洋画
また少し時計を巻き戻したい。
自分は本当に親の背中を見て育ったと思う。
今思えば当たり前の話だが、
親と一緒によくテレビを観ていた。
だいたい夜9時からは映画の時間だ。
それも必ずと言っていいほど洋画である。
今は金曜ロードショーしかない。
その日テレが金曜に移す前の、
水曜ロードショーがよかった。
水野晴郎が解説者で、
「いやあ、映画って本当にいいですね」
で番組を締め括る。
しかし実は当時、日曜洋画劇場が、
圧倒的存在感を放っていた。
解説者、淀川長治の名文句。
「それではまた、
来週のこの時間にお会いしましょう、
さよなら、さよなら、さよなら」
テレ朝である。解説がまたいいのだ。
西部劇やミュージカルが多かった。
ジェームズ・ボンドや
チャールズ・チャップリンも、そこで出会った。
オードリー・ヘップバーンより、
イングリッド・バーグマンのほうが好きなどと、
今思えばずいぶんマセたガキである。
だから僕が今も大好きな映画の数々は、
初めて遭遇したのがいつだったか、
残念ながらはっきりしない。
はっきりしているのは、
夜9時から父親と映画を観るのを
楽しみにしていたことだった。
今も実家ではテレビ正面の特等席で、
父親は映画を楽しんでいるだろう。
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