『インプレスグループ統合報告書2024』公開――紙依存の軽減、GHGスコープ3開示などサステナビリティへの取り組みを紹介
2024年10月31日、インプレスホールディングスは『インプレスグループ統合報告書2024』を公開した。各社の事業内容を中心に、この1年間のさまざまな取り組みや今後の展望、社内の様子、そしてサステナビリティ実現に向けた取り組みが紹介されている。
非財務情報を伝えるための統合報告書
インプレスホールディングスが公開した『インプレスグループ統合報告書2024』は、インプレスグループ各社の事業活動や将来展望をステークホルダー向けに紹介するものだ。2023年12月に発行した2023年版に続いての発行となる。
企業が発行する報告書として有価証券報告書もあるが、こちらは財務情報が中心で、上場企業は公開が義務となっている。一方、統合報告書は、有価証券報告書だけでは表現しきれない企業活動や理念、業績に直接関係しないが重要な取り組みの紹介に重点が置かれることが一般的だ。
近年、SDGsやサステナビリティへの取り組みが重視されるようになったことで、それを伝えるために統合報告書を制作・公開する企業が増えている。
「D for Good!」とその運営を行うインプレス・サステナブルラボも、インプレスグループのサステナビリティ活動の一環だ。今回は『インプレスグループ統合報告書2024』の中から、SDGsやサステナビリティ情報に関する内容を紹介する。
紙依存を減らして環境へ配慮
「サステナビリティ実現に向けた取り組み」(p.26)では、社外に向けたサステナビリティ関連の取り組みを、「出版」「自然環境保全」「教育」といったカテゴリー(=社会との接点)ごとに紹介している。
【全体】
国連SDGメディア・コンパクトに加盟
【出版】
オンデマンド印刷を推進して無在庫生産モデルによる出版の実現
SDGs・ESG関連書籍の刊行
『SDGs白書』(年鑑)の発行
【自然環境保全】
森林認証紙・植物油インクへの切り替え推進
「日本山岳遺産基金」運営の持続可能な自然環境保全活動
オフィスビル管理会社と共同でグリーン電力導入
電子書籍比率の向上による紙の消費量削減
【教育】
コンテンツ資産(アーカイブ)の無償公開
書き損じ・使い残しはがきチャリティ
サステナビリティをテーマにした記事のウェブ公開
読書バリアフリーの推進
注目は、祖業でもある出版分野の取り組みだろう。電子書籍といった出版のデジタル化は、インプレスグループが業界に先駆けて進めてきたが、利便性だけでなく、環境保全や読書バリアフリーなどSDGsや社会的にも寄与する取り組みにもなっている。
これまで紙雑誌などで展開していたメディアのウェブ化・デジタル化やデジタルファースト型出版のPOD(プリント・オン・デマンド)により、紙媒体への依存度を下げ、環境に配慮した出版を推し進めている。
「インプレスグループのPOD実績と出版全体(紙・電子)との比較」(p.25)を見ると、デジタル(電子)やPODの売り上げは、全体の比率はまだ小さいものの、直近3年間で着実に成長していることが分かる。
GHGプロトコル「スコープ3基準」への対応
「グループのサステナビリティ」(p.76)では、グループ内での取り組みとして、2052年に向けたサステナビリティ重点テーマとESGハイライトを紹介している(2022年に中期経営計画として発表されたもの)。
今回の新たな試みとして、GHGプロトコル(温室効果ガス排出量算定・報告における国際基準)のサプライチェーン全体を対象とするスコープ3基準への対応がある(2023年版ではスコープ2までの対応)。スコープ3対応として、「輸送配送」(カテゴリ4、9)、「事業活動廃棄物」(カテゴリ5)、「出張」や「出勤」(カテゴリ6、7)などを算定している。
その他にも、サステナビリティに関するグループの環境方針、人権方針、パートナー行動規範が掲載されている。詳細は報告書をご覧いただきたい。
文:仲里 淳
インプレス・サステナブルラボ 研究員。フリーランスのライター/編集者として『インターネット白書』『SDGs白書』にも参加。
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インプレスホールディングスの研究組織であるインプレス・サステナブルラボでは「D for Good!」や「インターネット白書ARCHIVES」の共同運営のほか、年鑑書籍『SDGs白書』と『インターネット白書』の企画編集を行っています。どちらも紙書籍と電子書籍にて好評発売中です。