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山内翼選手のご家族にインタビュー(後編)

 ダブドリvol.16から始まった渡辺早織さんが選手のルーツに迫るコラム「あの日のあのね、」。第2回の今号では福島ファイヤーボンズ山内翼選手のルーツを探るべく山内選手のご実家に。後編は試合後のワークアウトから帰宅した山内選手本人に大学進学後からプロ選手への決意のきっかけを聞きました。(取材日:3月11日)

<前編はこちらから>

【3.11の震災を機にプロの道を強く決意】

渡辺 今日は3月11日。福島や東北にとって特別な日に試合(vs山形ワイヴァンズ戦GAME1)が行われましたが、2011年当時は中学生ですよね?
山内 そうですね。僕は当時中学1年生で、その日は2個上の姉の卒業式だったんです。帰ってきて2階でちょっと昼寝しようと思って横になった時に急に揺れがきました。最初は普通の地震だと思っていたんですけど、徐々に縦揺れも横揺れも大きくなってきて、壁にはヒビが入ったり、外に出てみたら地面が割れだしたりして。すごく怖かったです。

渡辺 東京でもかなり揺れたから、相当怖かったですよね……。当時学校が休校になったりしていましたが、どのぐらい休校になりましたか?
 1ヶ月か2ヶ月ぐらい休校になりましたね。
渡辺 休校の間は体を動かしたりしていましたか?
山内 全然していないです。でもバスケがしたいなとずっと思っていました。
渡辺 3.11の震災を経験しているからこそ、チームに対する思いがより一層強くあると思うのですが……。
山内 そうですね。福島ファイヤーボンズ自体が震災を機にできたチームで、発足した当初に僕はチケットのもぎりとかモッパーで参加させてもらっていました。試合に勝ったり、シュートが入った時にみんなが自然と笑顔になる様子を見た時に、「スポーツの力って大きいんだな」と感じたんです。だから僕もバスケットボールを通して被災した人たちに勇気とか元気を届けたいと思ってプロ選手を目指しました。
大柴 プロを目指す中で、どのタイミングで「プロになれるかも」と感じたんですか?
山内 東海大のAチームに上がった時に今までテレビで見ていた先輩や同期、後輩がいる環境で練習をした時ですね。自分の中でやれるっていう手応えを感じました。
大柴 彼らともやれるという感覚が自信になったんですね。
山内 そうですね。
渡辺 お話を伺っていて、ご両親はこれまで冷静に現実を伝えながら、山内選手と一緒に頑張って来られたと思いますが、 おふたりが今、山内選手にこんな選手になってほしいというお考えはありますか?
 やっぱりプロ選手である以上はスタッツも残していかなくちゃいけないんですけど、それだけで良いのかというとそれは違うと私は思っています。ずっとプロ選手でいられるわけではないので、最終的には「人として大事にすべきものはなに?」ということを常に意識してやって欲しいです。あと、今シーズンはすごく苦しいと思いますが、とにかく腐らないでやりなさい、ということですね。
渡辺 山内選手はどうですか?
山内 本当に父が言う通りだと思いますし、僕の1番の強みはこれまで腐らないでやってきたことだと思っているので、今後も腐らずに毎日努力することが大事だと思います。

【挫折続きの人生……。でも腐らず頑張り続けられる理由】

渡辺 お父様のお話を伺って、陸川さんの存在が大きいように感じたのですが、山内選手にとって陸川さんはどんな方ですか?
山内 人生を変えてくれた人ですね。最初はついていくことで必死だったんですけど、1人1人のことをよく見てくださる監督で、僕にも毎回声をかけてくれました。僕の気持ちが落ちそうな時も引っ張ってくれたり、人間としてもバスケ選手としても成長させてくれた人です。プロになってからも得点を決めた時にLINEをくれたり、卒業した後も僕の経験談を東海大の後輩たちに話してくれていると聞いて、正直大学時代は全然結果を残せなかったですが、 陸川さんの記憶に残るような選手になれたことが1番嬉しかったです。
大柴 ダブドリでも東海大学出身の選手を取材することが多いですけど、どの選手に聞いても陸川さんの影響力はすごいなと思いますね。
 陸川さんは本当に素晴らしい方で、私も尊敬しています。
山内 僕はこれまで成功という成功をしたことがなくて、ずっと挫折続きの人生なんですけど、陸川さんから「翼はこれからまだまだ伸びると思う」という言葉をいただいたので、今も腐らずに続けていられます。
渡辺 人生がずっとうまくいき続けていると、どこかで天狗になってしまうようなこともあると思うんですけど、挫折を経験することで得られるものはたくさんありますよね。
大柴 山内選手は、挫折した時に愚痴とか弱音を家族に言う方ですか?
弘美 愚痴は聞いたことないですね。
山内 泣きそうになりながら電話はしました(笑)。
弘美 (家族の)LINEグループがあるんですけど、そういう時は個人LINEが来るんです。
山内 調子が悪い時にはグループじゃなくて個人に送りますね(笑)。父は試合に出られない時や調子が悪い時に「これを読んでみろ」という一文と共にいろんな記事の画像を送ってくるんですが、いつもその記事を読んで「また頑張ろう」と仕切り直しています。本当にありがたいです。
渡辺 お父様は単身赴任されていると伺いましたが、それでも毎週のように試合に来られてるそうですね?
 そうです。家に帰らない週はないです(笑)。
弘美 金曜日の夜に帰ってきて、月曜日の朝に戻ります(笑)。
 試合にはじいちゃん、ばあちゃんも一緒に行くんです。
渡辺 じゃあ、みんなで行かれるんですね! 嬉しいですよね。
山内 じいちゃん、ばあちゃんはルールも知らなかったんですけど、今はスティールとか言ってます(笑)
一同 ハハハハハ。
山内 朝の5時ぐらいに起きてずっとバスケットLIVEの見逃し配信とかを見たりしていて、「今日も何回も見たよ、目が疲れちゃった」とか言ってくれます(笑)。
 この間は久しぶりに試合に出れてシュートを決めたら、ばあちゃん泣いてたな(笑)。
一同 ハハハハ。
渡辺 こうやって家族全員で応援できるってことも嬉しいですよね。
隆・弘美 そうですね。

<撮影:大柴壮平>


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