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ドウェイン・ケーシーバスケットボールクリニック2024 in 白鴎大学

7月27日、28日にNBAのトロント・ラプターズやデトロイト・ピストンズでHCを務め、最優秀HC賞も受賞したドウェイン・ケーシーが白鴎大学に来校し、バスケットボールクリニックを開催した。27日は白鴎大学女子をモデルチームに「ファンダメンタルとフローオフェンス」、28日は白鴎大学男子をモデルチームに「ゾーンディフェンスとフローオフェンス」がテーマで行われ、実践的な内容が落とし込まれた。ドウェイン・ケーシーが繰り返し伝えてくれたことは、細部へのこだわり(ディティール)であり、彼が最高のヘッドコーチとなれた理由がそこに詰まっていた。今回は参加した女子バスケ部と男子バスケ部、そしてドウェイン・ケーシーのインタビューを掲載していく。(文・写真 宮本將廣)

白鴎大学女子バスケ部 高田栞里ショートインタビュー

宮本 今日は参加してみてどうでしたか?
高田 めちゃくちゃ楽しかったし、バスケットボールの色んな考え方に触れることができて、すごく勉強になりました。
宮本 クリニックはケーシーコーチがすごく端的に伝えてくれて、スムーズに進んで行った印象です。そういう視点では理解度も求められただろうし、高田さんは後輩に声かけもしていましたね。何か意識していたことはありました?
高田 やっていきながら色んな動きが加わっていたので、下級生のなかには混乱していた選手もいたと思います。自分も途中で少し混乱してしまったところがあったので、最初のポジションだったり、誰からスクリーンをもらうのか。ポイントをしっかりと抑えるように意識していました。
宮本 1番の学びや発見を教えてもらえますか?
高田 チームでやっていることと違うやり方を学べたことは大きかったし、何気なくやっていたバウンスパスがあるシチュエーションでは、スティールされやすいからだめだよと言われたのはすごく学びになりました。そのあたりは今後に活かしていきたいなと思っています。
宮本 パスで言うと、ワンハンドではなくツーハンドで出しましょうという話もありました。個人的に意外だったんだけど……。
高田 私も意外でした。そのあたりはコーチによって考え方の違いがあるんだと知ることができました。自分の引き出しがひとつ増えてすごくよかったと感じています。
宮本 この学びをリーグ戦、インカレに繋げていくことになりますね。
高田 そうですね。やっぱり今の自分たちが積み上げてきたものに、今日教えてもらったことの中から使っていけるものを加えていくことが大事だと思います。できるできないではなく、自分たちの考えのなかに持っておくことで広がりが作れると思うので、うまく混ぜていきながら、もしくはタイミングをみて使えるようにする。そうやってさらに強くなった白鴎大学を見せていけるように頑張っていきたいと思います。

白鴎大学女子バスケ部 佐藤多伽子ショートインタビュー

宮本 今日は参加してみてどうでしたか?
佐藤 チームとしては流れの中でのオフェンスを教えてもらって、活かせそうなことをたくさん学べたのですごくよかったです。個人的にはスリーポイントシューターとしての自覚、気持ちの部分。自信を持ってプレーをしなくてはいけない。シュートを外してもみんながリバウンドを取ってくれると信頼して打ち切らないといけないんだなと学ばせてもらいました。
宮本 ベストシューター!!(クリニック内でケーシーコーチが、「ベストシューターは誰ですか?」と何度も質問し、佐藤さんが呼ばれていた)
佐藤 ハハハ、はい(笑)!
宮本 前にインタビューさせてもらって、「自信がない」って話をしていたけど、少し変わってきたなっていう印象を僕としては持ちました。
佐藤 やっぱり練習のときからそういう気持ちを持つことが大事なんだと改めて思いました。これからコートに入るときは、自信を持ってシュートを打とうと思います。
宮本 今日のクリニックで他にもなにか学んだことはありましたか?
佐藤 自分たちはどうしてもボールも動きも止まってしまうときがあって、そこから崩れていく時間帯があるのが課題です。ちょっとうまく行かなくてオフェンスが重たくなったとしても、そこに対応して動くっていう選択肢を教えてもらえたことはすごく学びになりました。
宮本 この学びをリーグ戦、インカレに繋げていくことになりますね。
佐藤 はい。教えてもらったことをすぐに実践していくことは難しいと思うけど、練習の中で使える場面があると思うので、意識して取り組みたいと思います。リーグ戦とインカレでもっといいチームになれるように頑張っていきたいと思います。

