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Song of the Bandits

キム・ナムギル、少女時代ソヒョン、ユ・ジェミョン、イ・ヒョヌク、
イ・ホジョン、チャ・チョンファ、キム・ドユン、イ・ジェギュン、
チャヨプ出演、ファン・ジュンヒョク監督ドラマ
「도적: 칼의 소리(剣の詩) Song of the Bandits」

(以下、ドラマの核心に触れる部分もございます)

도적 칼의소리

独立軍/独立運動家/独立義士ほど志が高いわけでもなく、蹂躙され殺されるだけの無力な民間人とも違う。中途半端で国を持たない宙ぶらりんなディアスポラ、しかし家族と生活の場の村は「剣」で守りたい「도적(盗賊ではなく刀嚁)」というアイデンティティ。
元義兵長はかつて独立軍に巻き込まれ家族を殺された(「求礼」で)つらい記憶、トラウマに苛まれてもいる。
そんな悲劇や葛藤を抱えた「도적」たちは前近代的な価値観、受け身で守りの姿勢から未来志向な歴史観を纏い主体的に判断し行動しやがて独立運動の歴史の中の楔(くさび)のようにもなっていく。

ドラマ「미스터 션샤인(ミスター・サンシャイン)」でも似た設定の人物が登場するが、封建社会の最下層に生まれながらも侵略・植民地支配という外からの暴力装置により強制的に君主制や社会は解体され、スタンドアローンも強いられていく時代。
そこに日本は近代化?()教育制度も注入したが実態は各研究等で明らかになっている通り思考停止した「皇民」服従する「臣民」を量産するのが目的。
現代の日本の教育の「成果」を見ればわかる通り、極右政権信者が電波プロパガンダや歴史修正、大本営発表を無批判にあっさり信じ服従するような思考停止。
また、内地(日本)はともかく外地での教育制度等は階層移動の手段としての機能は制限され差別、民族差別は厳然と存在していた。
おそらく、唯一可能性があったのが「軍隊」、軍で貢献することだったのだろう。ゆえに、「ミスター・サンシャイン」の主人公も軍経由で、「도적」でも「日本軍」を経由。

一方、ドラマの中に「不逞鮮人」という言葉が何度も登場する通り、植民地支配下の思考停止臣民の量産計画の枠をはみ出し独立運動などに関わる者たちの排除が熾烈になる一方だった時代。1919年の「3.1独立運動」のインパクトなどが強かったからだろうか、そのあたりから行政用語的に「不逞鮮人」は使われていたという。9月1日の関東大震災といえば朝鮮人中国人の虐殺だが1923年のその震災以前にも日本は民間朝鮮人を中国大陸でもロシアでも虐殺していた。前者は鳳梧洞・青山里の戦闘で敗北した日本が報復として間島の朝鮮人3千人以上を虐殺した「間島惨変」(庚申惨変、琿春慘變とも。1920年)、後者は1920年の沿海州での虐殺。ドラマの舞台である間島は詩人ユン・ドンジュらとの関わりで知っているくらいだったが、日本に支配された朝鮮半島をついに脱出し満州周辺で暮らしていたディアスポラな人々への迫害についてはなかなか知る機会がなかった。関東大震災時の虐殺とも地続きで呼応するような事件が何度も起こっていたとは。

独立運動関連の映画などでもこういった虐殺が言及されていたことはあるがこのドラマでは二度と虐殺させない、虐殺を止めることが出来るかどうか、がおそらく「도적」たちの奮闘にもかかってくるはず。シーズン2(発表はされていないが、エンディングからの推測で)でのひとつのアクション的クライマックスはそのような展開になると思われる。歴史に「もし If」はないが...ヒーローでもない無名の「도적」たちがどこまで虐殺や迫害を食い止めることが出来るか。
(注:ドラマでは迫害や虐殺の「直接の」加害者が日本に限らない、というずらしの可能性も)

歴史に決して名前を残すことはない、独立軍でもなく独立義士でもない
デラシネ(根無し草)で宙ぶらりん、無名の「도적」たちは一方でそれぞれの葛藤の中歴史的視点を身に着けていく。虐殺や迫害の危険に曝される中で生き残り、生き延びるために。これは日本が臣民量産のために導入した教育制度よりはるかに価値があり、知的で「近代的」で人間的成長をも促されるもの。ドラマの中の
「시대의 흐름만 쫓다가 역사의 흐름을 놓치지 마라.
시대는 잘못된 선택을 해도 역사는 그렇지 않아.
역사는 지금의 네 이 행동을 반드시 제대로 평가할 거다.」という言葉通り、
その場限りに流されず(時代の流れで目先の利益等に目が眩む親日派のようには流されず)歴史がどう評価するかをも念頭に大局的に選択し行動することを促されるから。もちろん過酷な現実に迫られての啓蒙的プロセスでもあるが。

将軍檀道済の「兵法三十六計 삼십육계」から「李代桃僵 이대도강」が登場もし、独立軍でもなく民間人でもない「도적」たちの行動や試行錯誤は
「家族」と生活の場を守る、というシンプルさだけのようで実は知恵や教養、朝鮮半島らしい伝統に裏打ちされている感慨も。

儒教で説く五つの徳目「五常 / 五徳 仁・義・礼・智・信」などが滔々と根底に流れているのかもしれないが、近代化に移行する過程で新旧の価値観もせめぎ合う時代の中で古来からの使える知恵や教養は使っている(元義兵長が時代遅れの弓矢で戦うのも象徴的)。同時に、歴史的視点で見て正義とは何か、も模索され掴み取ろうとしているダイナミズムをグラデーションある独立運動の一面、多様な独立運動の一環として「満州ウェスタン」というジャンルに落とし込み溶け込ませようとしている印象も。
20世紀初めの前近代的な社会構造、近代化移行期を踏まえて言えば「下からの」ダイナミズムであり、植民地支配下の朝鮮半島から出た「外からの」、
そして周縁者であり地理的にも周縁である「周縁からの」ダイナミズムでもある。

OSTがなかなか気に入った。メイン・テーマ、NCT태일(テイル)の「Bandit」はブルースも感じさせて印象的。過去の満州ウェスタン韓国映画とは相違し、西部劇感は薄くブルージー。また、BTSジョングクが2021年頃に誉めていたSeoriの歌うOST曲「Hitman」などもすばらしい。韓国のビリー・アイリッシュ的歌唱は深みを増している。

余談:ドラマを視る時オープニング(イントロ)をスキップして続きを早く視たい気持ちもありつつ、気に入ったOSTは毎回聴きたい気持ちもあり、ふたつの気持ちが行ったり来たりしてもいる。現在視聴しているドラマでオープニングをスキップ出来ないのはその曲が好きだから。
(設定等に疑問はあったりもするが...)
「#힙하게」のMONSTA X 주헌(ジュホン)「HIP HOP」と
「#국민사형투표」の 1Kyne, 지셀(Jiselle)「ON FIRE」はどちらもヒップホップ系。HipHopだ~いすきなのでこの2つのドラマのオープニングはスキップ出来ない。

윤동주と間島

#도적_칼의소리 #SongOfTheBandits

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