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かすかな光

✳︎今日のひとこと

人生って何回か「この事態の重なりはもう、どうやってももうちょっとむりかも。これ以上は自分だけでは持てないかも」というときがあります。
私の場合、直近で言うと親友(しかもその前倒れてるのを発見劇まであり)と犬が同じ1週間でいきなり死んだときでしょうか。その前は姉と両親が全員違う場所に入院していて、自分はインフルエンザの上に中耳炎をこじらせて毎日39度熱が出ていたのに家に幼児がいたときでしょうか。今考えても冷や汗が出ます。
しかしそれがずっと続かない場合が多いのが、現代の生活のいちばんありがたいところで、私はよく「ずっと逆さに吊られてそのまま死んだ人」とか「じめじめした牢獄で息絶えた人」「生きながら燃やされた人」「獣に食べられて死んだ人」のことなど思い、限界を超えて死んでしまった人がこの世にたくさんいたことについて、思いをはせたりします。だって食べられるを除いて、自然の世界にはない死に方ですから。
昔、深夜のドキュメンタリー番組で「アルビノの人の肉を食べると、なにかの病気が治る」という言い伝えがあるから、アルビノに生まれた人たちがよく殺されちゃう地方で、「夜道は歩けない」「私は腕を切られました」という女の子がインタビューに答えていて、「ほんとうに現代?そしてこの番組を観たこと、後で自分は『夢だったかな』ってきっと思うよな」と思いました。
比べたら自分は幸せ、ということでさえなく、そういうことが起こりうるこの世の中で、ある程度解決のチャンスに恵まれていることの喜びを冷静に考えます。
もちろん、その「重なり」に関してはいっしょに扱わないで、もつれた糸をほぐすかのようにひとつずつ、できる範囲だけちびちびと解決していくしかないんですけれどね。

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吉本ばななです。やがて書籍になるときにはカットされる記事も含めています。どくだみちゃんは散文、ふしばなはブログ風です。コメントはオフですが…