旅に出たい
旅に出たい。
1.外に出かけるのが好き
家の中にじっとしているのが、とても苦手な人種だ。
外の空気を吸い、
外の気温を感じ、
外のにおいを感じ、
外の陽射しを浴び、
外の風を受け、
あぁ、今日も生きている、と
感じたい。
休日は、どこでもいいからとにかく外へ出たくなる。
家の中にいると、閉じ込められている気がして、
解放されるために外に出たくなる。
外に出るだけで、気持ちが楽になる。
解放された気になる。
自然と足が前に進む。
どこへ行くでもないのに、足は動くから不思議だ。
外はいつも違った表情を見せてくれるのが良い。
すれ違う人、車、動物、天気、季節
同じ瞬間は一度もない。
だから、徒歩でも、自転車でも、
いつでも楽しめる。刺激になる。
あぁ、今日は変わった人がいるな、
今日は天気が良くて気持ちいいな、
今日は季節がまた進んだな、
あ、あのバイクかっこいいな、
お、ユニクロのマネキンはまた季節を先取りしたな、
外に出ればいくらでも新しい発見や出会いが待っている。
だから好きだ。飽きが来ない。小さな刺激に満ち溢れている。
2.旅に出たい
それでも、小さな刺激に飽きてくるときがくる。
「飽きたなぁ」と思うことはない。
――旅に出たい。
そう思った時がその時だ。
日常の小さな刺激では体が物足りなくなっている。
そのサインなのだ。
いつもと同じコンビニへ行き、
いつもと同じスーパーへ行き、
たまに外食もし、
大体同じような弁当を食べ。
あるいは、いつもの慣れた料理をし。
こうして食事がマンネリ化してくると、旅に出たくなる。
いつもと同じ近所を出歩き、
いつもと同じ公園へ行き、
いつもと同じ墨田川テラスへ自転車をこぎ。
気分転換にする近所の散歩やサイクリングは、
だいたい同じような場所になってくる。
自分の場合はまだクロスバイクを持っているので
それなりに移動範囲は広いが、それでも都内で
自転車で気軽に行ける場所というのは限られてくる。
すると、大体の場所を行き尽くすという事態に陥る。
お金がかからないことが好きだ。
だから、公園が好きだ。
川沿いが好きだ。海辺が好きだ。
でも、都内には限りがある。
自転車で行って、飽きたら徒歩でも行ってみる。
すると、自転車では気づかない細かなところまで楽しめるので
新しい発見があるんだけど、
それでも徒歩圏内の方が行動範囲は狭くなるものだ。
だから必然的に、自転車も徒歩も、行動範囲の限界が訪れる。
すると、あぁ旅に出たいな、と思うわけである。
このようにして、日常の食と近所の外出に飽きてくると旅に出たくなる
というきっかけなもんだから、
予め計画を立てて「ここに行こう」という旅ではない。
どこでもいいから、とにかく旅に行きたくなるのだ。
だから、ここでいう旅とは、少なくとも自転車ではたどり着けない遠い場所
ということになる。
自分は幸いにも車の運転が好きだから、
移動手段は車かバスか電車ということになる。
車は、こういうときに備えて、先日カ―シェアに登録した。
でも、登録しただけで、まだ一度も使っていない。
電車は楽だけど、始発と終電が決まっているから、何かと不自由だ。
結局、ツアーに申し込んで、流されるままに連れていかれるのが楽なのはうなずける。考えることをしなくて済むから。
しかし、旅は衝動的に行きたくなるので、ツアーは申し込むことができない。
3.どこに行くか
旅に行きたい。
そう思ったら、その時間から行ける範囲を調べる。
ここなら何時間か、ここならいくらくらいか。
時間とお金のことを考える。
お金が許すか。これは自分にとっては大事な指標だ。
ストレス発散のために旅に出るのに、お金がかかることが
逆にストレスに感じては本末転倒だ。
時間も大切だ。遠い場所では帰ってこれない。
たいてい、衝動的に旅をしたくなるので、時間的ゆとりはほとんどない。
泊を伴う旅はかなりハードルが高い。
一泊以上するくらいなら、ちゃんと考えて出かけたい。
でないと、時間もお金ももったいないから。
ということで、結局、そこまで遠いところへは行けないという結果になる。
次に大事なのは場所だ。海沿いか山奥か湖か。
とにかく、都会にはない自然に触れるということが大前提となる。
自然が好きだ。都内の公園とは比にならないくらいの広大さが必要だ。
昔バイクに乗っていたこともあり、関東近郊の景色がきれいな場所は結構知っている。そして既に主要なところは行き尽くしている。
しかし、バイク無い今、たまに行く旅では既に行ったことがある場所でも
かなり贅沢だ。全然ありがたく楽しめる。
そうして、いざ行くとなったら、
とりあえず目的地を1つだけ作る。そこに行けばもう目的達成。
目的達成のハードルは低い方が良い。だから1つだけ設定する。
2つ以上設定すると、途端にスタンプラリーになって、回ることが目的化してしまい、楽しめない。ストレス解消にならない。
むしろ、目的地を回れず目的未達の時のストレスが発生してしまい、
本末転倒だ。
ということで、目的地は、とにかく景色が良い場所1か所となる。
景観スポットでも、公園でも、川沿いでも、海沿いでも、
どこでもいい。道端でもいい。とにかく、自然が少しでも味わえればOK。
4.車の場合
この点、ドライブだとかなりハードルが低い。
道を運転していれば、一度や二度は景色がぱーっと開ける場所っていうのが
あるもんだ。
