![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173479276/rectangle_large_type_2_e092b66062f95f7911428e613826cf7b.png?width=1200)
能代工業を7年ぶりのセンターコートに導いた男たち 猪狩渉編(3)
2014年度ウインターカップ 準々決勝。名門・能代工業、7年ぶりのセンターコートへ ―― その瞬間に、どれほどのバスケファンが心を躍らせただろうか。当時から7年後となる2021年に、そのコートで戦っていた長谷川暢、渡邉竜也、猪狩渉、盛實海翔に話を聞いた。それから3年の月日が経ち、それぞれが新たなチャレンジを選び、新天地へと活躍の場を移した。奇しくも同じタイミングで大きな決断をした彼らは今、何を思うのか。今回は2024-25シーズンより青森ワッツに移籍をした猪狩渉に話を聞いていく。(取材日11月14日 インタビュー:宮本將廣 写真撮影:橋本龍二)
主な登場人物:
長谷川暢 2014年当時3年生、背番号4番、キャプテン。現在は茨城ロボッツでプレー
渡邉竜也 2014年当時3年生、背番号7番。現在は地元秋田でスキルコーチとして活動し、青森ワッツのビデオコーディネーターも務める。
猪狩渉 2014年当時3年生、背番号12番。卒業後、スラムダンク奨学金8期生としてアメリカに渡った。現在は青森ワッツでプレー
盛實海翔 2014年当時2年生、背番号14番。翌年は4番を背負い、キャプテンとしてウインターカップ3位の成績を収めた。現在はレバンガ北海道でプレー
前回までのストーリー
4人がダブドリVol.18のロングインタビュー「Power Of NOSHIRO」で集結!
ダブドリの購入はを写真をクリック⬇️
![](https://assets.st-note.com/img/1738892345-nAw5JSPoBxF1miz7uhT6Xcs9.jpg?width=1200)
自分の力をより発揮できるのが青森なんじゃないかなと思った。
宮本 「能代工業、あれから」の続編ということで、今シーズンは4人全員が新天地へと活躍の場を移したね。猪狩くんはどうして青森を選んだの?
猪狩 昨シーズンは仙台89ERSで練習生をやらせてもらいました。練習に参加する中でB1への憧れというか……。最終的に選手契約ができなかったので、そこに対する憧れはより強くなったし、間近でそのコートを見て自分の強みも再認識できて、B1のコートに立つ上で自分に足りない部分も再発見できました。青森は展開の速いスタイルで2年連続B2プレーオフに出ている。現行のルールでB1昇格にチャレンジできるのは、今シーズンが最後じゃないですか。だからこそB1にチャレンジしたいという気持ちと、そこに限りなく近くて自分の力をより発揮できるのが青森なんじゃないかなと思って、青森に決めました。
![](https://assets.st-note.com/img/1738896855-PINplArZ6YFygnfBuEbD2Xsj.jpg?width=1200)
宮本 仙台で見つけた自分の強みとか学び得たこと、セオさん(藤田弘輝/現大阪エヴェッサHC)さんやソルジャー(片岡大晴/仙台89ERS)という素晴らしいスタッフや選手がいた中で、自分の生き方、戦い方は見つかったの?
