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腑に落ちる

✳︎今日のひとこと

遠い昔、あがた森魚さんといっしょに長崎に行ったことがあります。
といっても、ふたりで行ったのではなく、元彼があがたさんとツアーをやったので、くっついていっただけなのですが。いっしょに街を歩いたりして、楽しかったのです。
あがたさんがそのときライブで歌った「サイレント・イヴ」は鳥肌がたつほどすばらしかったです。今も目と耳に焼きついている。
その後も何回かライブに行ったりしたものの、この10年くらいはお会いしてなかったのですが、鮎川さんのお葬式でばったり会いました。
互いにマスクをしていたので最初あがたさんだとわからなかったのですが、声でわかりました。
あまりの懐かしさと、列が進んだらもうすれ違ってしまうので、お友だちとお話ししているところに割り込んでご挨拶してしまったのですが、そんな失礼に対してもあがたさんは優しかったです。

お焼香をすませて暗澹とした気持ちで出口に向かうときにもう一回出会えたら、あがたさんがあのすばらしい声で笑顔を見せて「おつかれさまでした」とおっしゃった。
そのあり方、動作、声の響き、全てが音楽でした。
人が長く同じことをしてきたということの凄みだけは、どんなものにも負けはしないんだ(鮎川さんのギターも)と、心からの敬意を感じました。
お葬式の悲しさを、一瞬で清めたその魔法に。

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吉本ばななです。やがて書籍になるときにはカットされる記事も含めています。どくだみちゃんは散文、ふしばなはブログ風です。コメントはオフですが…