白鴎大学女子バスケ部 佐坂光咲&アダム・アフォディヤショートインタビュー

宮本 参加してみてどうでしたか?
佐坂 まずは楽しかったです! あとは白鴎でもやっている動きをさらに分解して学ぶことができたり、いつもと違う動きも学ぶことができて、いい経験になりました!
アフォディヤ ファンダメンタルから始まって、今までやってきたこともあったし、新しいことも学べたので、すごくよかったです!
宮本 色んなことを教えてもらったと思うけど、この学びは新しいなーとか、意外だったなーとかはありましたか?
佐坂 監督がケーシーコーチから学んでいたから、「知らなかった!」っていうことはあまりなかったんですけど、白鴎のバスケとは少し違って、カッティングを入れながらハンドオフに入ったりとか、何回もカールするとか。そういう動きはNBAでも使うんだなーと思って、個人的には意外でした。
アフォディヤ ビックマンとしてはDHO(ドリブルハンドオフ)のときに、ワンハンドじゃなくて、ツーハンドで渡しなさいっていうのは、今まであまり言われなかったので、新鮮でした。
宮本 この学びをリーグ戦、インカレに繋げていくことになると思います。個人的にここは意識していきたいなっていう学びがあれば教えてください。
アフォディヤ センターとしてちゃんとボールを引き出して、しっかりとピボットを踏むことが大事なんだと改めて学びました。そこは意識していきたいです!
佐坂 ケーシーコーチがベストシューターっていう問いかけを何度もしていて、やっぱりシューターって大事だよなって思いました。シューターとしてのメンタリティをもっと身につけてチームから信頼をしてもらって、リーグ戦とインカレで活躍できるように頑張りたいです!

白鴎大学男子バスケ部 内藤晴樹ショートインタビュー

宮本 参加してみてどうでしたか?
内藤 初めてNBAのコーチに教わったんですけど、ワークアウトでやるようなスキルとか戦術以上に、パスの出し方などの細かいところをすごく教えてもらって、そういうところを追求していくことが大事なんだとすごく感じました。NBAでもそういった細かいところを大切にしていることがわかったので、僕たちも今日教えてもらったことを徹底してバスケットを積み上げていきたいなと思いました。
宮本 参加してみて驚いたことはありましたか?
内藤 ピックアンドロールのディフェンスで、自分たちは守り方を決めてそれを遂行していくんですけど、今回のクリニックでは、コーナーエンプティーの場合はショーで守る。コーナーがいるときはアイスにしてスクリーンを使わせずにベースラインに追い込むということを教えてくれました。ディフェンスのポジションによって変えていくことはやっていなかったので、チームでも取り入れていけるんじゃないかなと思いました。
宮本 内藤選手は新人インカレも戦って、これからリーグ戦、インカレと続きます。この経験をどう活かしていきたいですか?
内藤 そうですね。今年は昨年よりも身長が小さいチームなので、今日学んだように5人全員でディフェンスをしていくことが大事だと思います。今日学んだことをしっかりと自分たちのものにできるように、次の練習から取り組んでいきたいと思います。

白鴎大学男子バスケ部 根本大ショートインタビュー

宮本 参加してみてどうでしたか?
根本 今まで経験したことがないぐらい細かいところまで指摘してくださったので、これを継続して自分の力にしていきたいと思っています。
宮本 コーチからも、「今までと違う考え方があると思う。そこはしっかりと見極めてほしい」という話がありました。根本選手の中で、これはすぐに活かせるなっていう発見はありましたか?
根本 個人技の部分になるんですけど、パスを出すときに片手で扱わないこと。両手で持ってからパスをする。ここに関しては、自分もターンオーバーを減らしていきたいと思っていたので、そこはこれからの練習で意識して取り組んでいこうと思いました。
宮本 これからリーグ戦、インカレが始まります。この経験をどのように活かしていきたいですか?
根本 今回のクリニックで学んだことをすぐに自分のものにすることは難しいと思っています。今回の学びを常に意識しながら、少しずつステップアップしていってリーグ戦とインカレを優勝できるように頑張りたいと思います。

白鴎大学男子バスケ部 陳岡流羽ショートインタビュー

宮本 参加してみてどうでしたか?
陣岡 普段やっていることと変わらないこともたくさんあったんですけど、それをすごく噛み砕いてくれたし、言葉に説得力があってすごくわかりやすかったです。
宮本 シンプルに伝えてくれていたけど、高度なことを落とし込んでくれていましたよね?
陣岡 そうですね。ただすごく順序立てられていて、説明をしてもらってからプレーをする。また新しいことが加わって、それをやってという繰り返しだったので、すごく理解しやすかったです。
宮本 最初はチームとして少し、「ん?」ってなっていた時間もあったけど、途中からはスムーズにいろんなことが表現できるようになっていました。
陣岡 そうですね。コミュニケーションについて、ケーシーコーチが途中で言ってくれたことが大きかったと思います。それで5人がまとまっていけたので、トラブルが減ったのかなって今思うと感じています。
宮本 ケーシーコーチの熱量もどんどん高くなっていって、本当にたくさんのことを教えてくれました。一番の学びはどこですか?
陣岡 ゾーンディフェンスに関しては、チームでやっていることと似ている部分がありました。その中で、声の掛け方やタイミングを教えてもらったんですけど、そこは統一できていないところがあったので、チームに持ち帰って継続していきたいと思っています。あとはセットプレーのところで、ボールが入る前の駆け引きとか、細かいところはすぐにでも活かせると感じました。
宮本 トーナメントは悔しい結果になりましたけど、これからリーグ戦、インカレと続きます。この経験をどのように活かしていきたいですか?
陣岡 去年と一昨年はすごくいい流れでインカレまで行ったんですけど、僕らの世代は出だしでつまづいてしまいました。ここから巻き返せるように今回の経験を活かして、みんなで頑張っていきたいと思います。

