それしかできない
✳︎今日のひとこと
前にも書いたことなのですが、昨年、骨折した数日後に、ものすごく低い確率なのになぜか当たった坂元裕二さん脚本の朗読劇を観に行ったのです。
千葉雄大さんと芳根京子さんが椅子に座って、「カラシニコフ不倫海峡」という脚本を読んだのですが、あまりにもおふたりがうまくさらに役に合っていて、さらに坂本さんの同世代感がしみてしみて、骨折していたからセンシティブになっていたのもあるかもしれないのですが、風景や映像が見えるような気がしました。
私はすっかりそのお話にノックアウトされ、その悲しい恋の世界が私の心の隅々に養分を与えました。私の中で不倫というものがありだとしたら、こういう恋しかない、そう思いました。千葉さんの持っているストイックで妥協しない男性性が最高にうまく出ていましたし、芳根さんの美女だけどどこかそっけない感じがするところも最高に活きていて、私まで彼女に恋しそうになってしまいました。あんなものが書けるなんて、さすがだとしか言いようがありません。
それとその数日後に観た飴屋さんの「キス」、そして合田ノブヨさんの展覧会。そしてマヤマックスの陶芸の展覧会。どれもすさまじいなにかを感じるものばかりでした。
骨折直後なのにすごい豊作な月でしたが、そこで私は自分が動けないぶん、しみじみと、それぞれが才能を活かして生きていくことだけがこの世の花だな、と思ったのです。よけいなことはなにも考えなくていいんだ、と。その教えを骨折で痛かったり不自由だったりしたゆえにもっと強く感じました。
それは芸術の分野には限りません。その人がその人であることだけが、人生でできることなんだと、これまでもいつも書いてきましたけれど、本気で思ったのです。
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どくだみちゃん と ふしばな
吉本ばななです。やがて書籍になるときにはカットされる記事も含めています。どくだみちゃんは散文、ふしばなはブログ風です。コメントはオフですが…