北の国から
また訃報が届いた。
田中邦衛である。
いずれ書くつもりだった。
フジテレビのテレビドラマ
「北の国から」主演で、
五郎、の役で長く親しまれた。
本当に、五郎がそのまま
田中邦衛になったような、
不思議な錯覚さえ覚えてしまう。
1981年、富良野のまるで原風景に、
さだまさしの唄。
このドラマの息子、純役が、
僕と同い年の吉岡秀隆で、
10歳の役を11歳で演じていた。
この純くんが、僕にそっくりなのだ。
外見や仕種はもちろん、行動や感情まで。
11歳だった僕は、北海道の生活に馴染めず、
もがき苦しみ苛立ち、自責の念に追われた。
よくもここまで11歳の自分、
ドラマの設定では10歳、の心の動きを
把握している大人に、驚いたものだった。
原作、脚本は倉本聰である。
いつだっただろうか、富良野に初めて訪れた時、
懐かしい、故郷に帰ったような気持ちだった。
「麓郷の森」に足を踏み入れた時、
ただいま、と小さく呟いた。
こんなドラマは生涯で二度と、
僕の前に現れないだろう。
吉岡秀隆は、もうひとりの僕だった。