『ダブドリ Vol.16』インタビュー01 富永啓生(ネブラスカ大学)
2023年2月22日刊行の『ダブドリ Vol.16』(株式会社ダブドリ)より、富永啓生選手のインタビュー冒頭を無料公開します。
大柴 リンカーンでの生活はどう?
富永 めちゃくちゃ気に入ってます。規模感が僕の地元(名古屋市守山)ぐらいでちょうどいいんですよ。都会ではないけど、田舎じゃない。全く不便は無いし、それに人も親切です。
大柴 人は親切だよね!
富永 まじで親切です。ニューヨークとかに行くと思うんですけど、人が親切じゃないんですよ。店で働いている人とかもめちゃ冷たい。
大柴 それは俺も思った。開幕戦の記者会見でフレッド・ホイバーグHCに質問したのよ。「啓生を取材するために昨日日本から来たんだけど」って。そしたら「マジ? 時差ぼけ大丈夫?」みたいなことをホイバーグHCにも言ってもらったし、会見の後に他のメディアの人が「日本から来たんだって? ウェルカム!」って、それだけ言いにわざわざ俺のとこに来た。
富永 本当にいい人たちですよね。
大柴 ネブラスカ州って、プロスポーツは何かあるの?
富永 無いんです。だから大学のスポーツがすごいんですよ。特にフットボールの人気がやばいです。
大柴 スタジアムが8万5千人収容だもんね。
富永 そのスタジアムが毎試合埋まるんですよ。チケット取れない人も家で観てるし。
大柴 ネブラスカ州なんて人口少ないのに(ネブラスカ大学のあるリンカーンの人口は約26万人。州全体でも約200万人)、よくそんなに入るよね(笑)。
富永 オマハ(近隣にあるネブラスカ州最大の都市)とかからも来ますからね。しかもチケットがめちゃくちゃ高いんですよ。
大柴 そうなんだ。
富永 ビッグゲームになると、普通の席で100ドルとかします。おそらく相当な収入があるんでしょうね。アメフトの試合の日は毎試合飛行機を飛ばしますから。たまにスカイダイビングで上から人が降りてきて、見事に真ん中に着地する。
大柴 日本の大学とはスポーツに掛ける金と情熱が違いすぎるね。バスケの盛り上がりはどうなの?
富永 バスケはそんなでもないですね。ネブラスカ大でアメフトの次に人気なのは女子バレーかな。女子バレーはめちゃくちゃ強いんですよね。
大柴 そっか。バスケは開幕戦でも空席があったけど、勝って埋めたいね。基本的には練習場、アリーナ、キャンパスを行き来する生活を送ってるの?
富永 キャンパスには全然行かないんですよ。ほとんどの授業がオンラインだし、去年結構単位を取ったので、そもそも今年はオンラインの授業を1つ受けているだけです。
大柴 去年からそれを目指してたもんね。バスケに専念するために。
富永 いやあ、今はありがたい状況ですね。
大柴 練習とか試合がない時は何やってるの?
富永 1番の趣味はゴルフです。
大柴 ゴルフ仲間はいるの?
富永 ネブラスカに来た当初はネブラスカ大にいる日本人の学生と行ってました。ゴルフ場に通っているうちに、日本からリンカーンに働きにきている人たちと知り合ったので、その人たちとも行きますね。あとはチームメイトのサム(サム・ホイバーグ。ホイバーグHCの息子で、富永選手とルームシェアしている)と行ったりもします。
大柴 サムは高校でゴルフ部とバスケ部を兼部してたんだよね?
富永 そうです。サムはめっちゃ上手いです。めちゃ飛ぶし。ゴルフなあ……楽しいですよね。
大柴 何がそんなに魅力なの?
富永 全てです!
大柴 まずドライバーの爽快感があるじゃん?
富永 僕、今ドライバーを使っていないんで、爽快感はないです。
大柴 え(笑)?
富永 最近はドライバーにイライラしかしてない。
大柴 一時期300ヤード飛ぶとか言ってたじゃん。
富永 300ヤード飛んでたんですけど、急にドライバーがスランプに入っちゃって。今は曲がりまくりです。だから最近は3番ウッドで代用してます。
大柴 3番ウッドでどのぐらい飛ぶの?
富永 3番ウッドで250ぐらいかなあ。
大柴 キャリー(打った位置からボールの着弾点までの距離)?
富永 いや、トータル(キャリーにボールの転がった分を足した距離)で。キャリーは多分200~240ぐらいです。
大柴 一般の人だったら相当飛んでるけど、ドライバーが300飛ぶって考えると微妙だね。
富永 しかも、アイアンもめっちゃスランプに入ってるんですよ。急にアイアンの打ち方がわかんなくなって、全く打てなくなったんです。だから今、全部UT(難易度の高いロングアイアンの代用で使われる長めのクラブ)だけを使って力加減を変えてゴルフしてます。
大柴 逆にすごい(笑)。
富永 UTのコントロールはめっちゃ上手いんですよ。UTで100ヤードから200ヤードまで全部コントロールできる。
大柴 UTで100ヤードって、パターみたいに打つ感じ?
