2026年までに4人に1人が「メタバース」で1日1時間以上を過ごすようになる――Gartner予測
ガートナージャパン(以下Gartner)は、2月9日、メタバースに関する展望を発表し、2026年までに全人口の4人に1人が、仕事、ショッピング、教育、ソーシャルやエンターテインメントなどにおいて、1日1時間以上をメタバースで過ごすようになると予測した。Gartnerが定義するメタバースとはどのようなものか。
新たなデジタルエコノミーになる
Gartnerは、メタバースを「仮想的に拡張された物理的現実とデジタル化された現実の融合によって創り出される集合的な仮想共有空間」と定義する。このメタバースは、継続的な没入感(イマーシブエクスペリエンス)を提供し、タブレット端末からヘッドマウントディスプレーまで、デバイスに依存することなく、さまざまなデバイスからアクセスが可能という。
さらに、メタバースは単一のベンダーが所有するものではなく、デジタル通貨とNFT(非代替性トークン)によって実現される新たなデジタルエコノミーになると予想している。
アナリストでバイスプレジデントのマーティ・レズニック氏は、「ベンダーはすでに、ユーザーがデジタル化された世界で生活を体験するための空間やサービスを構築している」とし、「仮想クラスルームへの出席から、デジタル空間上の土地の購入、仮想住宅の建築に至るまで、これらの活動は現在、別々の環境で行われているが、将来的には、さまざまなテクノロジーやエクスペリエンスにまたがる単一の環境、つまりはメタバースの中で行われるようになるだろう」と述べている。
デジタルビジネスからメタバースビジネスへ
メタバースが働き方に影響を及ぼすとの予測もしている。企業は、没入型テクノロジーを利用した仮想オフィス環境を導入することで、従業員により良いエンゲージメント、コラボレーション、つながりの機会の提供が可能になるという。また、メタバースがフレームワークを提供するため、企業はそのための独自のインフラを構築する必要はない。さらに、この1年半の間に人気を得た仮想イベントについては、今まで以上にコラボレーティブで没入感のあるつながりの機会やワークショップが提供されるだろうとみている。
「デジタルビジネスからメタバースビジネスへの移行によって、自社のビジネスモデルをこれまでとは全く違うやり方で拡大・強化できるようになる。2026年までに、世界の組織の30%がメタバースに対応した製品やサービスを持つようになるだろう」(レズニック氏)
多額の投資を判断するには時期尚早、競争力を高めるための準備を
一方でGartnerは、「メタバーステクノロジーの採用は始まったばかりで部分的である」としており、「特定のメタバースへの多額の投資については注意を促している」との見解も示す。「どの投資が長期的に有効であるかを判断するには時期尚早である。プロダクトマネジャーは、競争力を高めるためにメタバースを学習、検証、準備するための時間を割くべきである」(レズニック氏)
「アバターで参加する空間」と単純に捉えるべきではない
メタバースが何であるかについて、アナリストでディスティングイッシュトバイスプレジデントの亦賀忠明氏は次のような説明を添えている。
Gartnerはメタバースを単なるネットのはやりとしてではなく、インターネットの次に来るものと捉えている。メタバースへの参入においては、先走ることなく、5年、10年先を見据えたメタバースビジネスのロードマップが今から必要と言えそうだ。
2月7日発刊の『インターネット白書2022』では、2022年に注目すべきキーワードの一つとして「XR/メタバース」を挙げている。また、筆者も本編の第1部「テクノロジーとプラットフォーム」の一節にて、「メタバースはインターネット次章となるか」と題し、なぜ今メタバースなのかをネット業界の歴史や企業動向と共に考察を寄稿している。
文:遠竹智寿子
フリーランスライター/インプレス・サステナブルラボ 研究員
トップ画像:iStock.com/lerbank
編集:タテグミ
プレスリリース(ガートナージャパン,2022年2月9日)
+++
インプレスホールディングスの研究組織であるインプレス・サステナブルラボでは「D for Good!」や「インターネット白書ARCHIVES」の共同運営のほか、年鑑書籍『SDGs白書』と『インターネット白書』の企画編集を行っています。どちらも紙書籍と電子書籍にて好評発売中です。