自分で描いた漫画を、ZINEにして売り出すまで
こんにちは、だーすーです。
最近、初めて ZINE というものを作ってみました。作る過程が面白いので、紹介しようと思います。
今回作ったのは、私と彼氏の日常をゆるい4コマ漫画で描いた作品集です。私が「あに」、彼氏は「ぼに」と称して、動物のキャラクターで2人の日常を描きました。
ZINEってなんだ
ZINEというのは、個人または少人数の有志が、非営利で発行する自主的な出版物(Wikipediaより)だそうです。
内容は、写真やイラスト、エッセイや漫画など何でもOKです。
作成してから出版まで編集されたり多くの人手がかかったりすることがないので、いい意味で味のある手作りの冊子が出来上がります。営利目的でないので、書いてある内容も率直でとても面白いです。
ZINE 作成のワークショップに参加
私がZINEという媒体の存在を知ったのは結構最近で、妹がZINEを作るワークショップに参加したことがきっかけでした。自分で冊子を作って店頭で販売できる、というとても面白そうな内容だったので、私もぜひやってみたいと思っていました。
そこからZINEに興味を持ち、ZINE専門店に行ってみたり、吉祥寺で開催されていたZINEの販売イベントに行ってみたりしました。どんな意図で作っているのかとか、ZINEに載せている体験の話とか、作り手と直接お話ししながら購入することができるのもZINEの面白いところだと思います。
妹と私が参加したのは、世田谷区駒沢にあるMOUNT Tokyo というZINE 専門店が主催しているZINE作成のワークショップです。
こちらのワークショップではディスカッションをしながら自分の作品を作ることができます。自分が曖昧にしていた部分やモヤッとしていたところは、講師や一緒に参加している生徒の方からアドバイスをもらうことができます。
ワークショップは以下、全4回の構成です。
1回目:ZINEの概要
2回目:イメージするZINE の見本(ダミー本)を作成
3回目:ブラッシュアップしたダミー本を見せて最終調整
4回目:完成版の発表&ZINE納品
各ワークショップは2週間おきに開催されるので、初めから完成まで6週間でやり切ることになります。
コンテンツを決めて、ダミー本を作る
私がZINEにしたいと思っていたコンテンツは日頃iPadで描き溜めた4コマ漫画だったので、コンテンツの準備自体はそれほど苦労しませんでした。デザインは漫画にも登場する「ぼに」こと私の彼氏に依頼しました 笑
2回目のクラスまでにダミー本(作りたいZINEのイメージを印刷・切り貼りして、形にしたもの)を作成してきてください、とのことだったので、自分の4コマ漫画をページに2つずつ配置して、まとめたものを持っていきました。印刷はセブンイレブンのプリンターでやりましたが、A4の紙に印刷して半分に折ったときに本になるようにプリントすることができるので便利です。
4コマ自体はおもしろいね〜という反応でしたが、ゆるい雰囲気なのにただ白黒の4コマ漫画が並んでいるだけだと無機質な感じになってしまうので、ZINE全体としてもっとゆるい雰囲気を出すために、途中でイラストを挟んだり色を入れたりした方がいいとアドバイスをもらいました。
確かに4コマ漫画集を作ることしか考えてなかったので、ZINE全体としてどんな雰囲気にしたいかという視点はなかったな〜と気づきました。
そして、1回目のフィードバックを踏まえ手直しした2回目のダミー本を携えて3回目のワークショップへ。
色をつけたバージョンを全て作るのは間に合わなかったので、色をつけたバージョンの4コマ漫画1つと、改善したバージョンの白黒のものを再びセブンイレブンのコピー機でプリントして持参しました。
周りのメンバーにも「いいですね!」と言ってもらえて、これで色を入れたらだいぶそれっぽくなるな…と完成イメージも見えてきました。
おまけシールをつけたいと思い、シール用のイラストも作って印刷屋さんに頼むなども並行して行なっていたので結構忙しかったです。
コンテンツ作成の先にあった苦労、印刷工程
文章やイラスト等のコンテンツを作成した後は、現物を作るために印刷をする必要があります。印刷の方法として、ネットや店頭で印刷屋さんに印刷から製本まで依頼する方法と、自宅やキンコーズ等の印刷機をおいているお店で自分で印刷する方法があります。
最初はネットプリントでパソコンでデータを入稿してプロに任せる気満々でした。しかし、ワークショップで知った「リソグラフ」という印刷方法がとても魅力的だったので、この印刷方法を試したいなと思い色々調べました。
リソグラフとは、理想科学工業株式会社が販売しているプリンターによる印刷方法です。インクが通る穴の空いた版を作成し、穴を通過したインクが紙に乗ることでプリントできる仕組みだそうです。普通の印刷と違った独特の風合いのある印刷ができます。
まずどんな仕上がりになりそうなのか確認したかったので、ワークショップで教えてもらった印刷屋さんで試し刷りを依頼することにしました。試し刷りでは、ペラ紙と呼ばれる薄めの紙(レトロ紙)と、少し厚みのある中厚紙(カーネル)の2つで印刷を試しました。
濃度を変更した4コマを2列ずつ配置して、仕上がりイメージをチェックします。
試し刷りした段階ではすごくいい感じだと思ったので、こちらにそのまま製本までお願いしようと思い見積もりを出したところ、10部作成で20,000円近くかかることが判明。いくら利益を出そうとしているわけではないとはいえ、1,000円以下で販売しようとしていた冊子が1部あたり原価2000円を超えるとなると、きついな〜と思ってしまいました。
そこで、なんとか安くリソグラフ印刷ができるところがないか探したところ、東京でいくつかの印刷所を見つけたため、問い合わせや見積もりをしまくりました。そのうち早速連絡をくださった蔵前にある印刷屋さんに、土曜日の朝に相談しに行きました。
