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『ツァラトゥストラはかく語りき』

ニーチェの本ではなく、R.シュトラウスが1896年に作曲した交響詩。
キューブリック監督『2001年宇宙の旅』(1968年)に起用された冒頭は、あまりにも有名だ。

平日の仕事終わりに、サントリーホールで疲れを癒やしたいと思っていた。
ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲がある。読響だ。いい組み合わせだと思った。指揮者もソリストも知らない外国人だったのも、先入観なく聴けそうだ。
カラヤン広場の奥にあるいつもの店のカウンターで、ワインを一杯。メールをチェックして、機内モードに。

一曲目は、ワーグナーの序曲『リエンツィ』。1840年、パリで書き上げたそうだ。聴いたことない。そもそもワーグナーが好きではなかった。僕はブラームスが好きだからだ。そしてやっぱり想像した通り、ドラマティックで力強い、いかにもワーグナーだった。
二曲目がベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲だ。傑作の森、1806年の作曲。編成が少しコンパクトになる。チェロは6人。よく聴く旋律はいい。第二楽章で、眠くなった。席のせいだろうか。チェロがよく見える左の2階席。当たりだが、ヴァイオリンソロがどうにも退屈だった。背中しか見えない。ワーグナーの後だったからだろうか。音の厚みが物足りなく思えてしまった。
気を取り直して、後半の『ツァラトゥストラはかく語りき』だ。ニーチェが「神は死んだ」と発表したのが1885年で、1896年に作曲された。また大編成。第9部で約33分。飽きなかった。これだけいろんな楽器があれば、見てるだけで楽しい。ただ残念ながら全体としては、弦楽器の存在感は薄い。重奏に聴かせる一瞬はあるのだが、やはり弱い。刻みは違う楽器にさえ見えた。

1806年ベートーヴェン、1840年ワーグナー、1896年R.シュトラウス。19世紀の音楽の変化、潮流を感じた。革命から、ドイツ帝国へ。19世紀末激動の中欧は、まさに『ツァラトゥストラはかく語りき』の様相を呈していたのだろう。

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