資料探しのコツ
クライアントに完成イメージを伝えるために、プレゼンテーション用のカンプを制作します。カンプというのは「Comprehensive Layout(包括的なレイアウト)」の略で、どんな制作物になるかを提示するための完成見本のことで、初期の段階で完成イメージを共有してゴールを目指します。
ラフスケッチのみでは完成イメージを伝えることは困難です。クライアントも仕上がりが分からないものにOKを出しにくいですし、完成してから想像していたものと違う、などといったトラブルの原因にもなります。
完成イメージとしてのカンプを事前に提示することにより、完成までの流れをスムーズに伝えることができます。リテイクなどを減らせて、制作コスト・時間の削減にもつながります。これはグラフィック、Web、どのようなメディアのデザインでも同じです。
たとえば「モデルが砂浜に立っている写真」をビジュアルにすると仮定しましょう。その際、考えなければならないことは多々あります。季節はいつなのか、どんな砂浜なのか、海が見えているのか、木や岩はあるのか、バックに人映っているのか、空に雲はあるのか、光はどのように感じているのか、被写体は全身写っているのか上半身なのか、顔のアップなのか、それともロングに引いた写真なのか、など。さらにコスチューム、髪型、顔の表情、体の向きなど、さまざまなポイントを、企業やブランド・制作物の目的・ターゲット・企画意図を踏まえた上で、デザイナーは1枚のビジュアルを作り出します。
自分の中で完成図があっても、多くの資料を見ることによって想像力の幅が広がります。当初考えていた自分のイメージが間違っている可能性もあります。自分のデザインを狭めないためにも、まずは考えをフラットにして臨むことが大切です。状況によってはデザイナーだけでなく、コピーライター、プランナー、営業の方とイメージの統一を図りましょう。
ビジュアルを考える際に、ネットのみで資料を探すのではなく、雑誌や写真集からイメージ資料を探すことも多々ありますが、これは今のクリエイティブのモードを知ることができるのでオススメです。特にフォトグラファーやイラストレーターなど、クリエイターの写真集や実際の作品を見ることは、自分の美的感覚を磨くことにも繋がります。
資料を探す時は、「その仕事の素材を探す」とだけ考えるのではなく、サイトや雑誌のターゲットの傾向をつかんでおくと、「この場合はあの資料を探せばいい」と素早い判断ができるようになり、それ以降の資料探しが効率的になります。
ただし、ネットの画像や雑誌・写真等をカンプに使用することは、あくまでアイデアのための資料として考えなければなりません。そのアイデアをそのまま使用するのは著作権の問題に関わることになるので、十分に気をつけてください。
単に資料を探すとは考えない
デザイナーになりたての頃は、資料探しを指示されるのは単なる雑務と思うかもしれません。ですが、一見雑務に思うことでも、自ら単なる資料探し以外の目的意識を持つことにより、デザイナーの成長には明確に差が生まれます。
前述したように、サイトや雑誌のターゲットの傾向をつかむことによる資料探しの効率性はもちろんですが、資料を探している時に、目的以外の自分が気になった広告・写真・デザイン・タイポグラフィーなどを集めて、カテゴリ別にストックすることは、自分のデザインの引き出しになります。たとえば、気になった写真を撮影したフォトグラファーの他の作品を調べて特徴をつかんでおくと、今後いざ自分が撮影を誰に依頼するか考える時に、そのストックが役立つかもしれません。
そのようにして得られた知識を、実際の仕事のブレストなどで活用すると、その場でのコミュニケーションやアイデアの幅を広げることになります。それは、仕事のメンバーから「この人はデザインをよく勉強している」「世の中のデザインを知っている」「いろいろな情報を持っている」と認識されることにもなり、デザイナーの評価を上げることにもなります。
とくに新人の時は、与えられている役割がアシストばかり、と思うデザイナーが多いかもしれません。そんな一見雑務に思うことでも、何らかの目的意識を持って行えば、考え方ひとつでポジティブに捉えることができます。今回は「資料探し」というポイントからそのことを書いてみました。
デザイナーの育成についての情報を発信します。
たき工房には115人のデザイナーが在籍しており、日々さまざまな仕事で自己研鑽をしています。また、キャリアと適性に応じた研修・育成制度が、個々の能力向上に活用されています。
デザインには、一気に上手くなるような一発必中の魔法はありません。繰り返し反復することにより、少しずつ、デザインクオリティが上がっていきます。
このコラムでは、たき工房のデザイナーたちがどんな方法でスキルアップをしているのかをご紹介しますのでご覧いただければと思います。