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真田太平記

池波正太郎といえば、
「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」を
思い浮かべる人は、大分減ったに違いない。

大衆娯楽時代小説で、
右に出る者はまずいないだろう。

父親の書棚には、ずらりと並んでいたが、
どうもテレビドラマ化が多く、
そのいかにも時代劇な感じが好きになれず、
当時は読む気にならなかった。

唯一の例外が、「真田太平記」だ。

週刊朝日に7年間連載された超大作。
87年から新潮文庫で全12巻発刊されていた。

司馬遼太郎で「関ヶ原」を読んで、
真田家に興味を持ったからである。

信之と信繁が兄弟ながら、
関ヶ原で敵味方に別れる悲運。

徳川家を懲らしめる昌幸の智謀、
誰からも愛される信繁の闊達、
家康が好きな信之の律儀。

これらのキャラクターが、
激動の時代説明ではなく、
生き生きと人間模様を物語るのだ。

忍びの創作もあえて、
真田十勇士ではない草の者。
筆の進む著者が目に浮かぶようだ。

関ヶ原や大坂の陣は、
徳川家か豊臣家の視点で、
描かれることが多い。

だからこの作品が、
いつまでも語り継がれる、
名作になったのだと思う。

まるで真田家の話が、
スカイウォーカー家の話に思えるのは、
僕ぐらいかもしれないが。

上田城。千曲川。
日本が誇る地歴である。

池波正太郎が足繁く通ったように、
僕もいつかただ歩いて、
眠る草の者と話をしてみたいものだ。

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