
国連「1.5℃の約束」気候キャンペーン、2025年は過去最多169メディアで始動――気候変動への具体的アクションを後押し
国連広報センター(UNIC)は、1月20日、気候変動対策を呼びかける「1.5℃の約束」キャンペーンの2025年の実施計画を発表した。2022年の開始以来、最多となる169のメディア・団体が参加を表明。実施期間は1月1日から12月31日までの通年とし、さらなる行動促進に向けた情報発信の強化を掲げている。また、2024年における本キャンペーンの「インパクト調査」の結果も発表され、認知者の意識の高まりや行動変化に関するデータが示された。
4年目を迎える「1.5℃の約束」キャンペーン
1.5℃の約束は、国連とSDGメディア・コンパクト加盟メディアが協力する取り組みである。世界の平均気温上昇を産業革命以前と比較して1.5℃に抑える必要性を広め、気候変動が生命や生活に及ぼす影響を伝えている。また、具体的な行動提案を通じて、個人や組織の行動変容を促すことを目指している。

参加メディア・団体数は年々増加を続けており、1年目の2022年に146からスタートして以降、2023年は156、2024年は165を数えた。4年目となる2025年は、これまでで最多の169のメディア・団体が参加を表明しており、今後も増える見込みである。
世界の平均気温は2年連続で最高更新
2023年、2024年と、2年連続で世界の平均気温が史上最高を更新し、2024年の世界の平均気温はすでに産業革命前よりも1.5℃を超えて上昇していることが確認されている。そうした中、2025年はパリ協定が採択されて10年の節目であり、各国は2035年までの次期NDC(自国が決定する貢献)として排出削減目標を中心とする気候計画を示さなければならない。排出量の大幅削減は、11月にブラジルで開催される国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)に向けて、世界的な重要課題となっている。
このような状況を踏まえ、2025年の同キャンペーンは通年での実施を決定した。特に、米国ニューヨークの国連本部で開催される国連総会ハイレベルウィークの開始に合わせた9月1日から、COP30(11月10~21日)の閉幕までを集中期間として設定する。
認知者の8割が関心、行動拡大が引き続きの課題
1.5℃の約束が人々の意識と行動にどのようなインパクトを与えたかを検証するため、博報堂DYホールディングスによる「インパクト調査」が実施され、その結果が同日発表された※1。
調査によると、2024年のキャンペーン期間中に「気温上昇を1.5℃に抑えるべき」という情報に接触した人は28.8%であり、その約8割が脱炭素への「関心が高まった」と回答している。

「気候危機」に関する情報接触の経路・媒体については、テレビが2023年の76.6%から2024年は65.5%と減少する一方、SNSは7.0%から18.1%へ、動画投稿サイトは8.9%から16.1%へと増加した。
調査の総括では「キャンペーン認知者ほど気候変動への危機感は高くなる一方、気候変動を抑制するための行動は前回から広がっておらず、危機感の醸成に加えて、生活者により身近で具体的な行動を提示することの重要性が見えてきた」との見解が示された※2。
※1:調査実施日:2024年10月15~16日、調査対象:全国15~79歳の男女計1442人
※2:キャンペーン認知者とは、1.5℃の約束の情報接触者
調査結果の詳細は、博報堂DYホールディングスのウェブページで確認できる。
2025年はさらなる行動の促進へ、SNSでの展開や専門家との連携を強化
国連広報センターと本キャンペーン参加メディア・団体は、こうした調査結果も踏まえ4年目のキャンペーンを強化・改善し、展開していく。その一環として、国連はSNS上での展開用に、気候変動の基本情報とアクションに関連するショート動画をシリーズで制作する計画である。
また、猛暑や豪雨といった気候危機への関心が高まるタイミングを捉えながら、気候科学の声、暮らしにおける工夫の提案、好事例なども積極的に発信する予定だ。夏の猛暑時期のSNSムーブメント「何もしないともっと暑くなる」についても、2024年に引き続き推進していく。
なお、『D for Good!』を運営するインプレス・サステナブルラボが所属するインプレスホールディングスは、2023年から本キャンペーンに参加している。インプレスグループのデジタルメディア『Impress Watch』では、シリーズ媒体の気候アクション関連記事をまとめたコーナーを設けているので、そちらもぜひご確認いただければと思う。
『D for Good!』でも引き続き、気候変動対策に関する情報を発信していく。
文:遠竹智寿子
フリーランスライター/インプレス・サステナブルラボ 研究員
トップ画像:iStockphoto.com/Khanchit Khirisutchalual
編集:タテグミ
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