間もなく開幕、国連「未来サミット2024」:AI時代の国際協力とSDGsへの次なるステップ
2024年9月22日から23日まで、米国ニューヨークの国連本部で「未来サミット2024」が開催される。このサミットでは、各国首脳や専門家が一堂に会して持続可能な開発目標(SDGs)の次なるステップを議論し、国際協力の強化を図ることを目的としている。開催を控え、国連事務次長(政策担当)であり、サミットのリーダーを務めるガイ・ライダー氏がメディア向け説明会を行い、その重要性について語った。
130か国以上の国家元首が参加予定、未来サミットへの高い関心
冒頭、ライダー氏は未来サミット2024の準備状況について説明した。130以上の国家元首や政府首脳の出席が予定されており、サミットに先立つ「アクションデー」(9月20・21日)には7000以上のNGOをはじめ、学者や民間企業の代表者が参加登録を済ませている。ライダー氏は「世界中から非常に高い関心が寄せられている」と、その注目度の高さを示した。
続けて、今回のサミットが「国連システムや多国間主義の枠を超え、すべての加盟国にとって未来に直結する極めて重要な内容となっている」と説き、以下の2点を主要な目的として挙げた。
これらの改革は変化する世界情勢や増加した加盟国数に対応するため急務であると、ライダー氏は語った。
「未来のための協定」「グローバル・デジタル・コンパクト」「将来世代に関する宣言」――採択予定の3つの重要文書とは?
ライダー氏は、未来サミット2024で採択が予定されている3つの重要な文書について言及した。これらの文書は、テクノロジーと社会課題の関連性を踏まえ、国際社会が直面する課題に対する包括的な解決策を提供することを目指している。
「未来のための協定(Pact for the Future)」:5つの主要テーマに焦点を当てた行動志向の文書であり、国連事務総長の報告書「私たちの共通の課題」に基づいて提案された。各国に具体的な行動を求めるもので、幅広いステークホルダーの意見が反映されている。
「グローバル・デジタル・コンパクト(Global Digital Compact)」:デジタル技術の恩恵を最大限に活用して、デジタルデバイド(情報格差)を解消しSDGsの達成を支援するための国際的な枠組みである。このコンパクトでは、オープンでフリー、安全かつセキュアなデジタル環境を推進し、人権を保護することを目的としている。
「将来世代に関する宣言(Declaration on Future Generations)」:将来世代の権利と福祉を守り、持続可能な未来を築くための国際的なコミットメントを示す文書である。この宣言は、若者の参加拡大と、彼らの声を政策決定に反映させる仕組みの構築を目指している。
各国メディアからのさまざまな質疑――AI問題を議題にする重要性とは?
説明会後半では、ライダー氏の説明を受け、各国メディアからサミットの意義や実効性、具体的な取り組み内容と課題など、多岐にわたる質問が投げかけられた。メディアの関心が集中した主要なテーマから、いくつかの論点に絞って概要をまとめた。
1. 未来協定の重要性
未来サミットの文書は既存の約束の再確認にすぎないのではないかという指摘に対して、ライダー氏は「国際金融構造改革や国連安全保障理事会改革、AIガバナンス、将来世代へのコミットメントなど、過去に議論されなかった新しい提案が含まれている」と強調した。これらの提案が実質的な変革をもたらす可能性があるとし、また、採択の内容が実際の行動に結び着くかどうかがサミットの成功を左右するとも述べた。
2. AIに関するグローバルなガバナンスの重要性
AI問題を議題にすることの重要性についての質問には「AIの管理に関する専門家グループの設立や、AIの未来についての国際的な対話の促進など、具体的かつ重要な提案がある」(ライダー氏)とし、現在は、AIに関する国際的な取り組みに多くの国が十分に関与していない状況であるため、国連の役割を確立することが非常に重要であると説いた。
3. 国連安全保障理事会改革の進展と課題
安全保障理事会改革の進捗状況ついての質問に対し、ライダー氏は「画期的な進展があった」と述べ、アフリカに対する歴史的不正義の是正や、アジア太平洋地域・中南米の代表性の向上、さらに国連加盟国をより反映した理事会拡大などを挙げ、1960年代以来の大きな前進があると評価した。一方で、改革プロセスの複雑さも認めつつ、ドイツとナミビアが主導する集中的な交渉が進行中であり、近々新たな草案作成を目指しているとも述べた。
4. 気候変動と安全保障の関連性
気候変動と安全保障の関連付けの必要性に対して一部の国から疑問が上がっていることに対し、ライダー氏は「気候変動と安全保障の関係には意見の相違があり、気候変動が紛争や平和問題に影響を与えるという意見もある。安全保障理事会での議論は国によって立場が異なるため、各国の意見が影響する」と、加盟国間で意見の相違があることを示唆し、慎重な姿勢を示した。
5. 若者とジェンダー平等の重視
若者へ焦点を当てたことに対し、女性の過小代表性の問題はどうなっているのかという質問を受け、ライダー氏は、若者への注力は、若者が政治や公共生活から疎外されているという問題に対処するためであり、協定全体を通じてジェンダーの問題、女性と女児のエンパワーメント、人権問題が横断的に扱われていると説明した。さらに、未来サミット2024では若者主導のセッションが開かれる予定があることも補足された。
未来サミット2024では「未来のための協定」の採択がSDGsを含む国際課題の進展をどう加速させるかに注目が集まっている。メディアからは提案や計画に対するや懐疑的な質問が多く寄せられたが、ライダー氏は具体的な事例を挙げて前向きに応じ、全般的には順調な進行を強調していた。ライダー氏の言葉通り、このサミットの真の価値は採択された合意が実際の行動と成果にどれだけ結び付くかに懸かっている。持続可能な未来への実質的な前進に向けて、未来サミット2024の成果が期待される。
文:遠竹智寿子
フリーランスライター/インプレス・サステナブルラボ 研究員
トップ画像:iStock/mizoula
編集:タテグミ
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