猪狩 そうですね。自分のスピードやシュートに関しては通用すると思ったし、自信を得ることができました。練習をやっていく中でB1で戦う仙台の選手たちにも通用した部分があったと思っています。その中で、B1のコートに立つにはディフェンスのスキーム、例えばヘルプポジションの立ち位置。僕はサイズが小さいので一歩でも後ろに下がったら、やっぱり相手に狙われるし、ダイブされたりもする。ローテーションひとつにしても、無駄な動きをせずにできる限り速くローテーションをしないといけない。あとは渡辺翔太選手(仙台89ERS)という自分と同じようなサイズのB1で活躍している選手がいて、彼は前線からプレッシャーをかけることができる。ああいったディフェンスが自分には足りないと思ったので、翔太からも学ぶことは多かったです。あとは試合に対してどうやってアプローチしているか。やっぱりB1の選手たちは僕がこれまで経験してきたB2の世界よりも格段にレベルが高かった。準備の質もそうですし、準備の量も本当にすごかったです。プロ選手としてのあり方をソルジャーや青木保憲選手(仙台89ERS)から学ばせてもらったし、阿部諒選手(SR渋谷)や小林遥太選手(バンビシャス奈良)からはクレバーさ。勝つために時間や点差をどう考えるのか、スクリーンの使い方、身体の使い方、細かい技術をたくさん学べましたね。
![](https://assets.st-note.com/img/1738896867-2VsWcT0z4PheYQRjpL9MBXoD.jpg?width=1200)
不安は正直ありますよ(笑)。
宮本 能代工業(現能代科技)のメンバーでこのインタビューをやらせてもらって、ダブドリVol.18ではPowe Of NOSHIRO(この企画のメンバーが中心となって開催するバスケイベント)を特集させてもらった。あのイベントは今回(2024年6月)が3回目だったけど、そこから全員が同じタイミングで移籍をしたり、新しいチャレンジをすることになった。イベントをやったことで、何かみんなが踏ん切りをつけるというか。イベントのときに色々話したと思うんだけど、周りの選手たちの考えや決断っていうのは、猪狩くんの選択に影響を与えたの?
猪狩 そうですね……。僕はまだまだ若いつもりでいるし、気持ちも若いころと変わらない。ただ、実際は僕も暢(長谷川暢/茨城ロボッツ)も盛實(海翔/レバンガ北海道)も年齢的にもう若くない世代に入ってきています。自分のバスケットボールキャリアもそうだし、それぞれの人生単位で見つめ直すタイミングが今年だったのかなって。結果的にみんな移籍という形になりましたけど、共通して言えるのは、やっぱり3人ともバスケットボールが好きで、まだまだ上手くなりたい。そのためには環境を変えるということが、それぞれにとって一番良いの選択だったのかなって、僕は思いました。
![](https://assets.st-note.com/img/1738896886-q0akTdvc5DOQb4Un9ihXjsW2.jpg?width=1200)
宮本 それぞれが決断するまでに、何か話したりはしたの?
猪狩 盛實はそこまで自分のことを語らないタイプなのでそんなに話さなかったですけど、暢とは昨シーズン中もずっとコミュニケーションを取っていて、「お互いにとって一番いい選択は何なのか」を、お互いの視点からアドバイスし合ったりしていました。それはこれまでもずっとしてきたことだし、僕の移籍に関する話も暢には相談しました。暢はすごく悩んでいたんですよ。それも僕の視点からアドバイスはしましたね。
宮本 その中でみんなが移籍を選んだ。でも、猪狩くんはまだ試合に絡み切れているわけではない。それこそさっき言ってくれたけど、もう28歳で来年引退してもおかしくはない年齢になってきた。今に対する焦りとか、不安とかはないの? メディアに出るときの猪狩渉って、「俺はやりますよ!」って感じのキャラクターじゃん(笑)?
猪狩 いや、不安は正直ありますよ(笑)。昨シーズンは練習生で、いつ終わってもおかしくない立場だったわけじゃないですか。その中で、今シーズンは運良く契約先が決まりましたけど、練習生のままキャリアが終わる選手だっているだろうし……。これはちょっと暢に関する話でもあり、色んな選手に言えることですけど、暢も秋田では2番手のポイントガードでした。それこそ日本代表の吉井(裕鷹)選手もアルバルク東京ではプレータイムがそんなになかったけど、今は三遠で30分近く出るような選手になっている。結局、環境を変え続ける。そのチームが悪いのではなくて、そのときの自分にベストな環境だったり、自分が求める環境に自ら飛び込む覚悟。そして、そのチャンスを掴み取る。これも大事なことのひとつなんじゃないかなって。僕は今シーズンから青森に加入させてもらったけど、まだローテーションには絡みきれていない。