ある救急医の備忘録 カルテ3 / 守備範囲
いつもと変わらない夜。
いつもと同じように救急搬送依頼の電話が鳴る。
XX年YY月ZZ日 22時
「28歳 女性 胸痛の方の受け入れをお願いします」
「産後 1ヶ月の授乳婦の方です」
10分後に到着し、救急隊から申し送りを受けた。
これまでに特に大きな病気に罹ったことはなく、出産も順調で、家族に心臓の病気の方もいなかった。
もう 1点気になることを確認してから 診察を始めた。
状態は落ち着いており、詳しい状況を本人に確認しながら診察をすすめた。
普段通り 夕食を食べた。夕食までも 夕食を食べてからも変わったことはなかった。
就寝前の授乳をしている時に急に左胸が締めつけられるように痛くなり、5分以上続くため 救急要請したとのことだった。
意識清明。呼吸 , 脈拍 , 血圧 問題なし。
心雑音なし , 呼吸音 正常。その他も診察上 問題となる所見なし。
血液検査と心電図検査をすすめた。
結果はいずれの検査も問題なかった。
検査結果を待っている間に症状も良くなったため、本人・ご家族へ検査結果などを説明して帰宅された。
結果としてはよかったのだが、原因は分からなかった。
救急の現場ではよくあることなのだが、納得のいかない人も多いかもしれない。
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