見出し画像

ベースラインからの景色 vol.4 パリ五輪日本代表ロスターがこの12人になった理由を考える。

パリへ向かう12人のロスターが発表された。最後の選考会となった昨日の韓国戦を写真で振り返りながら、ロスターを決めたホーバスHCの考えに迫る。(写真・文=大柴壮平)

ガード:河村勇輝、富樫勇樹、テーブス海

このポジションはピークインした感のある河村がおそらく25分から35分は出場するだろう。残りをチームの精神的支柱であり、大舞台での勝負強さも持ち合わせる富樫が埋めることになる。ホーバスHCの中で、ここまでは簡単に決まったように見えた。しかし、難航したのが三番手の選考だ。国内最後の強化試合となった韓国戦のゲーム2は、ポジションを争うテーブス海と佐々木隆成が揃ってメンバー入りした。

得意のドライブからファウルをもらうテーブス海。

ホーバスHCの采配からは、可能ならテーブスをパリに連れていきたいという意図が見えた。佐々木より体が一回り大きいテーブスは2番も守ることができる。特にミスマッチを狙われやすい富樫と並べた時に、テーブスならカバーできる確率が上がる。しかし、期待してチャンスを与えてきたテーブスが、強化試合で思ったようなアピールをすることができなかった。これが選考が長引いた理由だろう。

渡邉飛勇にノールックパスを通す佐々木隆成。

一方の佐々木は、北海道で行われたオーストラリア戦のゲーム2で短い時間ながらインパクトを残した。富樫をカバーするサイズは無いが、短時間で流れを変え得るオフェンス能力が佐々木にはある。

ところが、両名のアピール合戦が期待された昨日の韓国戦は、テーブス、佐々木共に不発に終わってしまった。さらに、渡邉飛勇と川真田紘也というビッグマン2人がインパクトを残したこともあり、第3PGを連れて行かないという選択すら考えられた。おそらくホーバスHC的にもここが一番悩んだところだと思うが、最終的にはガードの怪我やファウルトラブルへの保険にプラスして、富樫をカバーできるサイズと能力の高さがテーブス選出の決定打となったと想像する。

ウイング:比江島慎、富永啓生、馬場雄大

エンワンを決めてポーズを取る比江島慎。

このポジションは充実している。プレーメイカーとしてもシューターとしても機能する比江島、日本代表でも随一のスコアリング能力を誇る富永、そして身体能力の高さなら世界レベルの馬場と、穴が無い。そんな実力者が揃うウイングだが、強化試合を通して好調を保った選手がいなかったのはやや不安だ。八村塁、渡邊雄太が入った時に最適なローテーションを見つけられるかどうかが、重要になってくる。

ホーバスHCからは「よく我慢した」と評価された富永啓生。

特に富永は韓国戦でフェイスガードを受け、オーストラリア戦から大きくアテンプト数を減らしてしまった。そのことをホーバスHCに聞くと、こんな答えが返ってきた。
「韓国がしてきたようなフェイスガードは、本番の対戦相手はやってこないでしょう。選手が大きいので韓国のようなフェイスガードからのローテーションができません。ワールドカップのドイツ戦は(フェイスガードされたが)まだ慣れてなかった。今は大丈夫。富永について心配は全くない。ゼロ・パーセントです」
この予言通りの活躍なるか。五輪では富永のシュートに期待だ。

フォワード:八村塁、渡邊雄太、吉井裕鷹、ジェイコブズ晶

ウイング同様、フォワードも日本代表の中では層の厚いポジションだ。日本バスケ史上No.1選手である八村と、同No.2の渡邊がいる。さらに吉井も体が強く能力が高い。問題はジェイコブズを連れていくかどうか。これについては最後まで迷ったに違いない。

コンディション調整のため欠場した八村塁。

ホーバスHCは北海道でのオーストラリア戦からジェイコブズのリバウンド力の高さを評価するコメントを残していた。しかし、いかんせんシュートが決まらず、テーブス同様「できれば連れていきたいからチャンスを与えている」という状況が続いた。

豪快なダンクを決めるジェイコブズ晶。

有明に場所を移してもジェイコブズのシュートは入らなかったが、それでも打ち続けるメンタルの強さがジェイコブズにはあった。最終的には帳尻を合わせてスリーポイント2戦合計5/14とまずまずの数字を残してアピールに成功。ディフェンスのローテーションなどまだ怪しいところはあるが、渡邊雄太の状態次第では本番でもミニッツを得る可能性がある。1戦ごとに成長しているだけに、オリンピックという大舞台での大化けもあるかもしれない。

怪我の状態が心配な渡邊雄太だが、昨日は終始リラックスモードだった。

ビッグ:ジョシュ・ホーキンソン、渡邉飛勇

誰が見ても当確のホーキンソンの二番手を渡邉と川真田が争う形となった。ベースラインから見ていると明らかにリバウンドとブロックの位置が他の日本代表より高い渡邉に対し、川真田はポストのディフェンスとスクリーンからのロールで存在感を示した。正直なところこの2枚を両方連れて行ってもいいのでは?と思うぐらいの出来だったが、ホーバスHCが選んだのは渡邉だった。

リムプロテクターとしてはチームNo.1の渡邉飛勇。

奮闘した川真田には気の毒だが、ホーバス・ジャパンの持ち味であるトランジションバスケを実行するには、まずリバウンドを取り切らなければならない。ジェイコブズ同様、渡邉もリバウンドを期待されての選出と見て間違いないだろう。

国内最終戦で大活躍を見せたジョシュ・ホーキンソン

これでパリに向かう12名が決まった。しかし、ホーバスHCが繰り返し言うように「塁と雄太が入ったらまたイチからスタート」だ。こればかりはやってみないとわからないが、ホーバスHCなら最適なラインナップを見つけてくれるだろう。キャッチフレーズ通り「SHOCK THE WORLD」できるかどうか。まずはセルビア、ドイツとの強化試合を楽しみにしたい。


さて、ここで株式会社ダブドリからお知らせだ。日本代表でも活躍が期待される富永啓生選手の自叙伝『楽しまないと もったいない』が7月17日に発売される。アメリカNCAA挑戦を軸に、日本代表に懸ける情熱や恩師との思い出、家族の大切さなどを綴った一冊。ぜひご予約よろしくお願いします!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?