暢は信頼を勝ち取って30分以上試合に出ている。盛實も北海道ではスタートで試合に出ている。それぞれの立場は違いますけど、やるべきアプローチは変わらないと思っていて、常に昨日の自分より上手くなる。去年の自分よりも成長する。そういったことの積み重ねしかないのかなって。それがハマるときが来ると信じて……。どのタイミングでどうやって来るのかはわからないじゃないですか。さっきは成功した選手の話をしましたけど、実際に移籍をしたことによって、移籍前よりもプレータイムがなくなったり、引退せざるをえなかった選手もいると思います。それは僕自身がコントロールできるものではなくて、僕がコントロールできることはプレータイムがあるなしに関わらず、うまくなる、成長する、そしてチームの役に立つ。そのためにどういったアプローチをするのかっていうこと。だから、僕は今試合に出られていないですけど、やるべきことは変わらないと考えています。
![](https://assets.st-note.com/img/1738896915-Na4m50pqnrLoBCE6IbPkDZzy.jpg?width=1200)
本気でNBA選手になりたかったし、なれると思っていた。
宮本 俺がそう思うだけなんだけど、ダブドリVol.21を作りながら、変わらないことは何かなって考えたときに、「変わり続けることだけが変わらないことだ」って思ったの。
猪狩 うんうん。
宮本 たまたまそれを考えていたときにミスチルの曲が流れてきて……。ミスチルの「進化論」って歌にその歌詞があるんだよね。個人的なことを言えば、暢には秋田にいてほしかったけど、暢は変化を求めた。変わり続けることを選んだんだ。その暢から教えてもらったことは、成長するためにみんなが変わり続けていくことが唯一の変わらないことなんだってこと。そういう意味では、能代工業も能代科技に名前を変えて、猪狩くんや暢をきっかけに出会わせてもらったメンバーも大学に進学して頑張っている。今年の能代科技はインターハイにもウインターカップにも出られなかった。俺も色んな気持ちを持っているけど、ある意味もう普通のバスケが強い公立高校になったなって。
猪狩 はいはい、そうですね。
宮本 その中で猪狩くんは前回のインタビューで、「能代工業のOBというプライドを持ちたい」と話していた。ちょっと長くなっちゃったけど、大人になっていく中で、自分を曲げるわけではないんだけど、受け入れていかなきゃいけないことだったり、そういうタイミングって来ると思うんだよね。今までは、「絶対に自分はこうだ!」って考えていたものをグッと堪えて、生き残っていくために今まで受け入れられなかったものを受け入れていくとか。そういうのって感じたりするの?
猪狩 そうですね。やっぱり昔はもっと尖ってたというか。本気でNBA選手になりたかったし、なれると思っていた。NBA選手になるために必要なステップを踏んできたつもりでした。でも実際はNBAに全然届かなくて、B2で3番手のポイントガードをやっている。もちろん今の理想を言えば、30分試合に出て20点取って10アシストしてチームを勝利に導きたいです。それはバスケットをやっている以上、誰しもがそうやって活躍したい。でも、今僕に与えられているミニッツは5分程度。その中で自分の仕事をする。この年齢になって、バスケットボールを仕事と捉えている自分も出てきたんですよね。そこが変わった部分かもしれないです。20歳でプロ選手になってからもずっとバスケットボールが好きで、なんなら子供の頃からずっとバスケットボールが大好きだった。その延長線上で、ただ自分がうまくなるためにやってきたものを少しずつ仕事として捉え始めている自分も出てきた。もちろんコートで活躍したい。そういう気持ちはありますけど、僕に与えられた仕事が例えば5分繋いでくるなら、しっかりといい流れを作って次に受け渡す。コートに出ていない時間帯も通訳として外国籍選手と日本人選手を繋いで意思疎通を図る。まずは自分の仕事を全うするという意識は、昔よりもかなり強くなったと思いますね。
![](https://assets.st-note.com/img/1738896932-TQse6naiNolr82SwPUzWyEL1.jpg?width=1200)
宮本 それってさ……。はっきり言って申し訳ないけど、猪狩くんのプロバスケ人生って思ったようにいっていないことの方が多いわけじゃん?
猪狩 そうですね。
宮本 これまでのキャリアを結果として見るとね。アメリカでもGリーグのトライアウトで最終選考まで残ったけど、契約はできなかった。日本に帰ってきてからもそうだし。それを受け入れなきゃいけない瞬間が何度もあって、それが辛くて悔しくて、「もういいや!」とか、悲しくなったりしたことはないの?
