天気雨と灼けたアイドル
それは三十年も前の話です.気温が下がり過ごしやすい季節がまたやって来ました.週末土日はのんびりと河津でダイビングをして過ごそうと,いつものようにT&Cの下田インを予約しましたが,残念なことに,土曜の波は少し高く,今日はサーファーの日でした.
国道134号の下りで,江ノ電の鎌倉高校前駅の手前の交差点を右折します.踏切を渡ったら,すぐにまた右折します.少し坂を上ったところにその喫茶店はありました.この踏切と坂道は,今ではアニメの聖地としてニュースになるようなところですが,その頃は,誰もいない静かな海沿いの通りでした.
喫茶店は七里ガ浜が見渡せ,夕陽がきれい見える場所として知られていました.今日は私以外の客はいませんでした.暫くすると女性が二人店に入って来ました.店はそう広いわけではないので,会話が聞こえてきました.「あいつ,はじめボードに乗れなかったけど,今は,ちゃんと波に乗れるようになったね」といった内容でした.海の方に視線を向けると,黒いウエットスーツのサーファ-が数名いました.遠くが少し白く煙ってきました,天気雨です.明日のダイバーの日は大丈夫かな? キツネ様.
私は通りすがりのストレンジャー.喫茶店はなくなりました.気まぐれで立ち寄った店の時間が,記憶に残るとはその時は思いもしませんでした.そして,彼等がその後どうなったかは知りませんし,知るすべもありません.あの頃の「灼けたアイドル」たちが,波に乗らなくなっても,穏やかな時間の中に居ることと思います.関係ないけどね.
時の流れは思うより速いものです.あなたの感覚でつかまえて下さい.
それでは,また,何時か何処かで.
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