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【IGF 2023直前企画】『インターネット白書』で振り返るインターネットガバナンスの動向とIGFの歴史
「インターネット・ガバナンス・フォーラム京都2023(IGF 2023)」の参加登録期限は
10月4日午前8時59分(日本時間)まで(※10月6日現在も参加登録が可能)です。参加料は無料で、オンライン参加も可能です。
※10月10日追記:現地での参加登録も可能です(登録にはパスポート、運転免許証、マイナンバーカード等の政府発行の写真付き身分証明書が必要です)。
10月8日から京都で開催される「IGF 2023」に合わせ、インターネットガバナンスの最新動向をまとめた『インターネット白書2023』IGF 2023開催記念特別ダイジェスト版PDFがインターネット協会より公開された。改めて、これまで『インターネット白書』が伝えてきた関連記事を紹介する。
『インターネット白書2023』IGF 2023開催記念特別ダイジェスト版のPDF公開
インターネット協会では、IGF 2023の日本開催を記念して、『インターネット白書2023』掲載のIGFおよびインターネットガバナンス関連記事をまとめた特別ダイジェスト版PDFを公開している。
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以下の3つの記事を収録しており、インターネットガバナンスの最新状況やIGFの開催意義などが理解できる内容となっている。誰でもダウンロード・閲覧ができるので、IGFを知るための参考情報としてぜひご覧いただきたい。
巻頭言「マルチステークホルダーモデルが創り出す新しい社会に期待」
江崎 浩 日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC) 理事長インターネットガバナンスの動向
前村 昌紀 日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC) 政策主幹インターネットガバナンスフォーラム2023年会議に向けて
木下 剛 インターネット協会 副理事長
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(木下 剛 インターネット協会 副理事長)
「『インターネット白書2023』IGF 2023開催記念特別ダイジェスト版」より
また、日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)では、以前からインターネットガバナンスに関する以下のウェブページを公開している。こちらも参考になるだろう。
インターネット白書ARCHIVESで振り返るインターネットガバナンスの動向とIGFの歴史
『インターネット白書』では、刊行以来、インターネットに関する重要トピックの1つとして、インターネットガバナンスの動向を伝えてきた。IGFの発足は2005年だが、それ以前からもインターネットのガバナンスに関する議論は存在していた。「インターネット白書ARCHIVES」から、その経緯や当時の状況を知ることができる記事を紹介する。
※各筆者の所属や肩書、組織名は掲載当時のものです
※リンク先はインターネット白書ARCHIVESのPDFファイルです
[2013~2022年]インターネットガバナンスの動向
『インターネット白書2013-2014』から『インターネット白書2022』では、JPNICの前村昌紀氏による「インターネットガバナンスの動向」として報じてきた。
インターネットガバナンスの動向(インターネット白書2022)
現実世界とは異なる新しい問題に対処し、合意を形成することがインターネット運営の本質。WHOISの次世代化やDNS Abuseの議論、IPアドレスの不正利用、IGFまで、この1年の動きからインターネットガバナンスを理解する。インターネットガバナンスの動向(インターネット白書2021)
インターネットのガバナンスに関する議論が活気を帯びている。ルートサーバーシステムに対する新たなガバナンス機構の議論をはじめ、デジタル脅威に有効なIGFのあり方や2023年IGF日本開催に注目が集まっている。インターネットガバナンスの動向(インターネット白書2019)
「of」のガバナンスは、IANAのコミュニティ自治体制が円滑に機能。「on」のガバナンスでは、海賊版対策に関するブロッキング法制化是非が議論の的に。インターネットガバナンスの動向(インターネット白書2018)
インターネット資源管理体制の変更を経てガバナンスでは、サイバーセキュリティ対策が課題の中心。グローバル化で幅広い関係者間による熟議がいっそう肝要となる。インターネットガバナンスの動向(インターネット白書2017)
