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「みんなで戦ってみんなで成長する。秋田を引っ張り続ける平松飛鳥の覚悟」 アランマーレ秋田 平松飛鳥
苦しいシーズンを送ったアランマーレ秋田。飛躍を誓うクラブの中心選手として活躍を続ける平松飛鳥。チームを引っ張り続けてきた彼女が振り返るこれまでとこれからへの覚悟に迫る。(取材日:5月11日 インタビュー&写真:宮本將廣)
今回のインタビュー能代電設工業株式会社様のサポートにより、実施させていただきました。企業情報などは以下のリンクをご確認ください。
ちょっと迷っちゃったり、自信を取り戻せていない選手もいる
宮本 いきなり僕の感触の話をさせてもらいますが、外から見ているだけだと2シーズン前(22-23シーズン)はチームとしていい感じ。一方で、昨シーズン(23-24シーズン)は思ったよりも前に進めなかったという印象を持っています。まずはこの2シーズンを振り返ってみるとどうですか?
平松 結果だけで言えば、おっしゃっていただいた通りだと思います。2シーズン前は接戦をものにできて、昨シーズンはそういった接戦をものにできず、チームとして自信を持てなかったところが正直ありました。Wリーグに加入した1、2年目の頃はサイズの小さいチームだったので、「ここは絶対にやろう。ここまでは頑張ろう」みたいなところがはっきりしていて、徹底もしやすかったし、選手の中でも統一できていたと思います。言い方はあれですけど、「仕方ないよね」という割り切りもできていたというか。昨シーズン(Wリーグ加入4年目)は大きい選手が加入してくれて、戦力としては間違いなく充実しましたけど、選択肢が増えたことでうまく噛み合わせることができなかったと個人的には感じました。私自身も迷ってプレーしていたことが多くて、ルーズになったまま次のことにいっちゃってるなと感じたこともあったし、そこをうまくまとめることもできませんでした。あとは小嶋さんが練習の負荷を上げたときに、自分たちがそこに向き合いきれていなかったことが多かったと反省しています。やっぱり練習の取り組み方が試合にでるので、相手がギアを上げたときに自分たちがついていけない。それが試合でも出てしまったと感じています。
宮本 ビッグマンが入ってきたことはチームにとってはすごくポジティブなことだけど、それゆえの難しさもありますよね。ビッグマンや加入選手が悪いのではなく、チームには密度があると思うんです。たとえば少数精鋭だったり、ビッグマンがいなければできるところで戦うしかない。1人の負荷は重くなるけど、それゆえに選手間の共通認識や理解度は上がりやすい。選手が増えれば、その分だけそこのズレは出てきちゃいますよね。
平松 そうですね。
宮本 個人的にはそういうところで、昨シーズンの平松選手は考えなくてはいけないことがすごく多いんだろうなと感じていました。今話してくれたこともそうだろうし、ガードとしてコントロールもするけど、スコアを取ることでチームを動かしていくタイプだから、そこのバランスがすごく難しかったんだろうなと。
平松 そうですね……難しかったです。
宮本 そういう意味では、この時期にチームとしての共通認識をしっかりと揃えて高めていくわけですけど、今日の練習を見させてもらってサイドに展開してからのツーメンゲームとスペーシング、そこから派生するプレーのタイミングなど。正直に言うと、昨シーズンからのメンバーで練習しているから、もっとスムーズにできると思っていました。さっき小嶋さんとも少し話したんだけど、「なかなかねー……」って感じで。
平松 そうですね。選手的には昨シーズンがうまくいかなかったから、ちょっと迷っちゃったり、自信を取り戻せていない選手もいると思います。
宮本 なるほどなー。誰が悪いというところでもないから、コツコツとみんなで積み上げていくしかないし、その中でしっかりと自信を持って戦えるようにすることが大事なんですね。
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一番大事なことはみんなで戦って、みんなで成長していくこと
宮本 昨シーズンの平松選手にフォーカスしていきたいと思います。結局は自信というところにつながってはしまうんだけど、他の選手にボールを預けた結果うまくいかなくて、その選手が自信を失ってしまっても良くない。かといって自分がこじ開けていってもシュートが入らなければフローが悪いから、ファストブレイクを出される確率が高くなる。
平松 そうですね。悪い流れになるときは結構そういう感じが多かったです。
宮本 ミッドレンジのシュートが武器だけど、そこはどのチームも止めにきますよね。その中でもいいミッドレンジを作り出すためにはボールムーブが必要で、昨シーズンはそこがうまく作れずに、苦しいミッドレンジを打つことが多かった印象です。その辺はどう捉えていて、どう解決していこうと考えていますか?
平松 本当にその通りで、チームとしていい形を作ってシュートに持ち込みたいからこそ選手同士でも、「もっとこうしよう」っていう話はしていました。難しかったのは、その中でも言える人と言えない人がいたところだと思っています。だから、今シーズンは誰でも気づいたことをすぐに言えるようにして、全員で解決していく雰囲気を作りたい。それこそ樋口がキャプテンになったので、それをきっかけに全員が言える空気感を作りたいなと思っています。
宮本 そこですよ(笑)! ルーキーがいきなりキャプテンっていうのはどうなんですか? 驚きは感じますよね?
