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時間軸検索エンジン「TIMEMAP」で業界トレンドを知る方法
「インターネット白書ARCHIVES」では『インターネット白書』のバックナンバーPDFを公開しているが、その記事検索用に「TIMEMAP(タイムマップ)」という、時間軸に着目した検索エンジンを採用している。今回は、このちょっと個性的な検索エンジンの活用法を紹介する。
TIMEMAPとは
インターネット白書ARCHIVESでは、2020年4月から記事の検索エンジンにTIMEMAPを採用しており、ウェブサイトのトップページにある検索窓から利用できる。
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一般的なテキスト検索のつもりで使ってみたら、いきなり別サイトが開いて見たことのない画面が表示され面食らったユーザーもいるのではないだろうか。TIMEMAPは、テキスト全文検索としても使えるが、本来は情報を時間軸に沿って配置・視覚化するためのツールだ。
「関連度」に沿った結果を示すGoogle検索とは異なり、むしろGoogleトレンドなどの分析ツールに近い。TIMEMAPのコンセプトや使い方については以下をご覧いただくとして、ここではいくつかの活用例を示す。
2017年ごろから現れた「デジタルツイン」
『インターネット白書2022』のサブタイトルが「デジタルツイン実現への道」であるように、「デジタルツイン」は現在注目されているキーワードの一つだ。これをTIMEMAPで検索すると、以下のような結果が表示される(『インターネット白書2022』はまだアーカイブ化されていないため該当しない)。
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『インターネット白書』では、以下の2記事が該当する。結果画面での月の位置にばらつきがあるが、『インターネット白書』は年鑑なので、基本的には年単位で並ぶことになる。
一方、日刊メディアの「INTERNET Watch」では、2017年ごろの記事から「デジタルツイン」という単語が登場し始めている。さらに、画面下部のグラフ(緑色)を見ると、ここ1年間で記事数が急増している。
検索結果の記事タイトルはそれぞれの記事本体にリンクされているので、デジタルツインに対するトレンド調査と解説記事による理解が簡単にできるようになっている。
インターネット上の検索数や記事数としては、Google検索やGoogleトレンドで調べられる。TIMEMAPの場合は、発行サイクルの異なる専門メディアの視点でどのように注目しているかを把握できる。
「専門メディアの編集部」というフィルターを通した結果として捉えると、他の検索エンジンにはない別の価値が見いだせるのではないだろうか。
メディアごとの動向を比較
TIMEMAPでは3つのメディアを同時に検索できるが、『インターネットマガジン』は2006年までのデータしかなく、「デジタルツイン」を含む記事もない。そこで、メディアを「JPubb」に設定して企業のプレスリリースを対象にする。
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JPubbのグラフ(オレンジ色)を見ると2017年以前から存在し、2020年後半から急増していると分かる。JPubbのデータは2021年1月までしかないため、2021年以降は下がっているように見えるが、実際はさらに増えていると推測できる。
企業がアピールするタイミングと専門メディアが注目するタイミングの違いが見て取れて興味深いのではないだろうか。
専門メディアの編集部では、それぞれのテーマについて一次情報元である企業の動きと情報の受け手となる読者の反応を見ている。
先端テクノロジーが関わるビジネスではタイミングが特に重要で、参入が早すぎても遅すぎてもうまくいかないもの。世の中の反応や市場の温度感を知るために、TIMEMAPを活用していただきたい。
文:仲里 淳
インプレス・サステナブルラボ 研究員。フリーランスのライター/編集者として『インターネット白書』『SDGs白書』にも参加。
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インプレスホールディングスの研究組織であるインプレス・サステナブルラボでは「D for Good!」や「インターネット白書ARCHIVES」の共同運営のほか、年鑑書籍『SDGs白書』と『インターネット白書』の企画編集を行っています。どちらも紙書籍と電子書籍にて好評発売中です。