あるいは、道端の花がきれいとか。
なので、ドライブの場合、運転しているだけで目的達成したようなものだ。
運転自体も楽しいし、ほどよい緊張感もあって、ストレス解消になる。
レンタカーやカ―シェアの場合、返却時間に間に合わせないといけないというのがストレスだが、しょうがない。
また、借りる際の「何時に返却時間を設定するか?」を決めるのもかなりストレスだ。
渋滞する可能性。途中で疲れて休憩もする。食事もする。
きれいな景色に出くわしたら、少し停まって味わいたい。
そういった自由さが一斉に制限されるからだ。
マイカーやマイバイクとの一番の違いはそこ。時間に拘束されるのはかなりストレス。
延長もできるけど、それは車が空いている場合に限られるし、なにより延長料金というのは割高だ。
なので、比較的ゆとりをもってレンタル時間を設定するしかない。お金と天秤だ。よくできている。難しいからいつも迷って、精神的ハードルがかなり高い。
結局、予約サイトだけ見て、あぁダメだ、とあきらめてしまい、カ―シェアに至ってはいまだに一度も利用したことがない。登録してから半年は経っているというのに。
5.電車の場合
次に電車の場合。
レンタカーと同じく、始発と終電があるが、基本予約は必要ないのが電車のいいところ。
特急列車だって、今は便利で、スマホで直前で購入することができる。
たまの電車旅ということで、グリーン車と買うとしても、ほんと駅のホームで発射直前の数分に買って、それから乗り込むということもしたことがあるし、「その気になればいつでもできる」というのがかなり心理的ハードルを下げてくれる。
電車は楽だ。座っているだけで、目的地へたどり着く。
その間、車窓から景色を楽しめる。スマホだってチェックできる。
ボックス席で、酒を飲むことだってできる。
贅沢だ。
電車旅は、特に特急列車に乗るときは、グリーン車を使うことを検討するようにしている。そこまで極端に高くないのに、得られるリターンが大きいように感じる。
贅沢に座れ、酒が飲める。弁当も食べれる。これが大きい。
行きから飲まないまでも、駅弁を楽しめるのが大きい。
電車旅といえば駅弁だ。これは付き物ではないか。
別にご当地モノにこだわらなくとも、普段そもそも駅弁を食べる機会がないから、だいたい珍しいものを食べることになる。
それだけで満足だ。駅弁というだけでテンションが上がる。
何も特急列車だけではない。鈍行列車だって、鈍行ならではの楽しみ方がある。
まずは、知らない駅名。路線図を眺めながら、読めない駅名や知らない駅名を見聞きしながら、ホームに停車する度、少しだけ心が躍る。
あぁ、自分は遠いところへ向かっている――
そんな気分にさせてくれる。
鈍行列車の、地元民の乗降者を見るのも楽しみだ。
この駅は乗降人数が多いな、この駅は少ないな、とか。
家族連れ、通学の中高生、部活帰りの学生、地元の会社員
いろんな生活が垣間見れるから、地元民を眺めるのは楽しみだ。
車窓から眺める景色がゆっくりしているのも気持ちがいい。
新幹線だと早すぎてあっという間に景色が流れて行ってしまうが、
地方の鈍行は比較的ゆっくり走行しているので、景色を存分に楽しむことができる。
と、電車に乗っている最中の良いところを挙げたが、
到着してからは少しハードルが高い。
如何せん、移動手段が徒歩か公共交通機関に頼らざるを得なくなる。
よって、目的地の駅からの移動範囲が割と狭くなりがちということだ。
駅から駅へ乗り継いで行って、往復でなく、
大きくぐるっと回ってくることもできるが、
そんなことができるのは比較的都会に限られる。
田舎は基本的に路線が走ってないし、往復の旅となることが多い。
なので、駅から先はバスとかになる。
バスはダイヤが少なく、運行しているかは運だ。
予め行きの車内でGoogle Mapで調べることもできるが、限界がある。
知らない地だとなおさらで、結局、駅周辺がある程度栄えているとか、
駅周辺がもう既に良い景色の場所となっていないと、ハードルは一気に上がる。
6.すべて気持ちの持ちよう
まぁでも、気持ちの持ちようではある。
景色がダメだったら、自然を味わえなければ、
例えば、さびれた何もない街の様子をそのまま楽しめばいいじゃないか。
遠くへ行って心を入れ替えられれば、
ストレスから解放されたのであれば、
それだけで旅した甲斐がある。
そう、それくらい目的達成のハードルは低く捉えるようにしておいた方が
ストレスに対しては良い。
とはいっても、いざ旅行している最中は、
自分の貧乏性も相まって、
「これはお金と時間をかけた分だけ元を取れているか・・・?」
などと野暮なことを考えてしまう。
これではストレスがたまる原因となってしまうのに。
お金が贅沢にあれば、この問題は発生しないかもしれない。
話し相手がいれば、この問題は発生しないかもしれない。
しかし、お金もそこまでじゃぶじゃぶ使えるはずもなく、
一人旅なので話し相手もいないとなると、
どうしてもこのように“コスパ”を考えるようになってしまう。
もっと気楽に旅ができるように、精神的にも金銭的にもゆとりを持ちたい。
ま、端から、計画性のない旅の時点でそこまで期待すること自体が高望みしすぎなんだけどね。
こうして、定期的にやってくる旅欲を飼いならしながら、
たまの贅沢をしながら、
また元の小さな刺激を求める日常に戻ってゆくのである。