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SDGsの認知は一段落、サステナブルな行動は年代で違いも――企業と消費者への各種調査結果から

2030年のSDGs目標年に向けて後半戦に入った2024年。2023年のSDGサミットで国連のアントニオ・グテーレス事務総長は「SDGs達成における現在の状況は非常に厳しい」と警鐘を鳴らしたが、今、企業および消費者はSDGsに関してどのような「意識」を持ち、どのような「行動」をしているのか。最近発表された調査結果を見てみた。

企業の意識と行動~SDGsの取り組みに積極的な大企業

帝国データバンクは7月25日、SDGsに関する企業の見解についての調査結果を発表した。 

SDGsに積極的な企業は、2020年の調査開始以降、最高水準となる54.5%となった。対して、SDGsは認知しているものの取り組んでいない企業は40.9%で、積極的な企業とは10%以上の差があった。

出所:帝国データバンク「SDGsに関する企業の意識調査(2024年)」

これを企業別に見ると、SDGsに積極的なのは大企業が71.8%、中小企業は51.2%(うち小規模企業は42.9%)と、規模が小さくなるに従って意識が低くなる傾向があることが分かった。

SDGsの17目標で現在力を入れているものと今後力を入れたいものについては、いずれも目標8「働きがいも経済成長も」が最も高く、次が目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」だった。なお、現在力を入れている目標では、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」が昨年比2.4ポイント増の14.6%と、大幅に上昇した。

SDGsに取り組んでいる企業の7割は、企業イメージや従業員のモチベーションの向上といった効果を実感している。採用活動でプラスとなったり新商品の開発につながったりしたという回答もあり、報告書では「SDGsによる社会課題の解決と企業の成長は両立できることが示唆される」としている。一方、特に中小企業からは「人手不足など目先の問題で手いっぱい」「零細企業での取り組み方が分からない」といった声も上がっている。

また、SDGsとの関連が深いDEI(※1)の取り組みについては4社に1社が積極的であることが分かった。しかし、DEIという「言葉も知らない」との回答も23.6%あり、SDGsの0.5%に比べると認知度はかなり低い。こちらも、企業規模が小さいほど積極的に取り組む割合が低い傾向が見られた。


※1 DEIは、Diversity(ダイバーシティ、多様性)、Equity(エクイティ、公平性)、Inclusion(インクルージョン、包括性)の頭文字を取ったもの。


消費者の意識と行動① 意識と行動は拡大傾向

PwC Japanグループは7月30日、サステナビリティに関する消費者調査の結果を発表した。

サステナビリティに対する「意識」は、昨年調査の1.5倍に拡大した。これに伴い、例えば「消費期限の近い食品を買う」といった行動は昨年調査からほぼ倍増(15%から28%)しているなど、サステナブルな「行動」を実践している消費者も増加している。一方で、省エネ家電や電気自動車の購入といったサステナブルな消費は横ばいだった。

また、サステナブルな行動が「環境・社会のため」に実践されるのに対し、サステナブルな消費はそれ以外の理由、つまり節約や利便性、健康などの機能的価値や、かっこよさや憧れなどの情緒的価値を見いだしている人が多いことが分かった。

出所:PwCサステナビリティ、「サステナビリティに関する消費者調査2023」

消費者の意識と行動② この1年の中古品の購入率はZ世代で高い

フリマサービスを提供しているメルカリはサステナビリティ関連の意識・行動変容に関する調査を毎年行っており、今年も8月8日に結果を発表した。5回目となる今回は、中古品に関する意識や購買行動がテーマである。 

「意識」については「長持ちする商品を購入する」との回答が83.3%でトップだった。Z世代でもこの回答は77.8%でトップだったが、「口コミを調べてから購入する」「品質よりも価格を重視する」などは全体よりも多い傾向にあった。

出所:メルカリ、「2024年度『サステナビリティ関連の意識・行動変容』に関する調査」

「行動」については、「直近1年間に中古品の購入経験がある」と回答した人はZ世代で71.1%であり、全体(56.8%)よりも15.3ポイント高かった。不要品の処分方法は「ごみとして処分している」人が73.6%と依然として最も多かったが、「家族・友人・知人へ譲っている」「フリマアプリやインターネットオークション、リユースショップ等で販売している」との回答はZ世代で高い結果となった。

消費者の意識と行動③ 買い物よりも社会・環境のためになる「行動」率が上昇

博報堂は8月23日、サステナブルな購買行動に関する調査結果を発表した。

SDGsの「内容を知っている」人は51.7%で、昨年の55.7%から4ポイント減少した。これに「内容は知らないが名前を聞いたことがある」までを含めると80.7%で、昨年の83.3%から2.6ポイント減少した。

SDGsの17目標の関心度のトップは目標14「海の豊かさを守ろう」で、次いで目標3「すべての人に健康と福祉を」、目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、目標15「陸の豊かさも守ろう」と続いた。昨年と一昨年の調査でトップだった目標3はコロナ禍を経てスコアが減少したが、海や陸の豊かさといった生物多様性や、クリーンエネルギーに関連する目標への関心は引き続き高い。

買い物に際し社会・環境に与える影響をどの程度「意識」しているか(社会購買実践度)について、平均値は10点満点中5.12点となり過去最高値をマークした昨年の5.15点から微減に転じた。一方、社会・環境のためになる「行動」をどの程度行っているか(社会行動実践度)については、昨年の5.15点から5.28点に上昇した。これは、物価高などの影響で買い物よりも日々の行動の中でサステナブルを実践しようとする人が増えたためと同社は推察している。

年代別で見ると「売り上げの一部が環境や社会のために寄付される商品を買う」は昨年から3ポイント上昇の4割超だったが、10~20代で見るとおよそ5割に上っている。総じて、サステナブルに対する意識・行動は10代と70代で高めであることも分かった。しかし一方で、10代の過半数が「社会や環境問題に取り組むことに疲れを感じる」と回答するなど“エコ疲れ”も感じているようだ。

出所:博報堂、「『生活者のサステナブル購買行動調査2024』レポート」


文:佐々木 三奈
フリーランスライター/校正者、がん患者・経験者の運動を支援する「まめっつ」メンバー。『SDGs白書』『インターネット白書』の編集にも参加。

トップ画像:Khanchit Khirisutchalual
編集:タテグミ

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