藤沢周平
「蟬しぐれ」が代表作との誉れが高い。
山形県出身の時代小説作家だ。
物語によく登場する架空の海坂藩は、
出身地の庄内藩がモデルと言われている。
「蟬しぐれ」は山形新聞夕刊に連載され、
1988年に文藝春秋より刊行された。
2002年に中3国語の教科書に採用される。
2003年にNHK「金曜時代劇」ドラマ化、
2005年に黒土三男監督、脚本で映画化された。
この黒土三男は、ドラマの脚本も書いている。
藤沢周平は1997年に亡くなっており、
2000年代に入って続々と映画化されていく。
2002年に「たそがれ清兵衛」
2006年に「武士の一分」などだ。
この「武士の一分」は、
山田洋次監督、木村拓哉主演で大ヒット。
興行収入は当時、
松竹映画の歴代最高記録を更新した。
僕は当時まだ、著名な武将や志士たちの、
ドラマティックな活躍に夢中だった。
藤沢周平で珍しい、歴史小説は「逆軍の旗」。
明智光秀の本能寺直前を描いた短編だ。
光秀の心情が、紙面から滲み出ていた。
このあとがきに、著者が書いている。
たまに、あったことを書きたくなる、
一種の生理的欲求のようなもの、らしい。
これがまた静かに、人間を探っているのだ。
ドラマティックな展開がない。
それでいて、ひしひしと迫ってくる。
歳を重ねると、味わい深くなるのだった。
人間と同じではないか。