富永 そこまでじゃないかな。もうちょい振りますね。振りはウェッジ(短い距離をピンに向けて寄せるクラブ)の感覚で。
大柴 ボールが上がらないでしょ? 転がしてくの?
富永 いや、それが上がるんすよ。
大柴 え、上がるんだ。
富永 上げられるんですよ、それが。僕、UTの才能があるんです(笑)。
大柴 ハハハハハ。
大柴 短大のレンジャー大で成績を残して、昨シーズン満を持してNCAAに挑戦したけど、NCAAに入ってみてどうだった?
富永 NBAに行く選手がズラズラいる世界だと感じますね。去年の対戦相手でも、ジェイデン・アイビーが(デトロイト)ピストンズに行って、ジョニー・デイビスが(ワシントン)ウィザーズに行って。あとはキーガン・マレーが(サクラメント)キングスか。
大柴 その全員がロッタリー・ピック(NBAドラフトにおいて14位指名以内で選ばれること)だもんね。対戦してみてどうだった?
富永 いやあ、もう次元が違いました。
大柴 3人とも?
富永 はい。特にキーガン・マレーには、前半で25点ぐらいやられました。
大柴 止め方がわからないって言ってたよね(笑)。
富永 何をやってもだめでした(笑)。パデュー大との試合ではザック・イディーにやられすぎて、アイビーにはそんなにやられなかったんですけど、それでも見ていて彼もすごいと思いました。ジョニー・デイビスはうちとやった試合はあんまり良くなかったですね。
大柴 NBAでもジョニー・デイビスだけが唯一苦戦してるよね。
富永 あんまり上手くいってないですよね。あんまり試合に出てないんですかね。
大柴 出して育てようとはしてるけど、まだ結果がついてきてない。
富永 何番手ぐらいで出てるんですか?
大柴 ガードの3番手ぐらいまで落ちてると思う。ジャパンゲームズで観た時はかなり厳しそうだった。佐々木クリス(バスケットボールアナリスト)さんが言ってたんだけど、大学は2番で活躍してて、いきなりNBAで1番は難しいんじゃないかって。
富永 たしかに、それはキツいですね。
大柴 そんなNCAAという世界で、自分が通用すると思う部分は?
富永 シュートは通用していると思います。
大柴 よくディープスリー(スリーポイントラインよりさらに遠くから打つスリー)を打ってるけど、あれってNBAを意識してるの(NCAAよりNBAの3ポイントラインは約50㎝遠い)?
富永 いや、別にNBAを意識してるってわけじゃなくて、遠くから打った方がディフェンスがつき辛いという理由ですね。
大柴 昨シーズンは啓生君のマークマンにフェイスガード(ヘルプのポジションを取らずにマークマンだけを見るディフェンス)させる学校が結構あったよね。
富永 本当にフェイスガードばかりでうんざりですね。「どこの映像を見てフェイスガードしてんの?」って感じですけどね。ネブラスカでそんなにフェイスガードされるような活躍してないのに、どこの映像をスカウティングしてるんだよっていう。
大柴 オリンピックの3x3でも決めてたし、W杯予選でも決めてるからね。そうなってくるとスカウティングレポートに載るんだろうね。シュート力が認められている証だとは思うけど。シュート以外で自信を持っている武器はある?
富永 アグレッシブさとかエナジーとか、そういうところは誰にも負けないようにやっています。あとはセットプレーを誰よりも早く覚えるようにしてますし、ディフェンスのルールを覚えるのも早い方だと思います。
大柴 逆に言うと、覚えるのが遅い選手も結構いるんだ?
富永 アメリカ人は全般的に、本当に遅いです。
大柴 そうなんだ。たしかに開幕戦でも、「このプレーをやるぞ」ってベンチから指示が出たときに、真っ先に啓生君がジェスチャーを使いながら叫んでみんなに伝えてたよね。
富永 そうですね。プレーはほぼ100%覚えてるんで。身体能力で負けてしまうことはあるので、そこを頭の良さで補いたいですね。学校での頭の良さではなくて、バスケットの頭の良さが大事だと思います。
大柴 バスケットの頭の良さって、ちゃんと戦術を覚える以外に例えば何があるの?
富永 どこがミスマッチになっているかきちんと把握するとか、空いたところに的確にパスを出すとか、基本的なミスをしないとか、そういうところが大事になってくるかなと思います。
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