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国連でグローバル・デジタル・コンパクトが採択――デジタル協力によりSDGsを支援

2024年9月22~23日に、米国ニューヨークの国連本部で「未来サミット2024」が開催された。世界160か国以上が参加したこのサミットでは、AIやインターネットを含むデジタル技術の扱いについての協定「グローバル・デジタル・コンパクト」も採択された。

「未来のための協定」および「将来世代に関する宣言」とともに採択

未来サミット2024では、「未来のための協定(Pact for the Future)」とそれに付属する「グローバル・デジタル・コンパクト(GDC:Global Digital Compact)」「将来世代に関する宣言(Declaration on Future Generations)」が採択された。それぞれの内容については、国連のウェブサイトでPDF(英語)が公開されている

なお、サミットの趣旨や各協定・宣言の概要については以下の記事でまとめている。

すべての人に開かれた自由で安全なデジタルの未来のために

グローバル・デジタル・コンパクトには、次の5つの目標とともに、それを実現するための原則、コミットメントやアクション、そして今後の計画が明記されている。

  1. すべてのデジタル格差を解消し、持続可能な開発目標の達成を加速する。

  2. すべての人々がデジタル経済に参加し、その恩恵を受けられるようにする。

  3. 人権を尊重し、保護し、促進する、包括的でオープン、安全で安心なデジタル空間を育む。

  4. 責任ある、公平で相互運用可能なデータ・ガバナンス・アプローチを推進する。

  5. 人類の利益のために、AIの国際ガバナンスを強化する。

5つの目標は、どれも正論で納得がいくものだろう。ただし、それを確実に実現するには、具体的かつ継続的な取り組みと努力が不可欠になる。

これまで『D for Good!』と『インターネット白書』では、グローバル・デジタル・コンパクトをデジタル技術分野の重要トピックとして、その背景や検討過程を取り上げてきた。

あらためて背景を説明すると、グローバル・デジタル・コンパクトは最初、2021年9月の国連報告書「私たちの共通の課題(Our Common Agenda)」において、12のコミットメントの一つとして示された。これはインターネットを含むデジタル技術の力と可能性を、SDGs達成のために活用しようという提案で、インターネット・ガバナンス・フォーラム(IGF)などで議論されてきた。さまざまな主義や思惑を持つ国々から、どれだけの賛同を集められるかが注目されていたが、草案から3つのリビジョンを経て、今回の採択に至った。

今後日本でも具体的な取り組みが始まる

国連事務総長のアントニオ・グテーレス氏(トップ画像写真)は、未来サミット2024の開会あいさつで、グローバル・デジタル・コンパクトについて次のように触れた。

グローバル・デジタル・コンパクトは、技術はすべての人に利益をもたらすべきという原則に基づいている。
これには、AIの国際的ガバナンスに関して初となる、真の普遍的合意が含まれている。
政府に、AIに関する独立した国際科学パネルを設立し、国連内でAIのガバナンスに関する世界的な対話を始めるよう義務付けている。
グローバル・デジタル・コンパクトは、一貫した測定に不可欠な相互運用性標準の合意に達するための初の共同努力を表している。
また、開発途上国におけるAIに関する能力を構築するためのネットワークとパートナーシップをサポートしている。

Secretary-General's remarks at the Opening Segment of the Summit of the Future Plenary
※英語テキストをもとに編集部で翻訳

SDGsの取り組みと同じように、グローバル・デジタル・コンパクトの取り組みも国や地域ごとに適した形で調整・実施されることになる。その進捗度を科学的に計測し、改善・見直しを続けながら次のアクションにつなげる。国境を超えて広がるデジタルサービスやデータなので、世界各国が足並みをそろえ、連動して取り組む必要がある。まさに、「デジタル版のSDGs」と言ってもよいだろう。

今後、政府を中心に日本国内でも具体的な取り組みとして、公共機関、民間企業、業界団体、学術組織、技術コミュニティ、一般ユーザーなどに対して、活動参加の要請が始まると予想される。「仕様」が決まったので、次は「実装」というわけだ。すでに進捗の確認・振り返りとして、2025年の「WSIS+20(世界情報社会サミット20周年)」でのレビュー、2027年の「第82回国連総会」でのハイレベルレビューが計画されている。

自社のビジネスにどう関わってくるのか、また、どのように関わることができるか、特にデジタル関連分野の企業は、その動向を注視しておくとよいだろう。『D for Good!』では今後も引き続き、SDGsやインターネットガバナンスの話題とともに、グローバル・デジタル・コンパクトの動向を伝えていく。



文:仲里 淳
インプレス・サステナブルラボ 研究員。フリーランスのライター/編集者として『インターネット白書』『SDGs白書』にも参加。

トップ画像:UN Photo/Loey Felipe

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インプレスホールディングスの研究組織であるインプレス・サステナブルラボでは「D for Good!」や「インターネット白書ARCHIVES 」の共同運営のほか、年鑑書籍『SDGs白書』と『インターネット白書』の企画編集を行っています。どちらも紙書籍と電子書籍にて好評発売中です。