猪狩 「あ、俺はNBA選手になれないんだな」とか、「あ、俺はこれぐらいの選手なんだな」って思わされるシチュエーションだったり、そう思わざる得ない対戦相手はこれまでたくさん出会ってきました。でも、それでもまだこのレベルでバスケットを続けているのは、そんな奴らに負けたくないんです。それを認めたくない自分がまだ残っている。ぶっちゃけ分かってますよ……。でも、それを認めたくない自分がいるのは確かで、そういう気持ちがまだ自分のなかにあるからこそ続けているのかなって。もしかしたら他の人にとって、この感情は悔しいっていうものなのかもしれないですね。
宮本 猪狩くんといろんなことを話してきたけど、今までは「今日がダメでも、明日の俺は絶対に成長している」っていうのが俺の猪狩渉のイメージなんだよ。
猪狩 はいはい。
宮本 それが大人になっていくにつれて、浮き沈みが激しくなっている感じなの?
猪狩 逆にその浮き沈みの差は少なくなってきてますね。
宮本 あ、そうなんだ。
猪狩 はい。昔は自分のことをもっと信じていたから、絶対にNBA選手になれると思っていたし、自分が一番上手いと思ってプレーしてきた。だから、ダメだったときに落胆する。このアップダウンがかなりあったんですけど、逆にバスケットボールを仕事として捉える自分が出てきてからは、メンタルが安定してきたというか……ダメなときもあるよねって。仕事としてしっかりと割り切って、また上手くなるためにやるべきことをやろうって考えられるようになりました。それを小林遥太選手から学びましたね。彼はバスケットボールを仕事として捉えていて、プロ選手として試合に対するアプローチは凄まじいんですけど、バスケットボールはバスケットボール、仕事は仕事、プライベートはプライベートってしっかりと分けている選手だったので、気持ちの切り替え方とかはすごく勉強になりました。
宮本 そういう意味で、仙台を経由したのは大きかった?
猪狩 大きかったですね。練習生だったので生活も苦しかったし、B1でプレーすることもできなかったですけど、仙台での期間は僕にとってすごく大きかったです。本当に大きかったです!
![](https://assets.st-note.com/img/1738897081-9UupknKXoPLsc2zyR1gYZM34.jpg?width=1200)
シンプルにうらやましい、だから見ないようにしている。
宮本 河村勇輝選手(メンフィス・グリズリーズ)が同じサイズの選手としてNBAに行った。その事実はどう見ていたの? 猪狩渉は散々チャレンジしてきたけど、Gリーグにも辿り着けなかった。でも、それをものすごい勢いで駆け上っていった河村勇輝選手のプレーはどう見ているの?
猪狩 僕は逆に見ないです。うらやましいから。僕もあれぐらいできるなって自分では思うし、時代とかいろんなタイミングがかみ合えば……。そうやっていろんな「たられば」が出てくるから、僕はあんまり見ないですね。でも、やっぱりあのサイズであそこまで行けるのはシンプルにリスペクトしてるし、すごいなって思います。だけど、悔しい気持ちとか羨ましい気持ちが出てきちゃうので僕は見ないです。あえて見ないですね。
宮本 なるほどね。ほじくり返す感じになるけど、俺は河村選手があの舞台に立ったときに、猪狩くんがGリーグのトライアウトとかを経験してきて、話していたことを思い出した。そして、それは間違っていなかったんだなって思った。スモールプレーヤーが活躍することは難しくなるけど、あの舞台に立つなら絶対にこれはできなきゃいけないというものを彼は持っていたし、あのレベルで表現できた。
猪狩 そうですよね、だから……うーん……。もしかしたら馬場雄大選手(長崎ヴェルカ)とかも同じように思っているのかもしれない。時代やタイミングが違えば……とか。もちろん、そこにたどり着くためには実力が必要なことは100%間違いないです。ただ正直それに合わせて、運だったり縁っていうものも必要だと思っています。世界にはいろんなリーグがあるじゃないですか。もしかしたら河村選手よりも得点能力が高くて、ディフェンスができる選手はたくさんいるかもしれない。ヨーロッパだったらマイク・ジェームス選手(ASモナコ・バスケット)とか、アジアでもトレモント・ウォーター選手(上海シャークス)とか。良いガードがたくさんいる中で、「なぜ、河村勇輝選手がチョイスされたのか」っていうところには時代背景であったり、いろんな人の絡み、縁、運。もちろんそれを手繰り寄せたのは彼の実力であり、彼の努力であることは間違いないので、そこに対してのリスペクトはものすごく持っています。ただ、時代が違ったらそれが並里成選手(FE名古屋)だったかもしれないし、それが比江島慎選手(宇都宮ブレックス)だったかもしれない。そこに自分の名前を連ねるのは恐縮なんですけど、本気で僕もNBAを目指していたからこそ……うらやましいな……。シンプルにうらやましいという目で見ています。だから見ないようにしているんですけど、気になるんでたまにハイライトはチェックしますけど(笑)。