ドウェイン・ケーシーコーチ ショートインタビュー

宮本 この2日間を振り返ってどうでしたか? 久々の日本でしたよね。
ケーシー 佐藤先生(白鴎大学女子バスケットボール部監督)、そして上岡さん(白鴎大学理事長)とは長年素晴らしい関係性を築いています。ずっと日本に来たかったのですが、NBAシーズンはサマーリーグやワークアウトなどがあるのでなかなか来ることができませんでした。今回、こうして白鴎大学に来てチームを見ながら、みなさんと時間を共有することができて本当によかったです。

旧知の中であるケーシーコーチと白鴎大学佐藤監督

宮本 日本の大学バスケに対して、印象の変化はありましたか?
ケーシー ものすごく感動しています。(白鴎の)女子チームのシュート力、ハンドリング、ディフェンス力とメンタルパートのゲームの考え方がすごく高くなっていると感じました。それは世界と戦える程の向上を見せていると思います。例えば、ヨーロッパのチームやWNBAチームのような高いレベルのバスケットをご存知だと思いますが、彼女たちはそういったチームと同じようにプレーが出来ています。(白鴎の)男子チームもかなり発展しており、高い基準のことに取り組もうとしていると感じました。これはコーチスタッフが率先してやっているからだと思います。彼ら(コーチ陣)はヨーロッパのバスケットを勉強したり、NBAやアメリカの大学から勉強しているので知識が豊富にあると感じました。それが選手に伝染しているのでしょう。10年前はこうではなかった。このような成長ができたことはコーチたちが良い仕事をしているからだと思います。
宮本 ありがとうございます。日本のバスケットボールも成長している中で、NBAもものすごいスピードでステップアップしていますよね。その中で、今回もすごく細かい(ディテール)ところにアプローチされていました。
ケーシー そうしなければなりません。繰り返すことになりますが、細かいところを強調しなくてはいけない。15年間NBAのHCとしてやってきたこと、ここでの指導も「ディテール」に尽きます。今日も何気なく足がラインの外に出てしまった場面(ミートの時)がありましたよね。それでゲームに負けることがあります。たくさんの選手が3Pを決めることができたり、高いレベルでプレーできる選手はいますが、細かいことを実行できるチームが多くの試合で勝利を得ることができます。では、どういうレベルまで持っていけば良いのかというと、その細かいところを考えなくてもできるようになること。それが習慣です。そうやってチームを作り上げていくのです。
宮本 なるほど。ディティールを大切にする中で、バスケットボールのトレンドが変わってきました。それでもバスケットボールはバスケットボールだと思いますが、僕は時代が変わっても不変的なものがあると考えているのですが……。
ケーシー そうですね。私はそれを「交渉できないこと(ノンネゴシエイタブル)」と呼んでます。例えば、今日お越しくださった池内さん(池内泰明/拓殖大学男子バスケットボール部監督)が日本代表でプレーをしていたときに、私がコーチをしていました。あの頃に言っていたことと同じことを伝えた場面が今日もありました。強調したいところは習慣となるように、より良いアプローチが出来ているかを確認しながら行うことが必要です。NBA、大学、ヨーロッパのバスケットボールでも良いコーチというのはそういったディテールに拘ってやっています。

受講生として、池内泰明拓殖大学監督が参加

宮本 ありがとうございました。最後に、日本にはたくさんのNBAファンがいます。と同時に国内のバスケットボールも盛り上がっています。メッセージをお願いします。
ケーシー かつて、これほどにNBAが興奮することはなかったと感じています。アダム・シルバーが良い仕事をして、チームがそれぞれスタイルを作り上げて、記録的な数字となる放映権を勝ち取りました。この35年の間に素晴らしい選手が毎年出てきていて、そして毎年バスケットボールのレベルが向上しています。今はタレントたちがキャリアのピークを迎えていて、世界中が熱狂するゲームを届けることが出来ていると思います。それは本当に幸せなことです。多くの皆さんに感謝を伝えたい。もちろん日本の皆さんにもです。アリガトウ。

7月28日の様子

7月29日の様子


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