自由連想法による文章練習【3】 2 天坂大重菩薩郎(てんさかだいじゅうぼさつろう) 2021年9月22日 21:18 残りすくないマヨネーズを底のほうに絞りあつめてから そのすこし上をハサミでぜんぶきって マヨカップみたいにした オクラをぜんぶ食べてしまってからも マヨカップのなかのマヨネーズはけっこう残って だからというか 「底」ではなく 蓋のほうに絞りあつめたほうがよかったかもしれないと一瞬おもったが マヨカップの横の口同士を合わせて それをうまい具合に洗濯バサミでとめることができて 逆に蓋のほうに絞りあつめてしまっていたら こんなに上手く洗濯バサミでとめられなかっただろうと思いなおした オクラは「タイ産」だった タイの首都は「バンコク」と予想して 一応グーグルで確認しようとしたら そのまえに「アナと雪の女王」をグーグルで検索していたことを見て気づいて じゃあそのまえはなにを検索していたのか?とおもってなんとなくみたら 「日本を取り戻す」だった じゃあそのまえは?と どんどんもどっていったら 「おんぶ」「今か今か」「丸太」「まるた」「正男」でおわりだった はじめて自分のパソコンを買って 自宅でインターネットを使うようになったのは 二十二、三歳のころだったとおもう 四畳半の風呂なしアパートの二階で 窓は北向きで部屋も暗かったが 住居というより「基地」みたいな感じのその部屋を ぼくはむしろ気にいっていた となりの部屋には同い年くらいの「嶋田」という男がすんでいて 嶋田は当時はやっていた「なんでだろ~」の鼻歌をしょっちゅう歌っていた ある日 嶋田は自分の部屋に女をつれこんで その女とセックスをしていた そのときぼくは 実家から送ってもらった落花生をカリカリむいてたべながら テレビで鉄腕アトムをみていた しばらくして 「コウちゃんもよかったらどう?おれの後だけど」と 上半身はだかの嶋田がヘラヘラ笑いながらぼくの部屋にはいってきて 今日の女はもとAV女優だから感度がハンパなかったとかいろいろいってきたが ぼくはそれを無視して 落花生と鉄腕アトムに集中した やがて もとAV女優というその女もぼくの部屋にはいってきた 「なになに~どうして~?どうしたの~?」とかいいながら ぼくの背中に胸を押しあてるように後ろから抱きついてきた女は そのままぼくの下半身にさりげなく手を這わせてきた ぼくは女の手を無言ではらってから そばにあった三キロの鉄アレイで女の頭を思いきりたたき割った 女は即死した ついでに嶋田のことも同じ鉄アレイで殴り殺してから ぼくは二人の遺体をとなりの空き家のよこにあった井戸に投げすてた 鉄腕アトムは白黒だった 窓にはカーテンのかわりにスダレをかけていて 部屋の電気も蛍光灯のかわりに ドンキでかった屋外用のオレンジの照明をカーテンレールに吊るしていたから 所謂ナントカ横丁みたいな昭和な感じの部屋に仕上がっていた その部屋に引っ越したばかりのときは 駄菓子屋で売っていそうな子供用のオモチャを百円ショップでいくつかかってきて 針金を回してそれらをスダレに取りつけたりもしていたが それだとうるさすぎるというか オモチャに埃がたまるというのもあって やっぱりぜんぶ取りはずした 百円ショップはスーパーの二階にあった 地味で値段も高かった一階のスーパーは 近くの百円ローソンや八百屋に客をうばわれていて いついっても閑古鳥がないていた スーパーのななめ向かいには花屋があって そこでかったポトスを冷蔵庫のうえにおいてかざった 花屋の出入り口は 東側のスーパーがある商店街沿いのほかに 反対の大通りに面した西側にももう一つあって どっちからも出入りができたのはまあ当然として どっちがメインなのかわからないほど どっちの出入り口もにぎやかに装飾されていた 西側の大通り沿いの出入り口には 紅葉や竹の苔玉(こけだま)のほかに 和食器とかアート系の風呂敷なんかもディスプレイされていた ほかではあまりみない十センチくらいの棒のお香もあった 店内のレジちかくには古本もすこしあって 実はだから花屋というより雑貨屋だったのかもしれないが とにかくぼくはそこで ロブグリエの「消しゴム」という本をかった 「ヘンな題名の本だね どういう内容なの?」と 椅子のうえにおいていた「消しゴム」をみて妻がそう聞いてきたとき ぼくはブラシでウサギの毛繕いをしていた 毛繕いがおわると ウサギは後ろの二本足でひょいと立ちあがって カクッ… カクッ… カクッ… と なにかの機械のように 段階的に顔のほうにもちあげていった で 二本の前足というか手のようにしかみえないそれを あれこれ動かしながら 顔と頭をゴシゴシあらった うちで飼っていたウサギはメスで メスのウサギの首の下にはモコモコした胸毛があるのだが その「モコモコ」から 「もこ」→「もす」→「もり」という感じにかえて 「きょうの晩ごはん何もり?」なんて言い方を妻はしていて だからぼくも「焼サンマ ひじき 湯豆腐もり」とか あるいは「も」だけをつかって 「エコー二個かってきても」というふうに返事をしたりもするのだが 「了解」の意味をこめて返事や返信をするときは 「もす」や「もり」とだけいうほかにも 「も」をまったくつかわず 「かく」とだけ返すことがぼくにだけあって それはつまり ウサギが顔を洗うときに カクッ… カクッ… カクッ… と 前足をもちあげるところからきているのだということを 「「かく」って何?」と妻にいわれたとき ぼくはすぐにそうだと思いつけなかった あとで「かく」の由来をしって 「へーもす」といったものの 妻が「かく」を使うことは今もほとんどない だからというわけでもないというか… 自分でもよくわからないのだが 「いま中央線のったも」という会社帰りの妻からのメールに ぼくはほとんど必ず「かく」と返信している そしてそれは毎日のことだから ぼくの送信メールボックスには「かく」だけが ずっーと下のほうまで並んでいる ▼全文はこちら▼ 自由連想法による文章練習3: 無名作家の終わらない実験小説 amzn.to 500円 (2024年02月11日 14:46時点 詳しくはこちら) Amazon.co.jpで購入する ▼全集マガジン購入者は、こちらから全文無料で読めます▼ ダウンロード copy ここから先は 28,145字 返品はできません。購入後はノークレームでお願いします。 【過去記事・全集】 50,000円 種々雑多 な過去記事です。毒々しいテキストも多いため、良い子が気軽に購入できない金額(50,000円)に設定しています。一部もしくはタイミ… 購入手続きへ ログイン #実験小説 #自由連想法 2 サポート金は5,000円以上でお願いします。 サポート