槇村さとる
ジャズダンスを始めた頃、誰かが教えてくれた。
1982年にマーガレットコミックスから全4巻の、
「ダンシング・ゼネレーション」。
さらに続編「N★Yバード」が、83年に全3巻。
この漫画家は、よくぞここまで、
踊る人の気持ちがわかるものだと驚いた。
当時流行っていたブレイクダンスは、
さらにヒップホップやハウス、ポップなど、
まさに発展しつつあるところだった。
それが当時は男らしい、
最先端の踊りだったわけだ。
男性のジャズダンサーは、
それくらい日本では希少だった。
僕は中学高校で器械体操部だったから、
身体の線を見せることに、
抵抗があまりなかったせいかもしれない。
踊っていると、不思議なことに、
自分が男とか、どうでもよくなる。
少しでも意識したなら、
とても踊れたものではない。
レオタードの女性をリフトする時も、
自分が男性であるとか、それどころではないのだ。
どうリフトすれば優雅にできるか、
そして相手に信頼してもらえるか。
力やタイミング、速さを呼吸で合わせる。
爪先や指先にまで、神経を使いながらだ。
男性が男性としてではなく、
女性が女性としてではなく、
心で踊っているからだと思う。
うまく言えないが、愛情を表現するのに、
中途半端に愛情があると難しい。
愛情を創るには、男女の愛情より友情が大事だった。
そして愛とは信頼なのだと、踊りから学んだ気がする。
それが、槇村さとるにはわかるようだった。
バレエの見せ場は、やはりパ・ドゥ・ドゥなのだ。
フィギュアスケートを題材にした、
槇村さとるの名作は「愛のアランフェス」と、
続編の「白のファルーカ」はアイスダンスだ。
この時すでに僕は、ファルーカの虜になっていた。
いつかファルーカを踊る日を、夢見て踊っていたのだ。
身体で表現することは、楽しかった。
心が、解放される瞬間だった。