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時の流れの中の永遠シュプール

スキーシーズンの冬,仕事を定時で終わらせて,帰り道に神田辺りのスキーショップに立ち寄ることが楽しみでした.新日本橋から神田まで,少し古めかしい路地を歩いて行きました.夜の街に流れる冷たい風が,シーズンの到来を告げているようで,心地よかったことを記憶しています.

 スキーを少し滑れるようになった頃から,スキー板のチューンアップするようになりました.近所のアルペンでスキー板を購入したとき,もらったチューンアップの小冊子がそのきっかけでした.最初は塗りワックスとエッジシャープナーから,最終的にはホットワックスをかけられるまで,いろいろな道具を揃えました.仕事帰りよったスキーショップで少しづつ購入しました.カーボン入りのホットワックスなんてものも持っていました.

 生家のガレージの空きスペースに折りたたみ式のテーブルを開いて,スキーバイスで板を固定してチューンアップの作業を行いました.ファイルで角度を調整したエッジを砥石で鏡面になるまで研いていたので,作業が深夜までになることがよくありました.とても懐かしい思い出です.

 今思えば笑い話ですが,初心者の頃,滑りのよい板は怖いと思っていました.よくメンテされたスキー板ならば,容易に回転させることが出来るので,滑走速度を自由にコントールすることができるようになります.初心者の頃に,間違って迷い込んだ上級者用の急斜面も容易に滑れるようになります.加えてヒールキックが自在に使えるようになれば,コブ斜面もストレスなく滑れるようになります.

 随分,時間が流れ,スキー板もノーマルスキーからカービングスキーに変わり,板の長さも身長マイナス10~15cm程度と短くなりました.スキー板が長ければ滑走速度が速くなります.ノーマルスキーの頃,上級者の板の長さは2mで,メータと呼んでいました.長いスキー板は上級者の証でした.

 新潟の六日町 八海山スキー場は,ゴンドラで一気に上る最大コース長が約5,000mのゲレンデです.斜度はそれほどきつくはありませんが,上部はコブのある上級者コースです.ある日,ゴンドラを降りて,トップのレストハウスで少し休もうと,スキー板を立てかける時,ふと気づいたのですが,スキー板の長さが皆同じでメータなのです.一瞬,ニヤッとしてしまいました.

 ゲレンデに刻んだシュプールは,雪が降り積もれば儚く消えてしまいます.春になれば,ピステ自体もなくなり跡形もなくなります.でも,また冬が来て雪が降り積もれば,新しいスキーヤーが新しいシュプールを刻みます.それぞれのスキーヤーのシュプールは,それぞれの記憶の中に刻まれて永遠になります.私のシュプールも同じ...窓を開けたら,冷たい北風が頬にふれました.今夜,ゲレンデは粉雪かな.

それでは,また,何時か何処かで.


DEPARTURES / globe [Covered by GARNiDELiA]
https://www.youtube.com/watch?v=rjtt9ANwBsY

INNSBRUCK - Ski season [GoPro]
https://www.youtube.com/watch?v=uKCG_E2XF14

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