村田沙耶香『殺人出産』覚書

人は試験勉強をするぞ!と思うと部屋の片づけをしたり、漫画を読み始めたり、関係ないことを始めてしまうものだ。今日の私の場合、それはつくば市立図書館で借りてきて、部屋の片隅に放置されていた本を読むことだった。借りてきた本の中で一番ページ数が少ないし中編だったこともは最後のあがきだったんだろうか。

この本を読んでいて思ったことは、とにかくキモい、ということ。この作者とは思考がまるっきり違う、そう思わせる内容だった。以前、村田沙耶香さんの『コンビニ人間』を読んだことがあるが、その時も同じことを思った。ある人がこの人の小説を読んで宇宙人と話しているみたいだと言っていたが、本当にそうだと思う。多分村田沙耶香は結婚してないと予想するし、子どもも作ってないと思う。たぶん。

内容は、ある種のSFみたいなもので、現代の恋愛観、いわゆる好きな人と恋愛して結婚してその人と子供を作って浮気はしちゃダメで幸せに長生きして死ぬ…みたいな世界とは違った世界をテーマにしている。3人で付き合うのが流行っている社会だとか10人子どもを産んだら1人殺してもいい社会だとか性を結婚生活に持ち込まない生活だとか。自分たちの思想とかけ離れていてもうキモいな…と思えてくる。

でも、時々ちょっぴり共感もできてしまう。特に性と結婚の切り離しに関しては、私も整理がついていないところだからドキッとしてしまった。おそらく、社会に生きている人たちも大半が少しだけこの世界に違和感を感じたことがあって、それでこの人の小説を読むのだと思う。

キモいキモいと思うのだが、よく考えるとこういう既存の恋愛観とかけ離れた恋愛観って今の世界でもあることじゃないか、とふと考えた。同性婚だのトランスジェンダーへの対応だのとあんまり変わんないんじゃないか。意義を唱えるのがよくないみたいな風潮があるからみんなあんまり意義を唱えないけど、自分の価値観と違うのは一緒で実はみんなキモいって思ってるんじゃないの?でもなんでキモいって思うんだろうか。それが正しくないから?でもその正しさって誰が決めたの?問題が起きずに社会が回っているという点で考えたらこの本の中の世界の方がよっぽどキモくないんじゃない?

よくわからなくなってきた。いいかな、覚書だし。多分もう一回くらい読み直した方がいいんだろうなあ。まあ、この本もう少しで2か月延滞していることになるから心苦しいんだけど…。


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