バウワウ城にレアメタル
町中華で破壊行為を繰り返したので、因名(ちなみな)カコは満ちたりた気分で店を出た。ラーメンやニラ餃子の死体が脂っこい床に転がっていて、心底汚い。中華丼は上半身をメッタ刺しにされており、陶器のように割れた頭部から垂れ出した粘度の高い体液で店の半分あたりが水浸し(汁浸し?)になっていた。カコは身を震わせると、全身に空いた銃創から、奇怪な煙を吐き出した。五つある肘は漏れなく反対側に折られており、その痛みで顔が歪む。
カコの反対側からか細い気筒音が、カコの顔ではなく腹の向かい側(よってそれはカコの顔の向かって左裏側となる)で宙返りして去っていく。己の醜さを知れと。そんなことは標識の裏にでも書いておけばいいし、道交法に新たに付け加えるなんてもっての外だと、カコは思った。夕日はほとんど街の凸凹した影の淵の向こうに沈み、金色の光線を激しく瞼に突き刺した。
これは違う。間違いだ。
両手でくしゃくしゃに丸めて職場か駅のゴミ箱に捨て走り去りたいような、そんな一日が終わった。
アステカから来たジャガーが、背中にカコを乗せて国道を下っていく。空からは雪のように乾いた皮膚片が舞い散ってきていた。上空で仙人が頭皮を掻いているのだと聞いたことがあったが、誰からだったのか思い出せない。そのうち時間切れとなり、カコは病室に戻された。夜は11時を回っていた。病室に張り巡らされた錆色の配管が、身を捩りながら次々と巣に帰って行った。