見出し画像

姑が死ぬまでに聞いてみたいこと

インフルエンザの熱もだいぶ下がってきたので、与太話をひとつ書こうと思う。寝てばかりだと明々後日からの仕事にも支障が出そうなので、身体を起こす練習も兼ねて。

私は結婚して11年になるのだが、義実家付き合いはまあまあうまくやっている方だと思う。夫は兄弟が多いので、結婚当初こそ大家族にポツンと1人放り込まれたみたいで心細かったが、今は義兄弟にも家族ができてワイワイ心置きなく過ごせている。
義実家といえば、話題に事欠かないのが嫁姑問題。
優しい姑だが、新婚の頃に「ん?」と思わせられる出来事があった。

結婚するまで夫は実家ぐらしだったので、結婚して間もない頃は頻繁に物を取りに帰っていた。私も付いていくと、夕ご飯までお世話になることが多かったのだが、びっくりすることがあった。

ある晩、炊き込みご飯を出された。私は色ご飯が大好きなので、わーいありがとうございます!とモグモグ食べた。するとガリッと口の中で異物を噛み砕く感触がした。
(え…なにごと…)
と思うが、隣には夫、目の前には義両親。口の中の物を無闇に吐き出す訳にもいかず、どうしようか考えて私はとりあえずその物体を左頬の端へ追いやった。とりあえず食事を終えることを目標にして、もはや味なんかよく分からないご飯をひたすら食べた。
義両親が下膳に行ってくれ、ようやく私はティッシュを手に取り鼻をかむ振りをしてその異物を吐き出した。
半分に折れた爪楊枝だった。
私がさらに半分に噛み砕いていたので、全部で3cmあったかなかったか。度肝を抜いた。
(え…これ、どういうこと…?)
脳内パニックになるが、なんとなくその場では夫に言い出しづらく、家に帰ってから伝えてみることにした。
「今日いただいた炊き込みご飯にさあ、実は爪楊枝入っててん」
「え!?あれかな、とり肉に火通ってるか確かめてそのまま混ぜちゃったんかな」
「さぁ、、、」
「うちのお母さん、ドジなところあるから」
ごめんごめん、と夫は謝ってくれたが釈然としない。出てきた爪楊枝は上半分だった。とり肉の火の通りを確認するのにわざわざ爪楊枝を半分に折ってから確かめるだろうか?万が一そうだとしても、お釜に忘れるだろうか?嫁として反応を確かめられていたのでは…と疑心暗鬼になりつつ、義母の天然エピソードはそれまでにも聞いていたので、一旦忘れることにした。
しかし事件は再び起こるのである。

前回から数カ月の後、また炊き込みご飯をいただくことになった。その日は他の兄弟たちもいて、久しぶりに一升炊きした、と義母が言っていた。
私と夫は応接間、義家族はダイニングでご飯を食べることになり、私は運ばれてきた料理に感謝しつつ、前回の苦い記憶を思い出していた。
(流石にもう同じことはないだろう…)
そう思っていたのだが、今度は口にいれる前に発見したのである。

とり肉に刺さった爪楊枝を!!!!しかも上半分!!

ヒュッと息を飲んだ。10年以上前になるが鮮明に景色を覚えている。これは、限りなく、、、黒じゃないか?と思った。一度なら最悪、天然かもしれない。でも二度目は、一升炊いて大人8人で分けて食べるのに、私のお茶碗によそわれる確率っていくらなんだろう??おかしくない??
私は無言でとり肉を食べ、爪楊枝をゴミ箱に捨てた。夫には言えなかった。言うと
「あんたのお母さん嫁いびりしてるで?」
という意味になりそうで、夫が可哀想だった。夫はいまだに、2回目の事件は知らない。

お義母さん、死ぬまでに聞いていいですか。
あれは嫁いびりだったのでしょうか…??

他にも義母は色んなエピソードを持っている。
◯長女を出産後、連絡したら「今から行きます!!」とこちらの体調や都合を聞かず病院に駆けつけたこと(それ産後の嫁に対して一番やったらアカンやつ)
◯結婚前からずっと●●ちゃん、と私を名前で呼んでいたが、ある日突然●●さん、に変わったこと(何があったんや、怖い)
◯義実家での手伝いなど一切頼まれなくてそこは助かると思っていたが、義兄が結婚したらすぐ義姉に料理を仕込み始めたこと(だから次男嫁はずっとお客様だったのか!)

こんなふうに書いてるが、基本的には優しい義母である。毎回ではないが、嫁の私にも誕生日やクリスマスにプレゼントをくれるし、お年玉は毎年用意してくれている。子どもたちをとても大事にしてくれる。だから邪険に扱うつもりもないし、もし介護になっても実子主導の下なら手伝う気満々だ。今までの恩返しはしたいと思っている。

あの炊き込みご飯は、嫁いびりだったのか。
そこだけは、いつか聞いてみたい。





いいなと思ったら応援しよう!