短編小説『私も大人になったのに』
久しぶり、と私は手を差し出した。
高校を卒業してから2年。身長も服装も髪の長さも、あの頃とは違う。あなたの隣に並んでもおかしくないくらい成長したのに。
久しぶり、と彼が笑った。マニキュアで彩った私の手は、がっしりと大きな両手で握り返された。その左手の薬指にはきらりと光る物。シンプル、だからこそそれと一目でわかる物。
あぁ、同窓会で報告って、そういうこと?
おめでと、さよなら。
追い付けないね、大人の先生に。
ごめんね、さよなら。
世間知らずな、子どもの私。