国連主催「UN SDG Action Awards 2024」ローマで開催(前編)――映画監督やアスリートたちが語るSDGsへの思い
国連が主催するSDGs達成に向けた取り組みを評価する「UN SDG Action Awards 2024」の表彰式が、10月29日にイタリア·ローマで開催された。今年は190か国から集まった5500件の応募の中から、厳選されたプロジェクトとチェンジメーカーが選出され、その功績がたたえられた。本記事では、アワードの模様と受賞プロジェクトについて、前半と後半に分けて紹介する。
“創造性”を通じて危機を乗り越え、希望を示す
「UN SDG Action Awards」は、SDGs達成に向けた創造的かつ革新的な取り組みを推進する個人や団体をたたえる国連の特別プログラムである。このプログラムは“創造性”を通じて世界の危機を乗り越え、希望を実現する行動力を示す場となることを目指している。
イタリア外務·国際協力省およびドイツ連邦経済協力開発省(BMZ)の支援の下、開催された表彰式では、音楽やアートなど多様な背景を持つリーダーたちが登壇し、メッセージを送った。また、参加したファイナリストたちには、ワークショップやスキル開発セッション、参加者同士の交流イベントも提供された。
表彰式の開催に当たり、UN SDG Actionキャンペーンのグローバルディレクター、マリーナ·ポンティ氏は「本アワードは、SDGs達成に向けた可能性を示す重要な機会だ。希望とは受動的なものではなく、能動的な力であることを私たちに思い出させてくれる」と語った。そして「これこそが『Pact for the Future(未来のための協定)』の精神であり、世界の最も差し迫った課題に取り組むための多国間協力と連帯へのグローバルなコミットメントだと言える。共通の未来に向けて、私たち一人一人の役割がいかに重要であるかを改めて教えてくれる場である」とアワードの意義を示した。
表彰式のハイライト:世界のリーダーたちが示す希望
表彰式では、世界各国から集まったリーダーたちが、SDGsの実現に向けた思いを語った。その一部を紹介する。
イタリア外務省ガッティ氏ーーSDGs達成には若者の力が不可欠
イタリア外務·国際協力省開発協力局長のステファノ·ガッティ氏は、2年連続でローマでの開催を実現したUN SDG Action Awardsとイタリア外務省のパートナーシップに触れ、「私たちは常に“変化”を選択し続けなければならない」と語った。イタリアは2020年からUN SDG Actionキャンペーンと連携し、コミュニケーション、創造性、アートを活用した「Together for the SDGs」キャンペーンも展開している。「2030年までの目標達成には遅れが見られる中、すべての人々の願いを代表する17の目標の実現には、共に取り組むことが大変重要だ」と強調した。「世界には過去最大となる19億人の若者がいて、SDGsの達成には彼らの力が必要不可欠である」と説明し、最後に、ファイナリストたちの「コミットメント、勇気、そして創造性」をたたえた。
映画監督メイボディ氏ーー変化を起こすために共にストーリーを作ろう
数々の受賞歴を持つ映画監督兼プロデューサーであるファールード·メイボディ氏は「世界が戦争や自由の制限、偽情報による分断など深刻な課題に直面する中で、どのように今、この瞬間を祝福できるのか」と疑問を投げかけながら語り始めた。さらに、アラビア語で「人間」を意味する「インサーン」が「忘れてしまった者」を意味することに触れ、「なぜ私たちは忘れてしまうのか」と問いかけた。映画やテレビが娯楽や暗い現実の描写に偏りがちな中、13年前にビジネスの世界を離れ、変化を促すストーリーテリングの可能性を追求してきたというメイボディ氏。ケニアでの「Earthbound」シリーズ制作を通じて出会ったワンガリ·マータイ博士の森林保護活動からインスピレーションを受け、「怒りではなく、愛と献身の言葉で語られる時、真のインパクトが生まれる」と語った。「私たちは傍観者ではなく、明日を築く建築家である」として、思いやりと団結、そして困難に立ち向かう力を持って、新しい未来を切り開くストーリーを共に作り出そうと呼びかけた。
パラリンピアン スミス氏ーーインクルージョンとはみんなを同じにすることではなく、違いを認め大切にすること
パラリンピック選手であり障害者権利擁護活動家のジェシカ·スミス氏は、左腕に障害を持って生まれた自身の経験から、より受容的で寛容、包摂的な世界への希望を語った。スミス氏は「インクルージョンは生まれた場所や文化的背景によって異なり、みんなを同じにすることではなく、それぞれの違いを認め、大切にすること」が重要だと伝えた。約10年間パラリンピック選手として活躍してきた立場から「パラリンピックは単なるスポーツの祭典ではなく、課題に直面しながらも発揮される多様性と人間の可能性を示す場であり、障壁を取り除き、公衆の認識を変えていく重要な役割を果たしている」と語った。児童作家·講演者としても活動するスミス氏は「創造性がより包括的な世界を育む」と語り、今回のファイナリストたちをたたえた。最後に「互いを力づけ合う世界では、希望は現実となる」と締めくくった。
このほか、ナイジェリアの詩人アルハニスラム氏が詩の朗読を通じて思いを伝え、イタリアのシンガーソングライターノエミ氏がジョン·レノン氏の『イマジン』を歌唱した。キヤノンアンバサダーでありピュリッツァー賞を2度受賞したムハンマド·ムヘイセン氏や、欧州放送連合のミシェル·ロヴェレッリ氏など、多様な分野で活躍するリーダーたちが登壇し、SDGsの実現に向けた思いを共有した。
次回後編では「Creativity(創造性)」「Impact(インパクト)」「Changemaker(チェンジメーカー)」の3つのカテゴリーにノミネートされたプロジェクトと、それぞれの受賞作を紹介する。
文:遠竹智寿子
フリーランスライター/インプレス・サステナブルラボ 研究員
画像:UN SDG Action Awards Ceremony/Antonella Violante
編集:タテグミ
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