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事故物件

✳︎今日のひとこと

ちょっとだけ怖いような不思議な話をいくつか書いている最中なのですが、ちょうど事故物件の話を書きながらお盆を迎えました。
お盆と言ってもお墓参りに行くくらいで特に何もしてないんですけれど、ちょうど少し時間ができたりデッキの木が腐ったり木の植木鉢が壊れたりして、やむなく植え替えをしていたのです。熱々の陽射しの中で。
熱中症になるのも怖くないほど手入れすることがたくさんあって、あまりの暑さに虫も少なかったので、植物や土とすばらしい時間を過ごしました。

昔住んでいた家の大家さんがくれた幸福の木が庭で巨木になっているのですが、その木を株分けしたものがベランダにもあって、土も傷んでいたし肥料や竹炭を入れて少し手入れをしていたのです。大家さん、あのときすでに90近かったし、もう20年くらいたってるし、亡くなっただろうなあ、と思いながら。
2018年に猫のタマスちゃんが死んだときにその家の近くのお寺に行ったら、マンション自体が建て替わっていたけれど、あれはきっと大家さんが亡くなって息子さんと娘さんが立て替えたのだろうなあ、とか、いろいろ思い出して。
なぜかふと大島てるを見たんです。虫の知らせというか。ちょうどそういう話を書いていたからというか。
そうしたら、私の住んでいた場所が、もやっとする形で事故物件になってました。
もうそのあたりに住んでいる人がいないので、聞き込みもできないし、真実はわかりようがないのです。
でも、もしかしたら息子さんか娘さんが一部屋に住んで、そして亡くなったのかもしれないな…と思いました。いろいろ持病がある人たちだったので。
大家さんの強さと勤勉さがそんな悪い感じ全てを止めていたんだろうな、となんとなく思いました。
そう言いながらも、今もあの人たちがケロッと生きててくれたらいいな、と心のどこかで思うようにします。

大家さんのすごいエピソードはたくさん持っていてあちこちで書いているのですが、あるとき認知症で徘徊しているおばあちゃんを大家さんとふたりで保護して警察を呼んだことがあり、大家さんが「あなた何歳?私83」とか言ってるのもウケたけど(相手の方は70って言ってたけど絶対もっともっと上)、警官が来て「この方は多分一本先のアパートの方で以前も保護したことあります」と言っておばあちゃんを連れていった後に、「あたしももうすぐああなるのかしらねえ、信じられないけど」って真顔でつぶやいていらしたのが印象的でした。

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吉本ばななです。やがて書籍になるときにはカットされる記事も含めています。どくだみちゃんは散文、ふしばなはブログ風です。コメントはオフですが…