良心的な印刷所さんでしたが、初めての印刷をサポートしていただけるプランが土日のみとのことでした。まだ印刷するための完成原稿が出来上がっておらず、2日間で仕上げるのは厳しいと思い、断念しました。親切にも別のリソグラフに対応している印刷所を教えてくれたので、そこに問い合わせすることにしました。しかし、スタッフの方が病気でちょうど対応できない、と連絡があり、うまくいかないな〜と思っていたら、ちょうど近くに先日問い合わせていた別の印刷屋さんがあることがわかり、そこを訪ねることにしました。
そして最終的にお願いすることになったのが kissa books さんです。
ここはリソグラフ印刷機だけでなく、ギャラリー併設の喫茶店があるとても素敵なところです。全て自分でやる必要がある代わりに、印刷代のみで対応いただけるとのことだったので、ここで印刷することに決めました。
紙…どれがいいんだろう…
kissa booksさんには紙は売っておらず、自分で好きな紙を持ち込むことができます。
印刷素人の私からすると、リソグラフに適した紙がなんなのかとか、どのくらいの厚さが良いのかとか、そういったことは全くわかりませんでした。
とりあえず新宿の世界堂に行って、店の隅っこで検索したり、お店の人に聞いたりしながら2時間くらい迷って、やっと「ファーストヴィンテージ」のベージュ・リネン・アッシュという色の紙と、クラフト紙を購入しました。
これらの紙で試し刷りして、最終的にどの紙が一番いいか決めようと思いました。
試し刷りしてみた結果、ファーストビンテージのベージュが良さそうと思ったので、帰りにまた世界堂に行き、100枚購入しました。この数日の間に蔵前と新宿を何度訪れたことか…
ひたすら冊子を作るだけの有休
成果物の発表会が2日後に迫っていた木曜日。
私は有給休暇をとってkissa booksさんを再び訪ねました。本番の印刷をするためです。
目標は、10部。失敗しても、最低5部は売り物になる冊子を作ること。
今日失敗したら2日後の発表会に間に合わないので、絶対に失敗はできない、と少しナーバスでした。
先にワークショップに参加していた妹が印刷の様子を見たいと言ったので、一緒についてきてくれて印刷も一緒に手伝ってくれました。
リソグラフの印刷は、次のページを印刷すると前のページの情報は消えてしまう(版が変わってしまい、前の版は捨てられてしまうため)ので、印刷をミスしてもう一度前のページを印刷したい場合は、再度版を作るお金がかかることになります。そのため、印刷ミスをしないように慎重に進めました。
印刷が一通り終わった後にkissa booksさんでコーヒーブレイクさせていただいて、そのあとは1人でひたすら冊子を作成する作業をしました。
折り目をつけ、冊子の真ん中に留められる巨大なホチキスで製本し、最後は本のふちを裁断機でカットして整える作業を、最終的に14冊分やりました。
奇跡的にどの本もページを間違えたり上下のプリントミスをしたりといった心配していたミスが起こることはなかったため、14冊分全てうまく冊子にすることができました!
14部の印刷代でおよそ6500円程度だったので、当初の予算よりはだいぶ削減できました。
13時過ぎから印刷を始めて、終わったのは18時すぎ。とても疲れましたが、完成した冊子を見たkissa booksのオーナーさんが買いたいですと言ってくださったのが嬉しかったです。
正直、印刷がこんなに大変になると思っていませんでした…(自分でやらずにプロに頼めば大変ではないはずでしたが)
でも自分でやったことで、紙や印刷についても興味を持って取り組むことができました。
そしてついに完成へ
ついに完成したZINEを、並行して印刷屋さんに頼んでいたシールと共に封入していきました。商品として完成した実感が湧きます。
最後のワークショップで、作成したZINEの発表会をしました。一緒にディスカッションしていた人たちのZINEもものすごく完成度高く仕上がっていました。悩んでいた部分や制作にかけていた思いも知っていたので、自分のZINEの完成と同じくらい嬉しかったです。
私のZINEやワークショップに参加していたメンバーのZINEは、駒沢のMOUNT Tokyoというお店に置いてあります。ネットでも購入できますが、店頭にはたくさんの個性的なZINEが並んでいて面白いので、ぜひお店に行ってみることをお勧めします。
頭の中にだけあったものを形にするということ
今回ワークショップに参加して、小学生の時に一枚の紙を折りたたんで作る冊子をよく作っていたのを思い出しました。
かわいいイラストを描いたり、紙で作った小さな付録をつけた冊子を作って友達にあげたりしていました。その時のワクワクした気持ちを、再び感じることができた気がします。
そんなふうに、作るのは楽しいことだったはずなのに、いつの間にかやらなくなっていました。今回ZINEのワークショップに参加したことで、形にするのは意外と難しくないということを実感しました。
初めてのZINEで、リソグラフという初めて知った印刷技法にチャレンジし、しかも自分自身で印刷から製本までやったのにも関わらず、いろいろな人の協力もあってこんなにスムーズに完成して、ありがたい気持ちやホッとした気持ちでいっぱいです。
今年最初のnoteでも書いた、目標のうちのひとつを達成することができました。たった10部ですが、自分で作った漫画がこうして店頭に並ぶということが、なんだか不思議です。
かなり大変でしたが、もうすでに次回作の構想が頭の中を渦巻いているので、きっとまた作るんだろうと思います 笑
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