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島津奔る

いつ書くか迷ったが、
やはり出遭いを優先する。

池宮彰一郎。
もともと彼は、映画の脚本家だった。

69歳で執筆した処女作「四十七人の刺客」が、
92年に新田次郎文学賞を受賞。
94年、市川崑監督、高倉健主演で映画化された。

彼の著作を初めて読んだのは、
1998年発表の「島津奔る」だ。

当時仕事で知り合った、
出版社の友人が薦めてくれた。

司馬遼太郎と池波正太郎以外で、
なかなか次は、という作家が現れない。
もちろんそんな簡単ではないだろう。

これが、歴史小説ファンの間で話題になり、
柴田錬三郎賞を受賞する。

戦の天才と言われた島津義弘に焦点を当て、
鬼島津の筆致は迫力があった。

続く1999年に発表した「遁げろ家康」も、
家康の英雄像を打ち砕く、痛快なロマンだった。

ちょっとペースが早いな、とは思った。

司馬遼太郎を誰よりも崇拝していたそうだ。
だからこそ起きた類似問題。

80歳近くの彼は責められた。
編集者だっているだろうに。

もちろん類似を擁護はしないが、
なんとかならなかったものか。

気づいたら、絶版になっていた。
僕の本棚には、もちろん捨てられずに今もある。

最近は売れない本は、すぐ絶版にする。
Kindleは在庫を抱えなくていい、
出版社にとって魔力に違いない。

だが売れないと絶版とは、
なんと余裕のない世の中か。
文芸とはそういうものだろうか。

出版社には、職人のような、
勘と真心のある編集者が多い。
経験が、物を言う。

だから僕は、出会った本が捨てられないのだ。
これはこれで、困ったものである。

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