モナスティラキ2

【旅の製図法/18】アトス3点セットを探すぞ

2016.3.13

ギリシャ北部には、アトスという半島がある。ここはギリシャ正教の聖地となっており、観光客が気軽に立ち入ることのできる場所ではない。そして何より、聖なるその地に足を踏み入れてはならないという理由で、女性の立ち入りが今でも禁止されているという、俗世界とは別次元にある半島である(と思う)。アトス半島へは、ウラノポリという海辺の町から、1日1便出ているフェリー船に乗って行くことになる(たぶん、今でも)。

これらは、私がすべての旅行記、あるいはすべてのエッセイのなかでいちばん好きな村上春樹の『雨天炎天』に書いてあることである。で、私はというと、今回特にアトス半島に行ったわけではない(というか女性なので行けない)。ウラノポリまでも行ってない。ただギリシャには来たので、このエッセイにあった「アトス3点セット」なるものを、アテネで探してみようじゃないかということになったのである。

アトス3点セットとは、ギリシャコーヒー、ウゾー、ルクミの3つであり、アトス半島の修道院では訪ねてきた巡礼者をこれらでもてなす習慣があるとかないとかいう噂である。ギリシャコーヒーは説明不要かもしれないが、あの例の粉っぽいコーヒーのことで、カップの底に粉が沈殿する。トルココーヒーと実質同じものらしいが、トルコとギリシャはとても仲が悪いので、ギリシャでトルココーヒーというと嫌がられるらしい。

次にウゾーだが、これはかなり度数の高いアルコールである。葡萄やらハーブやら、なんかいろいろなもの(いっぱいでよくわからない)から作られた蒸留酒で、日本の焼酎みたいなものである。だいたいどこの店にも置いてあって、安い。庶民の酒だ。ただ、けっこうきつい酒なので、万人にお薦めできる代物ではない。水で割ると白濁する。

最後に、ルクミである。これは、ギリシャのゼリー菓子のようなもので、ゼリーのまわりに粉砂糖がまぶしてある。クソ甘いので、甘いものが苦手な人には薦めない。

総合すると、つまりどれも日本人の口に合うものだとはいい難い。しかしエッセイの情報によると、歩き疲れた体にこのアトス3点セットは実に沁み入るというので、文章を読む限りだとなんとも魅力的な3点セットに思える。真面目なことを考えるのも疲れちゃったので、ギリシャではこの3点セットを街で探して飲んで遊んで食べようじゃないかという算段になった。

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