜて」が言えない人が多いじゃないですか。だけどゴミ拾いに上手いも下手もないからゴミ拾いをきっかけにコミュニケーションが広がってプレイグラウンドでの知り合いが増えて、公園でバスケをやるきっかけにもなるといいなと思うんです。
今後はこういった企画を全国どこの公園でもやりたいと思った人たちがやっていけるよう、管理者に提出する用の企画書をPDF等で作成して誰でも使用できる企画書を提供していくのだそう。ロゴ入りの軍手やトング、ゴミ袋も無料で寄付できるようにして、全国どこでも誰でもこの「PICK UP PLAYGROUND」を自分たちのプレイグラウンドで開催していけるように。
そしてこの日、なんと私もピックアップゲームに参加!
ダブドリガール、ピックアップゲーム初参戦。(もちろんソフトコートにて(笑)。)
さっきまで知らなかった人たちが一瞬にして「仲間」になった瞬間がとても刺激的で、終わった後は名前も知らない仲間と笑顔でグータッチを交わす。勝っても負けてもそこには笑顔があって、一気にピックアップゲームの魅力に惹き込まれました。
「まーぜてっ」が苦手な私もこのイベント、そしてゴミ拾いを通してコミュニケーションが図れて、尚且つ、ストリートボール、そしてピックアップゲームというものにグッと近づけた一日になりました。
文=中﨑絵梨奈
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