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【読書録】 極夜行 (角幡 唯介 著)

「お前は太陽から来たのか。月から来たのか」

わずか200年前、文明世界に"発見"されたグリーンランド北西部のイヌイットは、英国海軍に向けてそう問いかけたという。

北緯77度。数ヶ月もの間、地平線から一切太陽が昇らないグリーンランド・シオラパルク。
探検家 角幡 唯介はこの世界の果てのような村から、愛犬ウヤミリックと、2つの橇を引いて、さらに深く暗黒に支配される極北部に深く侵入していく。

星に導かれ、月に惑わされながら、
角幡は氷河を渡り、ツンドラを越え、海氷の上を駆け抜ける。

周囲数百kmに自分以外の人類は存在しない。
人々が築いたシステムとは隔離された、完全な外側の世界。
死を垣間見ながら、3ヶ月ぶりに太陽を見たとき、
角幡は、人は何を思うのか。

人類という存在・歴史 と 自然界の関係性を見つめ直す、
命をかけた壮大な実験とも思える。

とにかく刺激的。止まらない。
毎朝目黒通りをとぼとぼ歩き、山手線に10分しか乗らない僕にとって、
ページを捲るたびに息を呑む冒険・景色がどんどん降りかかってくる。

人は少なからず日々冒険していると僕は考えている。
誰にだって極夜のような暗黒性を生活のどこかに抱えている。そこにある虚無や不安と日々闘っている。明るい月の出ている夜もあれば、ブリザードが吹き付ける日もある。
そしていつかは自分にとっての太陽光を見ることを信じ、願っている。努力をしている人も、たくさんいる。

あらゆる人々にとっての太陽があり、月がある。
角幡は本物の太陽を探すために、世界で一番深い闇の部分に自ら飛び込んでいく。
この冒険を目撃した多くの人が、前に進むための気付きを見出せるのでは、と読了後感じている。

かの200年前のイヌイットは、初めて見る文明世界の使者を見て、何を感じたのだろうか。
彼らが見ていた太陽・月と、我々が見ているそれらは、どう違うのだろうか。

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