猪狩・宮本 ハハハハハ。
猪狩 ちょっとかっこつけちゃいましたけど(笑)。プレースタイルは似ていると思うので、「俺だったらこうするな」っていうシーンがドンピシャにハマるんですよ。「あ、絶対に俺だったらここでビハインドパスを出すな」っていうところで、ビハインドパスを出すし、「俺だったらここでシュートを打つな」っていうシーンでシュートを打つ。そこで僕と彼の絶対的な違いは決めきれる力があるかどうか。僕は決めきることができなかった。彼はその場面でパスを成功させるし、シュートも決め切れる。パリ五輪のフランス戦もそうだったじゃないですか。正直アテンプトが多すぎないかって思った人もいたと思うんですけど、あれを決めきってきたからこそ、今の場所までたどり着いたわけであって、そこの差はかなりある……。もちろん他にももっともっといろんな差がありますけど、絶対的なところはそこだったんだろうなって思いますね。
宮本 めっちゃちゃんと見てるやん(笑)!
猪狩・宮本 ハハハハハ!
![](https://assets.st-note.com/img/1738897141-fNXdpeviJoUwbVKanrFkZQY1.jpg?width=1200)
スタメンのポイントガードとして、ファーストオプションでやってみたい。
宮本 それこそダブドリVol.21を出したときに、テーマとして立てたひとつが、「変化していくこと」。間違いなく次の日本代表、日本バスケの顔のひとりは河村選手になった。日本国内のチームも変化しているからこそ、そのチームのフランチャイズプレーヤー、顔になる選手を取り上げていったんだけど、そういう視点で見ると、猪狩渉はこれからどうなっていきたいのか。どう変化していきたいのかっていうのを、この企画の4人に聞いてみたいなって思ったんだよね。
猪狩 あー、どうなっていきたいか……。
宮本 能代工業も能代科技に名前を変えた。前回までのインタビューで名前は変わったけど、能代工業としてみんなの中に残り続ける。だからこそ、能代工業のOBとしてコートに立ち続けることに価値があるよねって。俺もそう思ってみんなと向き合ってきたけど、今後は能代工業のOBではなくて、能代科技のOBとして見られると思うだよね。
猪狩 はいはい、そうですね。
宮本 Bリーグファンもめちゃくちゃ増えてきて、「能代科技って、昔は能代工業っていう名前だったんだー」っていうファンも増えてくると思うだよね。
猪狩 間違いないですね。
宮本 猪狩渉があと何年プレーするのかはわからないけど、自分が背負っているものと時代背景がどんどん乖離していく。そういう中で、どんな想いでこれからを積み上げていきたいのかっていうのを今回は聞きたい。
猪狩 あー、なるほど。そうですね……。28歳になって、本気で泣くほど悔しい、泣くほど嬉しいっていう感情を日々経験できることが、そもそも恵まれている思うんですよ。多分、普通の28歳とか同じ年代の人たちは、泣くほど悔しいとか泣くほど嬉しいっていう経験はどんどん減っているんじゃないかなって。でも、僕は練習でうまくいかなかった。試合もうまくいかなかった。本気で悔しいし、それがうまくいったらめちゃめちゃ嬉しい。その感情を味わえるのはレアだなって。だから、今がめちゃめちゃ楽しいんですよね。この歳になって本気で追いかけるものがある。それをどこまで続けられるかっていうのはチャレンジでもあります。だからどんな形でもいいからしがみついて、選手としてできるだけ長くやりたいなとは思っています。
![](https://assets.st-note.com/img/1738897172-XySUVNWd1aYDbre8iqCGvHc6.jpg?width=1200)
宮本 これからの人生プランとかは考えたりしないの?