平松 感じましたね(笑)。ただ、何も責任を負わないわけではないけど、プレッシャーを感じずに思いっきりやってほしいっていうのが1番です。ルーキーだけど、ポイントガードだからチームを引っ張らないといけない立場であることは間違いない。そこにキャプテンというものがプラスされることは、正直に言えば「大丈夫かな」っていう気持ちもあるんですけど、そこは自分を含めたみんなでフォローしていきたいと思っています。
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宮本 樋口選手のキャプテン就任に関しては、みんなと同じタイミングで聞いたんですか?
平松 いや、チーム全員へ伝える前にちらっと小嶋さんから、「樋口で考えているんだけど」っていう話をしてもらいました。そのときに「本人は大丈夫なんですか?」って聞きました(笑)。
宮本 ハハハ。ある意味、昨シーズンからいる中堅の選手たちに危機感を持ってほしいということも狙いだと思います。個人的には、ここからのアランマーレのキープレーヤーはその年代の選手だと思っているんですよね。
平松 そうだと思います。昨シーズンで伸びた選手もいますけど、パフォーマンスを出せなかった選手も実際にいます。一番大事なことはみんなで戦って、みんなで成長していくこと。練習中からそういった気持ちを持って試合に出るためのアピールをしていくことが大事だと思います。私もキャプテンという立場ではなくなりましたけど、もちろんチームを引っ張っていきますし、若手選手と一緒に自主練をしたり、アドバイスなども含めていい関わり方ができればと思っています。
宮本 逆に自分がキャプテンではなくなったからこそ、アプローチ出来ることもあると思います。その辺りはどう考えていますか?
平松 キャプテンをやっていたときは、自分のことよりも周りを見ないといけないという気持ちが強かったですね。チームのことばかりを考えてしまって、自分自身の必要なことにフォーカスできなかったのが正直なところです。キャプテンではなくなったことで自分自身にもしっかりと向き合って、その上で周りを巻き込むような形でチームにポジティブな影響を作れたらいいなと考えています。
宮本 自分からチームへというアプローチですね。そういった意味で、今は特に個人にフォーカスできる時期です。平松選手個人としてはどのあたりを伸ばしていきたいですか?
平松 アタックからのアシストとシュートに持ち込むところの判断をもっと的確にしたいと思っています。自分がシュートを打つときはしっかりと決め切る。あとはチャンスの場面でスリーポイントを確実に決められるようにして、チームとしての得点を伸ばしていけたらいいなと思っています。
宮本 そういう意味では、樋口選手が入ってきたことは平松選手にとってもポジティブだと感じています。Bリーグでもトレンドになりつつあるけど、スコアリングタイプの1番が2番にスライドする2ガードのスモールラインナップ。昨シーズンも平松選手と樋口選手が並んだときはかなり魅力的なバスケットでした。課題としてはクンバ選手のフィットに少し時間がかかってしまって、スペーシングがイマイチなことがあって、平松選手がアタックしても自分の前にビッグマンがいるというシーンがよくありましたよね。そこが改善されれば、今日練習していたセットの中で平松選手と樋口選手がガンガンアタックしていくのも面白いのかなと感じています。
平松 そうですね。樋口と一緒に出るとどっちがボールを運んでもいいし、2番をやってもいい。お互いアタックもできるし、シュートもあるので、そういう1番、2番のラインナップは客観的にみても面白いだろうし、チームの強みになると感じています。そこからうまくシューター陣を活かしていけたら、チームとしての得点力も向上すると思っています。
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キツくなってきたときに自分たちがどう頑張れるか
宮本 最後なりますが、今シーズンはどういうシーズンにしていきたいかを伺って終わりにさせていただきたいと思います。
平松 自分たちが目指すべきところを最初のミーティングではっきりさせました。スタッツにおける最重要課題も提示されて、やるべきことははっきりしたので……。
宮本 すみません! ちょっと気になったんですけど、スタッツの部分は昨シーズンも提示されていたんですか?
平松 提示はありました。ただ昨シーズンはもう少し大きな枠組みだったんですけど、怪我人も出てしまって、最終的にぼんやりしてしまったというか……。うまくいかないまま終わってしまったという感じでした。それも含めて今シーズンははっきりとしたものを提示してもらったので、今の段階でもいい感触はありますね。最初の課題は本格的にチーム作りが始まって、身体的にもメンタル的にもキツくなってきたときに自分たちがどう頑張れるかというところだと思っています。どのチームもそういうタイミングがあると思うんですけど、そこでバラバラにならずに、チームとしてやるべきことをみんなでやりきれるようにコミュニケーションを取って積み上げていきたいと思います。チームとしての目標はフューチャーリーグ優勝、プレミアリーグ昇格なので、その結果をつかみ取れるように頑張ります。あとは繰り返しになりますけど、樋口がキャプテンをやるにあたって気負いしすぎずに彼女がイキイキとプレーできる環境を作りたいなと思っています。
宮本 初期設定というのかな、それは大事ですよね。きっと平松選手自身がキャプテンをやっていたときに、そういう苦労が思っていたよりもあったということですよね?
平松 そうですね。プレーとかコートの中でももちろん感じたし、それ以外のところでも結構負担は感じましたね。周りの皆さんに応援されているはずなのに、変にプレッシャーを感じてしまっていたので、彼女の負担を軽減して、彼女の良さを常に表現できるようにしたいです。彼女の力はアランマーレにとっても特別なので、うまくサポートできればと思います。
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取材サポート企業のご紹介
能代電設工業株式会社様
今回は以上の企業様のサポートにより、秋田での様々な取材を行わせていただきました。
能代電設工業様のサポートにより、秋田ノーザンハピネッツの取材も実施させていただきました。