2016 年10 月1 日、IANA 契約の満了に伴いインターネットコミュニティーに監督権限が移管され、歴史的な第一歩が踏み出された。インターネットガバナンスの動向(インターネット白書2016)
「IANA監督権限移管」は最終局面を迎えつつある一方、大きな注目を集めた「WSIS+10レビュー」プロセスは非政府ステークホルダー関与の重要性を盛り込んで終了。インターネットガバナンスの動向(インターネット白書2015)
インターネットガバナンスの原則について世界中の関係者がまとめた「NETmundial会合」と、IANAに対して米国政府が持っていた監督権限の移管に向けた動きという2つの大きな出来事があった。国内でも民間主導のルール策定の重要性が認識されつつある。インターネットガバナンスの動向(インターネット白書2013-2014)
インターネットガバナンスへの「政府関与のあり方」をめぐり大議論が続いている。関連10団体は米NSAの個人情報収集をきっかけに、新たな体制を模索し始めた。
[2005~2006年]IGF以前のインターネットガバナンスの動向
『インターネット白書2005』と『インターネット白書2006』では、ハイパーネットワーク社会研究所の会津泉氏による「インターネットガバナンスの最新動向」として、関連情報を報じてきた。
2005~2006年はIGFの発足前後にあたり、世界情報社会サミット(WSIS)での議論やインターネットガバナンス・ワーキンググループ(WGIG)の発足からIGF誕生までの経緯をうかがい知ることができる。
インターネットガバナンスの最新動向(インターネット白書2006)
政府、民間企業、市民社会代表の協議の場を国連に設置
政府関与の強化かオープンな議論か問われるガバナンスのあり方インターネットガバナンスの最新動向(インターネット白書2005)
アメリカ支配への反発が進むICANNの体制
21世紀情報社会の主導権をめぐり、新興国と先進国の競争が激化
[1998~1999年]インターネットガバナンスの原点
最後に紹介するのは、『インターネット白書1998』と『インターネット白書1999』に掲載した日本インターネット協会の高橋徹氏(故人)による記事だ。当時はインターネットの人口普及率が10%程度に達した頃だが、そこで挙げられているガバナンスに関する問題は、現在にも通じるものがある。
また、インターネットガバナンスを考える上で、マルチステークホルダーであることの重要性や「なぜすべてのインターネットユーザーが考えるべき問題なのか」も理解できるだろう。
はじめに インターネット社会の成熟に向かって(インターネット白書1999)
インターネットユーザー人口が全人口の10%に到達した現在、この現実の社会に存在するあらゆる課題が、インターネット社会にも存在するようになったと考えられる。
<中略:筆者>
次世代インターネットの在り様について、多くの場所で議論が継続され、新たなインターネットの構造が模索されている。そのなかには、この3年間にわたって論議されてきたインターネットガバナンスの大きな課題がある。
はじめに(インターネット白書1998)
1996年からインターネットコミュニティで取り上げられてきたドメイン問題を発端にして、インターネットガバナンス(インターネットの統治・管理)はどうあるべきかという大問題が、正面から取り組まれるべき課題として浮上してきたと言える。
インターネットが成り立つ根拠を、私たちはすでに与えられた権限であるかのように考えているのではないか。誰がどことどのように契約してインターネットは成立しているのか。エンドユーザーはなにも知らずにインターネットを使用しているが、そこには大きな落とし穴があるのではないだろうか。プロバイダーは、自身のサービスが成り立つ根拠を、どのように把握しているのだろうか。
『インターネット白書』では、これまで紹介してきたもの以外にも「ドメイン名の動向」「IPアドレス利用の動向」「DNSの動向」といった、インターネットガバナンスに関する記事を掲載している。IGFに参加する方には、予習として、それらもご活用いただきたい。
文:仲里 淳
インプレス・サステナブルラボ 研究員。フリーランスのライター/編集者として『インターネット白書』『SDGs白書』にも参加。
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インプレスホールディングスの研究組織であるインプレス・サステナブルラボでは「D for Good!」や「インターネット白書ARCHIVES」の共同運営のほか、年鑑書籍『SDGs白書』と『インターネット白書』の企画編集を行っています。どちらも紙書籍と電子書籍にて好評発売中です。