猪狩 ないっすね! 1年1年が勝負だし、僕はバスケットができれば満足なんで。というかそこにこだわっていきたいです。選手にこだわっていきたい。強いて言うなら、スタメンとして20分以上試合に出るメインのポイントガードという役割をプロでやったことがないので、引退するまでに1シーズンでもいいから、その領域まで辿り着いてみたいなっていうのはあります。でも、それはチームの構成とかの話にもなるし、僕の頑張り以外のところも絡む話だと思うので。これだけたくさんチームがあって、その中で何人の日本人がファーストオプションとしてプレーしているのか。何人がスタメンのポイントガードでやってるのかっていうと、数えられるほどしかいないじゃないですか。今まではNBAを目指していた。B1を目指していた。今はカテゴリーへのこだわりはなくなってきていて、どのカテゴリーでもいいからスタメンのポイントガードとして、ファーストオプションでやってみたい。B3でもそういう役割をもらえることはものすごく価値があると気づいたんです。だから、もうカテゴリーにはこだわずにやりたいなって思っています。自分がいる場所でどれぐらいできるのかっていうのを、最後に証明して終わりたい。やっぱりプレーヤーとして……自分のプレーで人の感情を動かすことができる職業ってなかなかないと思うんですよ。だから、プレーヤーにこだわってやっていきたいですね。
宮本 ありがとうございます。これが最後の質問なんだけど、この企画の4人が新しいチャレンジをした。ライバル意識もあるだろうし、大切な仲間でもある。その中で、みんなにこれだけは負けたくないとか、これは失いたくないみたいなプライドってある?
猪狩 あんまりライバル意識っていうのはないですけど、暢と盛實はチームのローテーションに入って、メインプレーヤーとして活躍しているじゃないですか。だから僕もチームのメインローテーションに入って、彼らと同じ目線でバスケットボールの話をしたいなとは思っています。そこにライバル意識というか、負けたくないみたいな感情はあんまりないですね。まあ、そもそも負けてるとも思ってないんで!
猪狩・宮本 ハハハハハ!
猪狩 たまたまあいつらはB1で自分の居場所を見つけただけなんだっていう。まあ強がりだと思うし、やっぱり負けず嫌いなんで(笑)。要はさっきの話に繋がって、タイミングとか運がまだ自分には向いてきていないだけで、実力的に劣っていると思っていない。もちろん、それを手繰り寄せた彼らの実力や努力があったことは絶対なんですけど、僕にだってそのチャンスが必ず巡ってくると信じているし、それさえあれば同じ舞台で戦える。だから、負けているとは一切思っていないです。僕はそれを手繰り寄せるだけの実力を身につけられるように、これからも努力をし続けていきたいと思っています。
![](https://assets.st-note.com/img/1738897338-wXzKNLogmsjpaHCMcBv4fWlA.jpg?width=1200)
ダブドリVol.22 青森ワッツ鍵冨太雅18ページロングインタビュー
「自分にしか描けない未来予想図」
好評発売中!!ご購入は⬇️⬇️⬇️
![](https://assets.st-note.com/img/1738897746-0jsD2JwzpAREaNIVPBFrg5Cb.jpg?width=1200)
インタビュー内に登場したダブドリの紹介
ダブドリVol.18はこちら
ダブドリVol.21はこちら
ダブドリVol.22 発売中!鍵冨太雅選手18ページロングインタビュー掲載!
寺嶋良「読学人間」3月3日発売!予約受付中!
ダブドリSOCIO(月額500円)に入会すると、これまでブリッジを全て読むことができます。さらに、様々なコンテンツ、プレゼント企画に参加が可能!あなたのバスケットボールがもっと楽しくなる!